Contract interview

「60歳を区切りに新たな道へ…」M&Aが自身と次世代に挑戦の機会を生んだ

2024.09.25更新日:2024.09.25
譲渡企業
株式会社ルノール

インタビュー概要

北海道富良野市で、道産素材の良さを生かしたお菓子を製造・販売している「菓子工房フラノデリス」。「ふらの牛乳プリン」を筆頭に、数多くの魅力的なお菓子を生み出し、全国区の人気を誇るこの洋菓子店を開いた株式会社ルノール。順調に発展を遂げてきた同社が、なぜM&Aを決意することになったのか。どうして、そのパートナーとしてレコフを選んだのか。創業者の藤田美知男様に、これまでの経緯について伺った。

インタビュイーのご紹介

株式会社ルノール

創業者

藤田 美知男

調理師学校卒業後、東京のフランス料理店に勤務していましたが、製菓に興味を持ち、パティシエとしての道を歩み始めました。同時にコンピュータシステムについても学び、店舗販売だけでなく通販で全国展開できるお店として2001年に北海道富良野市に「菓子工房フラノデリス」を開業しました。売上は好調でしたが、近年の環境の変化から「大きい企業に任せ、会社を発展させたい」という想いで2024年6月に株式会社ブロードエッジ・アドバイザーズへ当社を譲渡しました。

「楽しい」が原動力。
自分の気持ちに素直に
挑戦を続けてきた

Question

まずは株式会社ルノールという会社の成り立ちからお話しください。

藤田

実家が仕出し屋ということもあり、昔から料理の道に進もうと思っていました。調理師学校を出てすぐ、東京のフランス料理店に勤めたのですが、そこで気づいたのがデザートの重要さ。コースの最後に出てくるデザートの良し悪しが、お店の印象や最終的な満足度を左右すると感じ、製菓の世界に興味を持ちました。そこで一念発起して、東京や大阪、神戸など、さまざまな洋菓子店やレストランの製菓部門でパティシエとしての修業を積みました。

そのうちにどんどん楽しくなって、シェフではなくパティシエとして働こうと思うようになったのです。

レシピを効率的にまとめるために、コンピュータシステムについても学んでいました。次第にシステム分野について「楽しい、もっと深く知りたい」と思うようになり、ちょうどご縁もあったので、1年ほどシステム会社でテクニカルサポートの仕事をしました。

その後は、東京の洋菓子店で、再びパティシエとして働きました。1年ほど勤め、本格的に独立を考えだした頃、その店の社長から「本社で商品やシステム、通販の仕組みの開発などに携わってくれないか」と言われ、1年限りで開発ディレクターにも挑戦。お店の運営元がデザイン会社だったので、商品開発のノウハウ、通販の面白さだけでなく、デザインの大切さも学ぶことができ、「店舗での販売はもちろん、通販を活用して全国においしいお菓子を届けたい」と自分の目指すお店のイメージが固まりました。そうして2001年に創業したのが株式会社ルノールです。

創業と同時に、富良野市の中心部に「菓子工房フラノデリス」をオープン。機材は最小限にして全て中古でそろえ、内装は簡単なものにして、棚などは自分で作りました。お店にあるレジシステムや、通販のシステムは全て自作しました。開業費用は、本州でさまざまな仕事をしている時から計画的に貯めていたので、自己資金のみで賄うことができました。返済の負担がないので、自由に楽しくやろうと思っていましたね。

経営について学んだわけではありませんが、東京にいた頃は、システムに関する作業ができる人材が限られていたこともあり、あるお店では仕入れや損益計算書のデータベースづくり、出店企画書づくりなどを社長から任せてもらっていました。そこで自然に経営感覚が培われたと思います。経営をしていく上でどうするべきなのかが、直感でわかるようになっていました。

Question

なぜ北海道の富良野市にお店を出そうと思ったのですか。

藤田

北海道は、お菓子の原材料が豊富に生産されており、特に乳製品がとてもおいしい地域です。富良野はそういった調達面での強みに加え、とても自然豊かで、ドラマなどの影響で知名度も高い場所でした。「誰もが名前を知っているところがいい」「空気のおいしいところでお菓子を作りたい」と思っていた私にはぴったりでした。

