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1990年の創業以来、幾多の困難を乗り越え金属加工業を発展させてきたティー・エム・ティーオカモト株式会社。同社はなぜM&Aを決意し、成約から半年が経つ今どのような将来を見据えているのか。 創業社長である岡本勉氏と、譲受企業 JOHNAN株式会社 紅林氏 古尾谷氏にご登場いただき、M&Aの経緯と今後の展望についてお話をうかがった。
ティー・エム・ティーオカモト株式会社
代表取締役社長
岡本 勉
愛知県名古屋市にてティー・エム・ティーオカモト株式会社を創業しました。金属加工・プラスチック金型の製作、設計等を手掛ける他、切削工具・機械の販売も一部扱う年商15億の企業に成長させたのち、当社を2020年9月にJOHNAN株式会社に譲渡されました。
岡本(譲渡企業)
父がプレス業を営んでいたのですが、加工の自動化の流れに押され経営が立ち行かなくなりました。当初1パンチ3〜4円だったものが1パンチ1円を切るようになり、人の手で打ったところでお金にならなくなってしまったのです。
生活について父から相談を受けたこともあり、それまで歩合でやっていた部品製造・加工の仕事で新たに事業を興し、父を支えることを決断。22歳で工場を借りて一人で事業をスタートし、半年後に法人化しました。
岡本(譲渡企業)
13名もの社員を泣く泣くリストラしてなんとか耐え忍ぶ、とても苦しい状況でした。それまで長期的に請けていた総合商社からの仕事も、予算が3分の1以下まで大幅カットに。ここで、その仕事の受注を思い切ってやめ、直接大きな企業に売り込んで仕事をしようと方針転換を決めました。
これまで続けていた大きな仕事をやめるというのは賭けではありましたが、厳しい時こそ逆境を跳ね返して、自分を売り込むチャンスに変えたかったのです。この決断が功を奏して、安定した仕事量と利益率を確保できるようになりました。またきちんと提供するものに見合う対価をいただけることで、仕事もより面白くなりましたし、直接感謝されることも増えました。
創業時からいいものを作り続け、お客様のご要望に応える中で力をつけてきていたことで、なんとか乗り越えられたのだと思っています。
これらの逆境を乗り越え安定を得てからは、機械にまつわる部品であれば、小指の爪先よりも小さなものから車よりも大きなものまで、ありとあらゆる部品を扱うようになりました。これは創業当初はお金がなくてできなかったことです。製造業は「餅は餅屋」と分かれるのが一般的ですが、利幅を確保するためにも、分け隔てなく全て自分たちでやろうと。もともと資産もないところから始めていますから、怖いものはありませんでした。
岡本(譲渡企業)
2019年頃、同業者でもM&Aをする人が増え、話を聞いて「そういう選択肢もいいな」と思っていた時に、レコフさんから連絡をいただきました。明確にM&Aをやろうという思いはまだありませんでしたが、いずれするかもしれないことを考え、会社の価値を正しく把握しておきたいなと査定をお願いしたのです。結果としておよそ予想通りの価格ではあったものの、まだ売る気はなく、話はそのままになっていました。
しかし、その後新型コロナウイルスの感染が拡大。リーマンショックで社員のリストラを経験していますから、今回も同じ状況になってしまうのか、従業員を守れるのだろうかと不安を感じるようになりました。 今でこそ毎年コンスタントに利益は出せているものの、コロナ禍が何年も続けば、いずれ決断を迫られる時がくるはずです。リーマンショックの苦い思い出から、譲渡するのであれば会社がいい時に渡せたらという思いはあったのですが、どこか現実的ではなく、気持ちは揺れ動いていました。
岡本(譲渡企業)
経営に対する不安が大きくなっていった頃に、レコフさんからJOHNANを含む2社をご紹介いただいて面談し、JOHNANの工場には見学にも伺いました。新型コロナウイルスの影響で稼働が止まったのは3ヶ月でしたが、その間に話が大きく進んだ形でしたね。
紅林(譲受企業)
成長を加速させるという意味で、M&Aは非常に有効な手段だと考えています。事業を大きく成長させていく過程では、自分たちの知らない文化や常識にたくさん出会います。ある領域の中にとどまらずにさらなる成長を目指すのであれば、同じ文化でずっとやり続けるのではなく、他の血を取り入れて学びを得ることは大きな意義を持つはずです。平たくいうと、多様性ですね。
古尾谷(譲受企業)
そうして自社にない要素を取り入れることは、エリアやお客様、そして外部環境の変化に対するリスクの分散につながります。紅林が担当する部門は、10年前に他のオーナーさんに譲っていただいた部門で、ここで軸足が大きく2つになりました。それがあったおかげで、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて全事業が壊滅的になることを防げたのだと思っています。
