2023年4月の事業承継M&Aマーケット概況 ～ベンチャー企業を対象とした事業承継M&A〜

　4月のM&A件数は375件で前年同月比3.4%減となった。マーケット別ではIN-INが299件で前年同月比4.8%減、一方、IN-OUTは59件、同43.9%増、また、OUT-INは17件、同48.5%減であった。同月の事業承継M&A（注1参照）は64件で前年同月（71件）に比べて9.9%減少。この中でベンチャーと考えられる企業を対象とした事業承継M&Aが8件あった。

　クオールホールディングスの傘下で医療人材紹介派遣事業のアポプラスキャリア(東京都)は、医療機関ITプラットフォーム提供ベンチャーのオンコール(東京都)を買収した。個人12人、法人3社から全株式を取得した。同社は2020年11月設立。「スポット人材プラットフォーム事業」「ネットワーク健診事業」の2つのサービスを提供する。医療機関向けのWebシステム、医師・看護師向け専用アプリを開発・運用している。アポプラスキャリアは比較的中長期に勤務する医療人材の紹介派遣事業を行っている。オンコールが行う短期間に勤務する医療人材をマッチングする事業を加えることで、医療現場の人材にかかわる様々なニーズに対応するソリューションを迅速に提供する。

　SMBCキャピタル・パートナーズ(SMBCCP、東京都)は、運営するSMBCCP投資事業有限責任組合2号(東京都)を通じて、ホームページ制作SaaS「ペライチ」提供ベンチャーのペライチ(東京都)を買収した。共同創業者である取締役3人から株式を取得したほか、5億円の第三者割当増資を引き受け過半数の株式を取得した。同氏らは退任した。同社は2014年設立。ホームページ作成やWEB予約、決済、メルマガ配信などのDX化に必要な各種機能をオールインワンで提供している。登録会員数は40万人超。資金調達により国内外の開発体制を強化する。SMBCCPは事業基盤の強化などを行う。

　資本参加を通じて資本業務提携を締結したケースもあった。

　GFAは、NFTコレクション事業ベンチャーのN3(東京都)に資本参加する。資本業務提携した。代表取締役等から9.99%の株式を取得する。同社は2018年設立。現代アーティストを中心に、WEB3をプラットフォームとした様々なプロデュースを展開している。TikTokフォロワー85万超のキャラクターIP「BLUBEA」をコレクション化するなど、NFTコレクションの事業開発・マーケティングに実績を有する。GFAは展開するメタバース空間「META CAMELOT」のアバターNFT、付随するデジタルアイテムの販売でN3の有する新規アーティスト、IPを取得しながら、共同でNFT販売の強化を図る。

　レコフM&Aデータベース（（株）レコフデータ提供）によると、2020年に24件であったベンチャー企業に対する事業承継M&Aは2022年には39件となり、2023年も1～4月の4カ月間で21件となった。イノベーションの進展が著しい中、ベンチャー企業に対するM&Aは活発な状況継続すると考えられる。

（注1）M&A件数は、株式会社レコフデータがニュース・リリース等公表資料などから集計しているデータによる
       IN-IN：日本企業同士のM&A
       IN-OUT：日本企業が当事者1（買い手）、外国企業が当事者2（売り手）となるM&A
       OUT-IN：外国企業が当事者1（買い手）、日本企業が当事者2（売り手）となるM&A

ここでは公開情報から収集した「売り手の経営者や個人株主が株式の大半あるいは一定規模を売却した案件（オーナー系企業売却案件）」を事業承継M&Aと定義。
ただ、事業承継M&Aは捕捉不可能な未上場企業同士の非公開案件が多く、実際の件数はこの数倍と言われている。
公表ベースでデータを収集しており、未完了案件を含む。