2018年1月の事業承継M&Aマーケット概況 ～ソフト・情報関連業界のM&A～

2018年1月公表のM&A件数は246件であり、前年同月比44.7%増であった。マーケット別ではIN-INが189件、前年同月比61.5%増、IN-OUTは47件と、前年同月と同水準だった。また、OUT-INは10件で、前年同月比66.7%増となった。このうち公表ベースの事業承継M&Aは34件（注参照）あり、10件がソフト・情報関連のM&Aだった。

TISの子会社でIoT事業のクオリカ（東京都）は、同業のデータトロン（さいたま市）の全株式を取得した。1999年設立の同社は、GPS関連システムと通信機器の開発に強みを持つ。高速道路の管理車両の位置情報を取得、業務活用するシステムや物流業者向けのトラックや営業車のリアルタイム監視システムなどを主力とし、組込ソフトウェアやハードウェア領域で技術力を有する。クオリカは高速道路、物流向けIoT事業へ新規参入する。自社の遠隔監視・予防保全システムとのシステム連携、ハードウェア・ソフトウェアの共同開発など、新たなIoT事業戦略を推進する。

クレスコは、システム開発のネクサス（横浜市）を買収した。社長から91．4％の株式を取得した。残りは自己株式のため、議決権ベースで100％となる。同社はソリューション・サービス、システム開発サービス、サーバーインフラ構築サービスといったシステム開発に係る総合的なサービスを提供している。クレスコはグループ各社の販売チャネルやテクノロジーを活かし、顧客のコアビジネスをサポートする付加価値の高いソリューションサービスを実現する。総合力を発揮し、ビジネスの拡大を図る。

　ユニリタは、システムインテグレーション事業などの無限（東京都）を買収する。代表取締役等から6億3200万円で全株式を取得する。同社は売上高約21億7400万円。企業の業務システム開発を手がけるほか、バックオフィスシステムソリューションとして通勤費管理、経費精算や申請業務を効率化する「らくらくBOSS」シリーズのパッケージを提供する。ユニリタは顧客へのソリューション提供力を強化する。両社の技術力、業務ノウハウへの知見を合わせ、業務支援部門の変革ニーズに対応する新たなサービスソリューションを開発する。

当事者1（買い手）または当事者2（対象会社）がソフト・情報業界に属するIN-IN（国内企業同士のM&A）は、技術の進展や普及に伴い、件数が2000年の205件から2006年には444件と倍増となった。その後、減少したものの、2010年の193件を底に再び増加に転じ、2017年には822件と、2000年の4倍の水準に増加した。企業にとりIoTやAI等への対応が必須となる中、技術の取り込みや事業の提携による相乗効果の創出等を目的として、同業界のM&Aは今後も活発になると考えられる。
 

（注）M&A件数は、株式会社レコフデータがニュース・リリース等公表資料などから集計しているデータによる

　　　IN－IN ：　日本企業同士のM&A

　　　IN－OUT：　日本企業が当事者1（買い手）、外国企業が当事者2（売り手）となるM&A

　　　OUT－IN：　外国企業が当事者1（買い手）、日本企業が当事者2（売り手）となるM&A

　　　ここでは公開情報から収集した「売り手の経営者や個人株主が株式の大半あるいは一定規模を売却した案件（オーナー系企業売却案件）」を事業承継M&Aと定義。

　　　ただ、事業承継M&Aは捕捉不可能な未上場企業同士の非公開案件が多く、実際の件数はこの数倍と言われている。

　　　公表ベースでデータを収集しており、未完了案件を含む