2022年2月の事業承継M&Aマーケット概況 ～2024年問題解決に向けた物流業界のM&A〜

　2022年2月の件数は353件で､前年同月比7.0%の増加となった。マーケット別ではIN-INが278件、前年同月比6.9%増、IN-OUTは48件、前年同月と同数、また、OUT-INは27件、同22.7%増であった。同月の事業承継M&A（注1参照）は60件であり、このうち物流業界を巡るM&Aが4件あった。

　カンダホールディングスは、一般貨物自動車運送事業、貨物運送取扱事業の堀切運輸（埼玉県八潮市）を買収する。個人から全株式を取得する。同社は1965年設立、売上高12億4300万円。段ボール用巻き取り原紙を主とした重量物の配送に特化している。同社は関東以外にも東北・北陸・中京・関西・中四国迄と、幅広いエリアで協力会社と連携している。カンダHDは新たな得意先の獲得に繋げる。ネットワークを発展させる。

　ヒガシトゥエンティワンは、一般貨物自動車運送業などの山神運輸工業（神奈川県横浜市）を買収する。個人から全株式を取得する。同社は1952年設立、売上高20億8500万円。鋼材や機械などの重量物輸送を中心に海上コンテナ輸送など一般貨物輸送事業と、機械据付・メンテナンスなどを実施し計画段階からの設計・施工といった一貫対応も行うエンジニアリング事業を二大事業として展開している。ヒガシトゥエンティワンはグループの主要顧客である鋼材メーカー向けの物流とのシナジー効果を見込む。新たな輸送資源を獲得することでグループ全体の輸送力を強化する。

　丸和運輸機関は、ファイズホールディングスをTOBにより株式を買い付け、出資比率は議決権ベースで58.44%となった。両社は資本業務提携を締結した。ファイズHDは東証1部上場を維持する。同社はECソリューションサービス事業を展開する。アマゾンが最大顧客。丸和運輸機関は過半数に達する最低数の取締役候補者を指名する。丸和運輸機関は主として物流センター業務をコアとする3PL業務を行っている。中でも小売業を中心としたEC・常温物流、食品物流、医薬・医療物流に特化して事業展開を図っている。3PL事業の拡大、「輸配送ネットワーク」の基盤構築へ経営資源の集中を図る。

　五健堂は、一般貨物自動車運送事業の六ツ星運送（徳島県松茂町）を買収する。代表取締役等6人から全株式を取得する。六ツ星運送は1992年設立、売上高約7億4700万円。大型冷凍ウィングを中心に31台の車両を有する。主として関東方面への一般貨物を取り扱う。五健堂は業容・エリアの拡大を実現する。ドライバーの時間外労働が年間960時間に制限されるなどの物流の2024年問題解決に取り組む。

　かねてから物流業界におけるドライバー不足は深刻な状況と言われているが、2024年問題に伴い労働力不足に対する懸念は一層強くなっている。物流業界では2024年問題への対応に向けてM&Aは重要な手段になり得ると考えられる。

（注1）M&A件数は、株式会社レコフデータがニュース・リリース等公表資料などから集計しているデータによる
IN-IN：日本企業同士のM&A
IN-OUT：日本企業が当事者1（買い手）、外国企業が当事者2（売り手）となるM&A
OUT-IN：外国企業が当事者1（買い手）、日本企業が当事者2（売り手）となるM&A

ここでは公開情報から収集した「売り手の経営者や個人株主が株式の大半あるいは一定規模を売却した案件（オーナー系企業売却案件）」を事業承継M&Aと定義。
ただ、事業承継M&Aは捕捉不可能な未上場企業同士の非公開案件が多く、実際の件数はこの数倍と言われている。
公表ベースでデータを収集しており、未完了案件を含む。