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月刊事業承継M&Aレポート
2022年3月のM&A件数は450件で、前年同月比3.8%の減少となった。ただ、減少の要因は前年同月の件数が月間過去最多の468件であった反動であり、2022年3月の450件はこれに次ぐ過去2番目の水準だ。マーケット別ではIN-INが362件、前年同月比2.7%減、IN-OUTは49件、前年同月比15.5%減、一方、OUT-INは39件、同2.6%増であった。
同月の事業承継M&A(注1参照)は84件であり月間では過去最多となった。この中には投資会社が買い手となったケースが11件あった。
新生銀行の全額出資子会社の新生企業投資(東京都)は、設立した関連ファンドが出資する特別目的会社を通じて、人材派遣業、移動体通信事業などのGardens(東京都)を買収した。創業家から全株式を取得した。経営陣は特別目的会社に一部出資する。Gardensは2015年設立。移動体通信事業者(携帯電話キャリア)を主要顧客に、通信システム開発・運用・保守、基地局建設まで一気通貫に手掛ける。移動体通信業務で不可欠なラボ検証、フィールドテスト、システムインテグレーション業務などのコアフィールドを中心とした技術に強みを持つ。新生企業投資は経営管理体制の強化やM&A実行支援などハンズオン型支援を行う。
ティーキャピタルパートナーズ(TCAP、東京都)は、運営するファンドを通じて、アパレル大手のストライプインターナショナル(岡山県)を買収した。創業者の石川康晴氏、取引先企業などから過半数の株式を取得した。石川氏はSPCに再出資する模様。一部報道では全株式を取得し、有利子負債を含めた金額総額は300億円強。ストライプインターナショナルは「earth music&ecology」「Green Parks」「AMERICAN HOLIC」など複数のライフスタイルブランドを有し、リテール、EC分野を展開している。国内外1,500店舗を超える。TCAPの経営ノウハウを活かし、サステナビリティ戦略の推進、人材強化、海外戦略拡大などに取り組む。
M&A仲介、サーチファンド運営などのGrowthix Capital(東京都)の全額出資子会社のGrowthix Investment(東京都)は、第1号ファンドである合同会社GI-1stfund(東京都)が設立したSPCを通じて、社員食堂での総合決済パッケージソフトウェア「食堂楽」開発・販売のエヌ・エス・システム(東京都)を買収した。代表取締役から全株式を取得した。第三者承継者(ネクストプレナー)として西澤泰夫氏が代表取締役に就いた。MBI(Management Buy-In)となる。同社は2006年設立。RF-IDを用いることで、製造・開発~販売~保守をワンストップで対応することができる。「食堂楽」は全国850拠点の社員食堂に導入されている。後継者が不在だった。
ある投資会社の経営者によると、事業承継といっても高齢化による後継者難を背景とする案件に加えて、40代、50代の経営者がアーリーリタイアメントを目指すケースが少なくなく、これに鑑みれば買い手となる投資ファンドの数は増えるべきという。今後、投資会社の役割は一層大きくなると思われ、投資会社が買い手の事業承継M&A件数は増加していくであろう。
(注1)M&A件数は、株式会社レコフデータがニュース・リリース等公表資料などから集計しているデータによる IN-IN:日本企業同士のM&A IN-OUT:日本企業が当事者1(買い手)、外国企業が当事者2(売り手)となるM&A OUT-IN:外国企業が当事者1(買い手)、日本企業が当事者2(売り手)となるM&A ここでは公開情報から収集した「売り手の経営者や個人株主が株式の大半あるいは一定規模を売却した案件(オーナー系企業売却案件)」を事業承継M&Aと定義。 ただ、事業承継M&Aは捕捉不可能な未上場企業同士の非公開案件が多く、実際の件数はこの数倍と言われている。 公表ベースでデータを収集しており、未完了案件を含む。
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