Question

人気店となったきっかけは何だったのでしょうか。

藤田

「ふらの牛乳プリン」でしたね。開店から少し経った頃、使われていなかった小さな牛乳瓶を知り合いの工房で見つけたんです。そこでピンとひらめいて、牛乳瓶に入ったプリンを作ったんですよ。それが百貨店のバイヤーの目に留まり、北海道物産展に出品したら人気に火がついて、売り上げが約3倍になりました。2004年には、手狭になってきたこともあり、現在の場所に店舗を移転。同時期にタイミングよく、富良野でドラマの撮影があり、俳優さんがテレビでお土産として紹介してくれたことなども重なって、雑誌の「お取り寄せプリンランキング」で1位になりました。通販・店舗ともにとても盛り上がって、お客さんが増えましたね。

時代の変化に合わせて
お店をもっと盛り上げるには
M&Aが最適と判断

Question

順調に成長を遂げている中で、M&Aを考えるようになった理由を教えてください。

藤田

大きな理由は、時流の変化に伴い、店舗の客層に変化が出てきたことです。以前は、通販で当店を知った日本人のお客様が、富良野観光の中でお店にも寄ってお土産を購入したり発送したりするケースが多かったのですが、近年はインバウンドの方が増え、お土産の購入などよりもカフェ利用を目的とするお客様が多くなってきたのです。

また、開業当初は「将来的に物流が発展し、北海道からでも、全国各地に翌日配達ができるようになるだろう」と見込んでいましたが、現況はその予想とは少し違っています。沖縄県や石垣島など、遠方からの注文もある中で、今後は物流の課題も生じてくるのかなと思っていました。人口減の中で、採用面でも課題を感じていました。そんな折にコロナ禍となり、「お店を縮小したり、畳んでもいいかな」という思いが生まれたのです。でも、「せっかくここまでやってきてスタッフたちも頑張ってくれているのに、その選択は誰もうれしくないのではないか。私の考え方とは合わなくなってきたものの、変化自体は悪いことではなく、別の視点から見ると大きなチャンスなのではないか」という思いもありました。

思案を巡らす中で、「大きい会社にお任せした方が、この店がより活用され、より発展していくことにつながる」という考えに至り、事業譲渡を考えるようになりました。

Question

レコフとの出会い、また、M&Aを進める上でのアドバイザーとしてレコフを選んだ理由について教えてください。

藤田

創業してから、M&Aに関する営業の電話やDMは数多く届いていました。レコフの担当者ともお話をする機会があり、その時は「そういう方法もあるんだな」と頭の片隅に置いておく程度でしたね。実際にM&Aをしようと動き出したのは、2023年の12月ごろで、レコフを含め3社に話を聞き、検討しました。その際、自分の中で60歳を一つの節目にしたいと思っていること、2024年の誕生日までに譲り受け企業から意向表明をいただいたら進めるが、ないようならM&Aはしない、という意志も伝えました。

その後、一度は別会社にM&A仲介をしてもらおうと思っていたのですが、ある時、レコフの担当者が私の好きな銘柄のワインを手土産にお店にやってきたんです。その時、「この人に頼もう」と考え直しました。決して、プレゼントをもらったからではないですよ(笑)。「私の話をちゃんと聞き、覚えていて、探してくれたんだな」と、その真摯さに心打たれたんです。

Question

会社を任せたいお相手の条件はどのようなものだったのですか。

藤田

このお店をもっと面白く、そしてもっと成長させてくれる会社がよかったんです。洋菓子などの飲食事業がベースにありながら、当社とは全く違うタイプの洋菓子を出していて、社風的には、勢いとチャレンジ精神があるところがいいなと思っていました。候補先には、洋菓子店やパン屋、不動産会社などがあり、担当者からは「この会社とこの会社からはおそらく意向表明が来ると思う」というような話もいただいていました。

3社から意向表明書が来たと担当者から連絡があったのは、60歳の誕生日当日でした。3社のうち2社は、これから洋菓子店を展開していきたいと考えている企業。もう1社は、パティスリーなどの飲食事業やワイン事業を行っている東京の会社で、後者が譲受企業となりました。当社のお菓子は素材を生かしたシンプルなものが多いですが、譲受企業ではスタイリッシュな見た目のお菓子や、当社にはないショコラなども扱っていて、描いていた条件にピッタリだなと。面談でフィーリングも合うと感じ、すぐに決めました。

