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2022年4月の事業承継M&Aマーケット概況 ~食品関連のM&Aが活発〜

月刊事業承継M&Aレポート

2022.05.16

 2022年4月のM&A件数は388件で、前年同月比8.1%の減少となった。マーケット別ではIN-INが314件、前年同月比1.6%減、IN-OUTは41件、同40.6減、また、OUT-INは33件、同2.9%減であった。一方、同月の事業承継M&A(注1参照)は68件であり前年同月比25.9%増となった。この中には食品メーカーまたは食品卸を対象とするケースが7件あった。

 九州を中心に食品の卸売などを営むヤマエグループホールディングス(福岡市、東証プライム上場)は、精米卸売業の福岡農産(福岡県川崎町)を買収する。現在、傘下のヤマエ久野(福岡市)を通じて14.8%保有している。社長から85.2%の株式を取得し、完全子会社化する。福岡農産は1976年設立、売上高17億4100万円。九州エリアを中心に精米の卸売りを行っている。ヤマエGHDは九州エリアでの双方の事業の市場深耕と成長を図る。

 製菓メーカーのホワイエ(東京都東村山市)は、洋菓子店を展開するプラチノ(東京都世田谷区)を買収した。同社は1991年設立。都内で2店舗経営している。チーズケーキ「アンジュ」はロングセラー商品となっている。後継者が不在だった。ホワイエはライン生産が可能な工場設備を持つ。実店舗による自社製品販売とブランド力の強化を推進する。

 家庭用・業務用調味料製造のエバラ食品工業(横浜市、東証スタンダード上場)は、全額出資子会社のエバラビジネス・マネジメント(横浜市)を通じて、液体調味料など製造販売のヤマキン(静岡県焼津市)を買収する。代表取締役等2人から全株式を取得する。同社は1948年設立。小袋製品を中心としたモノづくりの知見やノウハウに加え、小ロット生産など、柔軟かつ機動的な生産体制を有する。エバラ食品工業は小容量製品での製造・供給体制を強化する。経営環境変化への対応力を上げ、競争力の強化を図る。

 持ち株会社として中小食品企業などの事業支援や再生を行う食品製造・販売のヨシムラ・フード・ホールディングス(東京都千代田区、東証プライム上場)は、栗、和洋菓子向け栗加工品・製菓原料など製造、販売の小田喜商店(茨城県笠間市)を買収する。代表取締役がほかの株主から株式を取得したうえで、同氏から全株式を取得する。同社は1971年設立、売上高3億5200万円、従業員20人。栗菓子「ぎゅ」や「栗の甘露煮」などで知られている。仕入~加工~最終製品化まで一気通貫で手掛けている。ヨシムラ・フードHDは経営ノウハウの共有や中小企業支援プラットフォームによる支援体制を構築する。茨城県笠間市の「いわまの栗」のブランド力向上に向け、グループ一丸となって取り組む。

 今年は上場している食品会社が子会社等を売却するケースも目立つ。昭和産業は子会社で和洋菓子製造販売の菜花堂(岩手県一関市)を、菓子製造販売のシャトレーゼ(甲府市)に売却した。日本ハムは子会社で水産加工食品製造販売、水産原料輸入販売のマリンフーズ(東京都)を、総合商社の双日に売却した。明治ホールディングスは孫会社で食品卸売、物流業のケー・シー・エス(兵庫県西宮市)を、三菱食品に売却した。日清オイリオグループは子会社のもぎ豆腐店(埼玉県本庄市)を、豆腐メーカーの相模屋食料(前橋市)に売却した。

 企業の規模に関わらず食品メーカーや食品卸は人口減少に関わる危機感を有していると考えられ、同業界では競争力強化や経営の効率化に向けたM&Aが今後も活発に行われていくと思われる。


 

(注1)M&A件数は、株式会社レコフデータがニュース・リリース等公表資料などから集計しているデータによる
IN-IN:日本企業同士のM&A
IN-OUT:日本企業が当事者1(買い手)、外国企業が当事者2(売り手)となるM&A
OUT-IN:外国企業が当事者1(買い手)、日本企業が当事者2(売り手)となるM&A

ここでは公開情報から収集した「売り手の経営者や個人株主が株式の大半あるいは一定規模を売却した案件(オーナー系企業売却案件)」を事業承継M&Aと定義。
ただ、事業承継M&Aは捕捉不可能な未上場企業同士の非公開案件が多く、実際の件数はこの数倍と言われている。
公表ベースでデータを収集しており、未完了案件を含む。

 

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