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2023年9月の事業承継M&Aマーケット概況 ~半導体関連の事業承継M&A~

月刊事業承継M&Aレポート

2023.10.31

 9月のM&A件数は293件で前年同月比、26.4%の減少となった。マーケット別ではIN-INが218件で前年同月比25.1%減、IN-OUTが57件、同16.2%減、また、OUT-INは18件、同53.8減であった。同月の事業承継M&A(注1参照)は53件で前年同月(62件)に比べて14.5%減少した。この中で半導体関連のM&Aが1件あった。

 研削盤及び半導体関連装置メーカーの岡本工作機械製作所(群馬県、東証スタンダード上場)は、産業機械・生産設備の製作、メンテナンスの大和工機(宮崎県)を買収する。個人から全株式を取得する。同社は1982年設立、従業員53人。発注先のニーズに沿って半導体製造装置や真空装置などの組立・製造を行う。複数棟保有する大型のクリーンルームは九州でも有数の生産設備で、豊富な納品実績により設計・加工技術を蓄積してきた。同社は大和工機を半導体関連装置の新たな製造拠点及び開発ラボとして活用するとともに、両社の技術・ノウハウなど事業リソースを組み合わせることで、今後の半導体ニーズに対応する意向だ。

 現在、熊本県では、世界最大のファウンドリーである台湾のTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)が、ソニーグループ、デンソーとともに半導体の製造工場を建設している。これとともに多くの半導体関連企業が九州での設備投資を増やしており、今回の岡本工作機械製作所のM&Aも同様の動きと思われる。

 北海道では日本の大手半導体や自動車メーカー、通信会社などによって設立されたRapidusが半導体製造の工場建設を進めている。また、宮城県ではSBIホールディングスと台湾の大手半導体受託生産メーカーである台湾のPSMCが、共同で半導体工場を建設する方向と伝えられている。これに伴い半導体関連投資が広がる可能性があり、場合によってはM&Aが活用される局面も増えそうだ。

 


(注1)M&A件数は、株式会社レコフデータがニュース・リリース等公表資料などから集計しているデータによる
       IN-IN:日本企業同士のM&A
       IN-OUT:日本企業が当事者1(買い手)、外国企業が当事者2(売り手)となるM&A
       OUT-IN:外国企業が当事者1(買い手)、日本企業が当事者2(売り手)となるM&A

ここでは公開情報から収集した「売り手の経営者や個人株主が株式の大半あるいは一定規模を売却した案件(オーナー系企業売却案件)」を事業承継M&Aと定義。
ただ、事業承継M&Aは捕捉不可能な未上場企業同士の非公開案件が多く、実際の件数はこの数倍と言われている。
公表ベースでデータを収集しており、未完了案件を含む。

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