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月刊事業承継M&Aレポート
2020年3月公表のM&A件数は368件で、前年同月比0.5%の増加となった。マーケット別ではIN-INが293件で前年同月比3.9%増、IN-OUTは56件、同6.7%減、OUT-IN は19件で同20.8%減だった。このうち公表ベースの事業承継M&Aは64件(注1参照)であった。この中には専門商社に関連するケースが8件含まれており、以下に述べるように商圏拡大や事業領域拡大などを目的とするケースがみられた。
JKホールディングスは、建築資材販売、建設工事の長谷川建材(北海道北見市)を買収する。社長等10人から全株式を取得する。同社は売上高9億3700万円。北海道道東地区を中心に事業を営む。JKホールディングスの小売セグメントは北海道の主要都市で拠点を有することになる。北海道地区でのグループの経営基盤を強化する。グループ事業の相乗効果を見込む。
伊藤忠商事と丸紅の折半出資会社の伊藤忠丸紅鉄鋼(東京都)は、全額出資で設立した日本橋特殊鋼(東京都)を通じて、特殊鋼流通のヤマト特殊鋼(東京都)を買収する。経営陣などから全株式を取得する。日本橋特殊鋼はヤマト特殊鋼を吸収合併し、社名を「ヤマト特殊鋼」に変更する。ヤマト特殊鋼の藤原社長は続投する。同社は売上高93億6400万円、従業員117人。特殊鋼の在庫、切断に加え、多くの加工設備を有し産業機械、建設機械分野を中心とした顧客が要望する複雑で高精度な部品加工を手掛ける。伊藤忠丸紅鉄鋼を創業以来の仕入れ先とする。伊藤忠丸紅鉄鋼はグループの特殊鋼分野でのプレゼンス向上を図る。
三谷産業は、全額出資子会社で工業薬品、電子材料など提供のミライ化成(旧クラヤ化成、長野県千曲市)を通じて、水処理薬品、処理施設販売、設置工事、メンテナンスの長野サラヤ商会(長野市)を買収する。社長から自己株式を除く全株式(88%)を取得する。同社は1964年設立。長野県内で官庁、病院、老人ホームや介護施設、宿泊施設、製造工場などの顧客基盤を有する。三谷産業は環境ビジネスの発展や新たなマーケットの開拓に寄与すると判断した。顧客基盤などの経営資源を共有し、両社の強み・シナジーを活かして事業基盤の拡大・強化を図る。
さて、2020年3月の事業承継M&A件数64件は、2019年12月の72件に次ぐ高い水準となった。ただ現状、新型コロナの影響によって業績の悪化している企業は多い。図表1は四半期ベースの企業業績とM&A件数の動きを示したものであり、これまで比較的パラレルに推移してきた。企業業績悪化に伴い買い手候補企業が保守的となることなどによって、足元のM&A件数は減少する可能性もあると考えられる。
(図表1)日本企業の収益(経常利益)とM&A件数の推移(四半期ベース)
(注1)M&A件数は、株式会社レコフデータがニュース・リリース等公表資料などから集計しているデータによる IN-IN:日本企業同士のM&A IN-OUT:日本企業が当事者1(買い手)、外国企業が当事者2(売り手)となるM&A OUT-IN:外国企業が当事者1(買い手)、日本企業が当事者2(売り手)となるM&A ここでは公開情報から収集した「売り手の経営者や個人株主が株式の大半あるいは一定規模を売却した案件(オーナー系企業売却案件)」を事業承継M&Aと定義。 ただ、事業承継M&Aは捕捉不可能な未上場企業同士の非公開案件が多く、実際の件数はこの数倍と言われている。 公表ベースでデータを収集しており、未完了案件を含む。
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