Question

レコフの担当者は、どのようにお役に立てたでしょうか。

藤田

最初から最後まですごく一生懸命動いてくれて、本当にありがたかったです。特に書類準備については、「一人で全書類を用意するのは大変だな」と思っていたところ、担当者が電話や対面でのヒアリングをもとにほぼ全ての書類をまとめてくれました。その後の段階でもずっと、電話や対面でその都度お話しながら、スムーズに進めてくださいました。知識が豊富でレスポンスも早く、とても助かりました。

可能性を広げ
さまざまなチャンスを
作り出せるのがM&A。
これからも挑戦を続けたい

Question

成約後の会社のご状況や、今のお気持ちについてお聞かせください。

藤田

社員の役職はそのまま、店舗も会社も今の場所に残り、譲受会社のグループに入りました。オーナーは、近々、私から譲受企業の方に代わる予定です。私としては、今回のM&Aで、より成長や活躍ができる機会を社員に提供することができたのではないかと思っています。別の店舗で活躍したり、修業して戻ってきたりと、大きな企業の一員となることで可能性の幅が広がったのではないでしょうか。スタッフにM&Aについて伝えた時は驚いていましたが、皆、チャレンジ精神のある人たちなので、「頑張ります」と言ってくれました。社員のこれからの成長と活躍は、お世話になってきたこのまちにも、きっといい影響をもたらしてくれるものと思います。

Question

今後は、どのような人生を歩もうと考えているのでしょうか。

藤田

このお店からは離れて、今度は1人で、小さなお店をやりたいと思っています。自分で構築したシステムを使いながら、自分で作ったスイーツを出して、1人だけでどこまでできるか挑戦してみるのも面白そうだなと。場所などはまだ決めていないですが、「コンパクトで面白いお店」を作ろうと構想を膨らませているところです。

Question

最後に、M&Aを検討されている会社にメッセージをいただけますか。

藤田

まず、自社を「誰かに譲渡したい、残していきたい」と思えるような会社にできたということは、素晴らしいことだと思います。そんな誇れる会社を、他の誰かにつないでいってほしいという気持ちを抱えていたり、育ててきた事業で他の誰かにチャンスを与えられればと考えている経営者の方にとって、M&Aは有効な手段の一つなのではないでしょうか。事業の売却を行うことで、オーナー自身にも、新たに別のこと、好きなことに挑戦できるチャンスが生まれます。会社の思いや価値を大切にした承継の実現に向け、レコフのような専門家の力を借りることも、今後の選択肢として視野に入れてみてはと思います。

本件のアドバイザー

株式会社レコフ アソシエイト 
北氏 邦彦

みずほ証券株式会社では富裕層のお客様の資産運用コンサルティングや中小企業様の事業承継支援に従事しておりました。その際、社長様から経営の課題や後継者問題等のお悩みを伺うことが多くございました。私自身、実家が100年以上続く石材店を営んでおり、事業承継の問題に正に直面しておりますので、誰よりも社長様のお気持ちに寄り添えると自負しております。出身は兵庫県で、小学校から高校までサッカー部に所属、大学時代はフットサル部で全国大会優勝の経験がございます。趣味はフットサルの他、ゴルフ、将棋、読書、料理です。

主な成約インタビュー

弊社でご成約されたM&A事例・実績をご紹介します。

選ばれる理由

  • 創業1987年の老舗イメージ画像
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    創業1987年の老舗

    レコフは日本にM&Aという言葉が広まる前から創業している歴史あるM&A助言会社で、豊富な実績がございます。

  • 業界トップクラスの成約件数実績イメージ画像
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    業界トップクラスの
    成約件数実績

    創業以来、1,000件以上の案件の成約をサポートして参りました。M&Aブティックの草分けとして様々な案件に携わってきた経験を蓄積し、新たなご提案に活用しております。

  • 約2万社の顧客基盤数イメージ画像
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    業界に精通した
    アドバイザーがサポート

    プロフェッショナルが業界を長期間担当し精通することにより、業界の再編動向、業界を構成する各企業の歴史や戦略、トップマネジメントの人柄に至るまで、対象業界に関する生きた情報を把握しております。

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