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月刊事業承継M&Aレポート
2022年6月のM&A件数は334件で、前年同月比4.4%の増加となった。マーケット別ではIN-INが259件、前年同月比6.1%増、IN-OUTは53件、同3.9%増、一方、OUT-INは22件、同12.0%減であった。同月の事業承継M&A(注1参照)は59件、前年同月比28.3%増であった。このうち美容室を対象とするM&Aが3件あり、うち2件は傘下に複数の美容室運営子会社を擁するAB&Company(東証グロース市場上場)によるものである。
AB&Companyは、全額出資子会社で美容室フランチャイズシステム事業のB-first(東京都)を通じて、美容室運営のBELLTREE(神奈川県川崎市)を買収する。代表取締役から3億800万円で全株式を取得する。同社は2014年設立、売上高15億7400万円。AB&Companyは2014年にBELLTREEとフランチャイズ契約を締結した。
さらに、AB&CompanyはB-firstを通じて、美容室運営のKESHIKI(長野県松本市)を8月末に買収する。代表取締役から3億300万円で全株式を取得する。同社は2016年4月設立、売上高9億2400万円。AB&Companyは2016年にKESHIKIとフランチャイズ契約を締結した。
双方のケースとも代表取締役をグループの経営に参画させ、フランチャイズ運営体制を強化し収益をグループに取り込む。
また、経営コンサルティングを事業とするプロレド・パートナーズ(東証プライム市場上場)の全額出資子会社のブルパス・キャピタル(東京都)がサービスを提供するファンドの投資先で、業務委託型美容室チェーン運営のAshanti(東京都)は、髪質改善特化型ヘアサロン「アボガドヘアー(avocado hair)」のオーナースタイリストである財間一正氏から同事業の全部を6月23日付で譲り受けた。同氏はヘアーのスタイリストとして継続勤務しながら、新規出店や店舗管理、スタイリストの採用教育など、Ashantiの経営陣とともに関西エリアの多店舗展開を推進する。ブルパス・キャピタルは2021年10月にAshantiに投資した。
2022年6月、東証スタンダード市場に上場していた美容室運営のアルテ サロン ホールディングス(売上高86億円)が、MBOによる非上場化によって上場廃止となった。今年2月のMBO公表時のリリースをみると、フランチャイズ方式で店舗を展開する美容室の台頭や、美容師の独立開業増加などにより、2015年度に約24万であった美容室の数は2019年度には約25万4千に増加。一方で、人口が減少に転じたことで1店舗当たりの顧客数は毎年徐々に減少しているという。こうした中、美容室間での競争が激化し、中長期的な視野に立った抜本的な事業構造改革が必要と考えMBOによる非上場化に踏み切ったとのことである。
業種間で対象顧客等が異なるため一律な比較は困難だが、店舗が飽和状態と言われるコンビニや調剤薬局の店舗数は6万店前後である。これに比べると美容室の店舗数25万は、その4倍を超える水準であり、美容室間では熾烈な競争が繰り広げられていると推察される。同業界には個人事業主や中小企業が多いため、公表されるM&Aは少ないと思われる。ただ、美容室を巡るM&A(店舗の譲渡を含む)は増加しているとの見方は多く、経営体質の強化に向けM&Aが活用されつつあることが示唆される。
(注1)M&A件数は、株式会社レコフデータがニュース・リリース等公表資料などから集計しているデータによる IN-IN:日本企業同士のM&A IN-OUT:日本企業が当事者1(買い手)、外国企業が当事者2(売り手)となるM&A OUT-IN:外国企業が当事者1(買い手)、日本企業が当事者2(売り手)となるM&A ここでは公開情報から収集した「売り手の経営者や個人株主が株式の大半あるいは一定規模を売却した案件(オーナー系企業売却案件)」を事業承継M&Aと定義。 ただ、事業承継M&Aは捕捉不可能な未上場企業同士の非公開案件が多く、実際の件数はこの数倍と言われている。 公表ベースでデータを収集しており、未完了案件を含む。
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