2024年1月の事業承継M&Aマーケット概況 ～ドラッグストア・調剤薬局関連のM&A〜

　2024年1月のM&A件数は323件で前年同月比4.2%の増加となった｡マーケット別ではIN-INが252件で前年同月比6.3%増、IN-OUTは44件、同10.0%増、一方、OUT-IN は27件で同18.2%減だった。同月の事業承継M&A（注1参照）は68件で､前年同月（56件）比21.4%の増加となった｡

　今月はドラッグストア・調剤薬局に関連するM&Aが4件公表された。

　クスリのアオキホールディングスは、傘下のクスリのアオキ（石川県）を通じて、ホームセンター運営のウッドペッカー（岐阜県）から1店舗を譲り受ける。同社は1996年設立。対象事業は売上高1億1,800万円。クスリのアオキHDはホームセンターを医薬品、化粧品、日用雑貨、食品（生鮮食品を含む）を取り扱う店舗に改装する。岐阜地区でのドミナントを強化する。

　ファーマライズホールディングスは、調剤薬局事業ベンチャーのGOOD AID（愛知県）を買収する。代表取締役、同代表取締役の資産管理会社のkotoshino（愛知県）から全株式を取得する。GOOD AIDは2016年設立、売上高31億4,400万円。関東・中部・関西地方に25店舗を運営する。零売薬局、調剤薬局、訪問看護、医薬品EC、D2Cなどの複数のヘルスケア事業を展開している。ファーマライズHDは調剤事業を核とした事業展開による収益獲得強化に取り組んでいる。グループの大都市圏の店舗展開を強化する。

　マツキヨココカラ&カンパニーは、全額出資子会社のマツモトキヨシグループ（千葉県）を通じて、ドラッグストア、調剤薬局運営のケイポート（東京都）を買収する。個人から全株式を取得する。同社は1983年設立。東京都大田区、品川区、目黒区を中心に事業を展開している。マツモトキヨシグループは競争力の強化、ドミナント戦略の一環として東京都でのシェア拡大を図る。

　この他、大手ドラッグストアによる情報システム系企業の買収も公表されている。

　ウエルシアホールディングスは、情報システム設計・開発・運用、ソフトウェア受託開発のエクスチェンジ（東京都）を買収する。代表取締役から全株式を取得する。同社は2003年設立、売上高15億7,300万円。企画から設計・開発・運用まで一連の工程をグループ内で完結できる技術力とノウハウを事業基盤とする。Web系のサーバーシステムやアプリケーションの開発に優れており、保守・運用も含めて実績を有する。ウエルシアHDはITインフラやアプリケーションなどの情報システムの整備を進める。DXを推進するITの企画・開発・運用体制の構築を加速させる。デジタル技術とデータを活用し新しい価値を提案する。

　
　調剤薬局数は既に6万を上回り、コンビニと同様に従来から飽和状態と言われている。昨年8月に筆者は調剤医療費を調剤薬局の市場規模（以下「市場規模」）と考え、調剤薬局上位16社の売上高合計を市場規模で除す形で市場シェアを試算したところ約30%にとどまっていた。現状市場の寡占度は低いと推察されることや、高齢となった経営者は少なくないとも伝えられており、調剤薬局を巡るM&Aは今後も活発に行われそうだ。

（注1）M&A件数は、株式会社レコフデータがニュース・リリース等公表資料などから集計しているデータによる
       IN-IN：日本企業同士のM&A
       IN-OUT：日本企業が当事者1（買い手）、外国企業が当事者2（売り手）となるM&A
       OUT-IN：外国企業が当事者1（買い手）、日本企業が当事者2（売り手）となるM&A

ここでは公開情報から収集した「売り手の経営者や個人株主が株式の大半あるいは一定規模を売却した案件（オーナー系企業売却案件）」を事業承継M&Aと定義。
ただ、事業承継M&Aは捕捉不可能な未上場企業同士の非公開案件が多く、実際の件数はこの数倍と言われている。
公表ベースでデータを収集しており、未完了案件を含む。