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2018年11月の事業承継M&Aマーケット概況 ~段ボール製造業を巡るM&A~

月刊事業承継M&Aレポート

2018.12.19

 2018年11月公表のM&A件数は343件あり、前年同月比17.1%増となった。マーケット別では、IN-INが257件で前年同月比24.2%増であったが、IN-OUTは66件と前年同月比-1.5%の微減となった。また、OUT-INは20件で、前年同月比5.3%増となった。このうち公表ベースの事業承継M&Aは54件(注1参照)であった。以下、段ボール製造業のM&Aについて触れてみたい。

 トーモクは、段ボール・紙器製造販売の遠州紙工業(静岡県浜松市)を買収した。全株式を取得した。同社は1947年設立、売上高23億円、従業員108人。青果物、製菓、自動車関係などの多数の得意先を持つ。トーモクは遠州紙工業と近隣のグループ会社との連携を強化する。静岡西部地区でのグループ段ボール・紙器事業の発展を図る。

 レンゴーの子会社で段ボールシート製造・販売の日之出紙器工業(鹿児島県日置市)は、同業の博多段ボール(福岡県宇美町)を買収。出資比率を70%とした。博多段ボールは売上高5億7900万円、従業員19人。日之出紙器工業は博多段ボールと営業・生産の両面で連携を強化し、九州地区でのグループ段ボール事業の拡充を図る。博多段ボールは経営基盤を強化する。

 段ボールは軽量だが嵩があり、流通コストがかかることから、消費地で生産・調達した方が効率的であり、段ボール製造業者には限定的な商圏で事業を行う地域密着型の中堅中小企業が多いとされる。ネット通販の広がりなどによって段ボールの需要は堅調に伸びてはいるが、原紙も値上がりしており、厳しい交渉に直面する中堅中小企業にとっては価格転嫁などが難しいと伝えられている。今後も、大手メーカーにとっては堅調な需要に対応するための商圏拡大、また、地域密着型の段ボールメーカーにとっては経営基盤の安定に向けて、双方が手を組もうとするケースが増えるのではないかと思われる。
 

(注1)M&A件数は、株式会社レコフデータがニュース・リリース等公表資料などから集計しているデータによる
IN-IN:日本企業同士のM&A
IN-OUT:日本企業が当事者1(買い手)、外国企業が当事者2(売り手)となるM&A
OUT-IN:外国企業が当事者1(買い手)、日本企業が当事者2(売り手)となるM&A
ここでは公開情報から収集した「売り手の経営者や個人株主が株式の大半あるいは一定規模を売却した案件(オーナー系企業売却案件)」を事業承継M&Aと定義。
ただ、事業承継M&Aは捕捉不可能な未上場企業同士の非公開案件が多く、実際の件数はこの数倍と言われている。
公表ベースでデータを収集しており、未完了案件を含む。

(注2)トーモクによる遠州紙工業買収の発表は2018年10月30日

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