2020年11月公表のM&A件数は328件で前年同月比5.5%の増加となった。マーケット別ではIN-INが261件で前年同月比18.6%増、一方、IN-OUTは43件、同35.8%減、また、OUT-INは24件で前年同月と同じ水準であった。11月の公表ベースの事業承継M&Aは59件(注1参照)であった。
大手ドラッグストアのココカラファインは、調剤薬局事業、ドラッグストア事業、通所介護・居宅介護支援事業などのフタツカホールディングス(兵庫県神戸市)を11月12日付で買収した。個人から全株式を取得した。同社は1983年創業、売上高119億6400万円。兵庫県を中心に関西で調剤薬局、ドラッグストアなど70店舗を展開する。ココカラファインは調剤薬局事業の主力エリアでのドミナントを深耕するとともに、地域におけるヘルスケアネットワークの構築を推進する意向だ。
筆者が調べたところ、日本の2019年度の調剤医療費は7兆7,000億円であり、これを調剤薬局全体の市場規模とすると、同事業による売上高が1,000億円を上回る企業は8社(大手調剤薬局6社、大手ドラッグストア2社)であり、合計の市場シェアは17%にとどまっていた。2021年10月、マツモトキヨシホールディングスとココカラファインは経営統合する予定であり、両社の調剤薬局事業の売上高を単純に合算すると約1,000億円と試算される。ただ、これを加えても1,000億円を上回る企業の合計市場シェアは20%を下回っており、寡占度の低い様子が窺える。
調剤薬局には「かかりつけ薬局」としての機能や、対物業務から対人業務への転換が求められており、これには十分な薬剤師の確保が必要と言われている。しかしながら、都道府県別にみると薬剤師は偏在しており、地域によっては薬剤師不足が深刻な状況という。
また、使用が奨励されてきた後発医薬品は、先発薬と異なり複数の製薬会社が製造するため、調剤薬局の在庫管理負担などが増しているとも伝えられている。
こうした中、スケールメリットの重要性が増大しており、営業地域拡大等を目指す大手・有力調剤薬局、または、高齢化進展に向けたサービスメニュー拡大を目指すドラッグストアと、大手と協業して事業基盤を強化するべきと考える中堅・中小調剤薬局の意向がマッチすることによって成立するM&Aは、今後も活発に行われていくと考えられる。
(注1)M&A件数は、株式会社レコフデータがニュース・リリース等公表資料などから集計しているデータによる
IN-IN:日本企業同士のM&A
IN-OUT:日本企業が当事者1(買い手)、外国企業が当事者2(売り手)となるM&A
OUT-IN:外国企業が当事者1(買い手)、日本企業が当事者2(売り手)となるM&A
ここでは公開情報から収集した「売り手の経営者や個人株主が株式の大半あるいは一定規模を売却した案件(オーナー系企業売却案件)」を事業承継M&Aと定義。
ただ、事業承継M&Aは捕捉不可能な未上場企業同士の非公開案件が多く、実際の件数はこの数倍と言われている。
公表ベースでデータを収集しており、未完了案件を含む。