このようにJOHNANはM&Aの意義を大きなものと受け止め、これまで海外の事案も含めて5社ほどとM&Aをしています。その中で、できる限りオーナーさんに「JOHNANに譲ってよかった」と喜んでもらえるように、会社を数字だけで見るのではなく社員を大切にすることを重視してきました。
M&Aをするにあたっては、事業承継で苦労されるケースが多いもの。移行のタイミングで一時的に弱っても、失敗してもいいので、少しずつ環境を整備して育っていく過程を、JOHNANとして支えていけたらという思いがあります。また中小企業にとっては労務問題の負担が大きくありますが、その点で苦労してきた経験を活かしてお手伝いしていきたいなと。それがやがて、JOHNANグループの成長につながっていくと捉えています。
古尾谷(譲受企業)
M&Aを検討するにあたっては、交渉の中で「この社長様であれば安心だ」と思えることが一つの重要な条件になりますが、率直に岡本様とはフィーリングが合うな、信頼できる方だなと感じていました。この半年間何度もお会いする中で、嫌な思いをしたことが一度もない、それが大きかったですね。
紅林(譲受企業)
またお話を伺っていくと、業績がとても良いなと。そしてそれは経営が非常にしっかりされているからだなと感じました。パートナーになる上で、自立して経営ができている会社であるという点を重視していたので、その点は重要なポイントだったなと振り返ります。
古尾谷(譲受企業)
JOHNANでは設備の設計・製造を行っていますが、使用する部品は他の会社から購入しています。金属加工業を主軸としたTMTと一緒になることで、一層の競争力が得られるのではないかと考えました。
またJOHNANでは半導体の業界を主軸としつつ、軸足の分散のために2年ほど前から自動車業界にも参入していたため、同業界での実績を持たれている部分が魅力でありますし、機械関係とのつながりを活かして他業界にも参入していけたらと期待しています。
紅林(譲受企業)
最終的にJOHNANは自動車業界、TMTとしては半導体業界に進出していきたいという思いがあるので、今はそれぞれの業界で走ってきた互いの常識を融合させ、理解を深めあいながら、さらに新しいチャレンジができる体制を作ろうとしています。スピードを大事にされる点など、今のTMTのいいところを潰したくはありません。いかに良さを大切にしながら、課題となっている労務関連をはじめとした仕組みを作っていけるか。しっかりと相談しながら進めていこうというところです。
岡本(譲渡企業)
労務関連はこれまで忙しくてなかなか着手できていませんでしたが、一緒にやってくれるパートナーができて安心して取り組めるなと、ほっとする思いです。始まったばかりなのでまだまだこれからではありますが、こうして組織や制度が整い、また人が育っていくことで、今後さらに会社として発展していけると思っています。せっかくいい設備を揃えているので、ずっと目標としていた24時間体制での稼働も実現していけたら嬉しいですね。私一人での管理では難しかったことが、前進していくのではと期待しています。
紅林(譲受企業)
これまでは、50名ほどの従業員を岡本様お一人で回していらっしゃいましたからね。お話にあった24時間体制の実現をはじめ規模を拡大するにあたっては、また違ったマネジメントも必要になると思うので、そういった変化に対しても一緒になって取り組んでいきます。 今回M&Aをしたことによる相乗効果で、利益を出し続けながら規模を拡大し成長していきたいですね。
古尾谷(譲受企業)
またJOHNANの拠点を名古屋にも持ちたいとかねて考えていたので、さらなるM&Aを視野に入れつつ、TMTを核にして名古屋エリアをさらに拡大していけたらと思います。
岡本(譲渡企業)
今回レコフさんには希望条件に近づくよう金額の交渉をしていただいた他、保有資産をどうするかについても、私にとってメリットになる仕組みをご提案いただきました。こちら側に立ってくれる専門家という存在が、とても頼りになったなと感じています。気持ちが揺れている時にも正直にお話しすることができ、うまくコミュニケーションをとって進めることができたので、心強かったですね。
まだ私自身が経営者の一員ではありつつも、今回のM&Aを経てパートナーができたことで自分だけの責任ではないと思えるようになり、肩の荷が少し軽くなりました。まだ半信半疑ではありますが、今後体制が変わっていくにつれて、本当にM&Aを選択してよかったと思えるようになるのではと思います。弊社でご成約されたM&A事例・実績をご紹介します。
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