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月刊事業承継M&Aレポート
2022年10月のM&A件数は355件で、前年同月比6.1%の減少となった。マーケット別ではIN-INが283件で前年同月比7.2%減、IN-OUTは49件、同3.9%減、一方、OUT-IN は23件、同4.5%増であった。同月の事業承継M&A(注1参照)は67件で前年同月の68件とほぼ同じ水準だった。このうち、システム開発を事業とするSYSホールディングス(東証スタンダード上場)が買い手となった買収が4件あった。買収対象の会社は、ネットパーク21(愛知県名古屋市)、つくばソフトウェアエンジニアリング(茨城県土浦市)、アシック(大阪府大阪市)、そして、アイガ(愛知県名古屋市)の4社であり、各社ともコンピュータソフトウェア開発・販売・運用を手掛けている。
ネットパーク21は1995年設立、売上高約4億5,100万円。ICTサポート、情報システム開発、アウトソーシングなどの事業を手掛ける。高速道路管理会社の情報システム子会社や大手自動車メーカーの情報システム子会社などの大手顧客との取引を継続している。配偶者から株式を取得した同社代表取締役より、自己株式を除く全株式をSYSホールディングスが取得する。
つくばソフトウェアエンジニアリングは1990年設立、売上高約3億6,400万円。映像編集を主力としたソフトウェア受託開発などの事業を展開している。タイ子会社を有し、現地の優良日系企業との取引を持つ。ほかの株主から株式を取得した同社代表取締役より、約4億7,100万円で全株式をSYSホールディングスが取得する。
アシックは1984年設立、売上高約1億8,500万円。制御系や業務系システムの設計・開発などの事業を展開している。大手搬送機メーカーなどとの取引を有する。代表取締役よりSYSホールディングスが全株式を取得する。
アイガは1999年設立、売上高約8億6,500万円。ITエンジニアアウトソーシング事業、デジタルマーケティング支援事業、ITサービス代理販売事業を展開している。大手外食チェーンのWEBサイトの開発・運営やITインフラ関係顧客などと取引を有する。ほかの株主から株式を取得した同社代表取締役より、SYSホールディングスが全株式を取得する。
SYSホールディングスは自社のホームページに「M&A企業募集」というサイトを掲示している。ここには、(1)グループ入りした企業の歴史と文化を最大限に尊重し、更にそれを強くすることがお互いの利益になる、(2)グループ入りした企業には、SYSホールディングスの強みである営業力、採用・育成力、経営管理力を最大限に活用して頂く、(3) グループ入りした企業には、上場企業としての最低限の内部統制や、経営管理の導入に向けてSYSホールディングス・グループの基幹システム(原価管理・勤怠管理等の統合システム)や業務支援システムを導入して頂く、といった点が方針として記載されている。
同社の決算説明会資料(2022年7月期)には、これまでM&Aによって子会社化した10社の直近と子会社化前の業績比較が含まれており、これによると9社が増収増益、1社が増益となっている。勿論、同社が対象会社の技術力の評価能力を有していることがM&Aを成功に導いてきたファクターと思われるが、傘下入りした子会社の主体性やカルチャーを尊重しつつ、事業や内部管理上の相乗効果を追求してきたことも要因の一つに挙げられよう。
新たに4社を買収することで、SYSホールディングスがどのような成果を生んでいくのか、今後の動きが注目される。
(注1)M&A件数は、株式会社レコフデータがニュース・リリース等公表資料などから集計しているデータによる
IN-IN:日本企業同士のM&A
IN-OUT:日本企業が当事者1(買い手)、外国企業が当事者2(売り手)となるM&A
OUT-IN:外国企業が当事者1(買い手)、日本企業が当事者2(売り手)となるM&A
ここでは公開情報から収集した「売り手の経営者や個人株主が株式の大半あるいは一定規模を売却した案件(オーナー系企業売却案件)」を事業承継M&Aと定義。
ただ、事業承継M&Aは捕捉不可能な未上場企業同士の非公開案件が多く、実際の件数はこの数倍と言われている。
公表ベースでデータを収集しており、未完了案件を含む。
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