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昭和36年の創業以来3代にわたり、地域になくてはならない自動車学校として交通教育を支えてきた茨城県西自動車学校。同社はなぜM&Aを決意したのか。そして成約後の現在はどのようなビジョンを見据えて取り組んでいるのか。
3代目社長である塚田氏と、譲受企業 モトヤユナイテッド株式会社 小野氏にご登場いただき、M&Aの経緯と今後の展望についてお話をうかがった。
有限会社茨城県西自動車学校
代表取締役
塚田 秀紀
昭和36年に自身の祖父が有限会社茨城西自動車学校を創業しました。東京の一部上場企業(創業初期のベンチャー時代)に入社し、31歳の時に三代目として当自動車学校の代表取締役に就任しました。社長就任後、同県上筑波自動車学校を買収し、2校を経営したのち、2018年9月に有限会社茨城県西自動車学校をモトヤユナイテッド株式会社に譲渡されました。
塚田(譲渡企業)
創業者である祖父は、もとは農業や養蚕業を営んでいました。やがて指定自動車教習所制度が始まったことを機に、昭和36年5月に茨城県西自動車学校を創業。当時自動車学校がなかった筑西エリアに地域に必要とされる施設を作り、交通教育に貢献したいという思いで始められた事業です。
私は次男なので当初は家業を継ぐ予定はなく、東京に出てベンチャー企業に勤めていました。ところが、兄が家業を継がず別の道に進むことを選択。父に「茨城に戻ってきてくれないか」と頼まれたのです。事業家の一族に生まれ、会社経営には興味がありましたし、茨城という土地も好きだったため、帰郷を決めました。
自身の手で銀行から融資を受けてこの自動車学校の株式を取得することから始め、株主兼代表に。31歳で代表取締役に就任し、後に上筑波自動車学校とのM&Aを行って2校を経営してきました。
エリアの人口動態をふまえ長い目で見ると、自動車学校の事業だけで存続していくことは難しくなると考えられます。そこで自動車学校が傾いてもリスクを回避できるよう、新たな事業を立ち上げて柱を増やすことを目指し、フォークリフトなどの作業免許を取得できるようにしたり、高校生と地域の中小企業をマッチングする就職支援を行ったりと事業を展開してきました。
社員が50人いれば、その周りには3人、4人の家族がいます。経営者としてその200人の生活を守り、誰一人路頭に迷わせてはいけません。祖父が創業した会社の社員をどうやって守っていくか、ただそれだけを考えて歩んできた道のりだったと振り返ります。
塚田(譲渡企業)
様々な事業にチャレンジしながらも、右肩上がりの成長を続けられていた訳ではなく、自動車学校業界が「斜陽産業」と言われる中ワンオーナーで会社を経営し続けることは今後難しくなるだろう、という思いが生まれていました。
信念を持ってやり続けることはとても大切ですが、固執することで守るべきものを守れなくなってしまっては意味がありません。やはり経営者はニュートラルでいなければいけないですし、どこかで引き返す勇気も必要ですから、事業売却は常に一つの選択肢としてありました。大手企業の資本が入れば、事業を安定させ永続させられる。それは従業員にとっても良いことなのではと思えたのです。
事業は「売ってもらえませんか」と言われた時が売り時なので、もしタイミングが合えば、手放すタイミングを見誤ってチャンスを逃してしまうことのないように、とは常に考えていましたね。
小野(譲受企業)
事業を成長させ組織を永続させるためにも、M&Aは非常に有効な手段だと捉えています。モトヤユナイテッドは昭和23年の創業以来岡山県のみで事業を行ってきましたが、私が3代目社長に就任した翌年の2015年には、茨城県の土浦自動車学校とのM&Aを行い、関東圏にもご縁ができました。
少子化や若者の車離れなど逆境的な要素はもちろんありますが、接遇や利用のしやすさ、通いたくなる施設づくりなどのサービス面と、教員の指導力の両軸で改革を行い、土浦自動車学校の業績のV字回復に成功。コストや教習料金を下げなくとも多くのお客様に選ばれる自動車学校になれる、そしてそれは岡山以外のエリアでも十分に通用すると実証できたことから、引き続きM&Aによってグループ校を増やしていこうという戦略に舵を切りました。
塚田(譲渡企業)
私が事業売却をするか、なんとかワンオーナー経営で乗り切ろうか、と考えていた頃にレコフさんからご連絡をいただき、2社と面談しました。その後、他にもう1社興味を持たれている会社があるので話だけでも聞いてみないかとご提案があり、最後に面談をしたのがモトヤユナイテッドです。偶然にも、小野さんとは以前から知り合いだったのです。
小野(譲受企業)
土浦自動車学校とのM&Aを機に茨城県内の自動車学校業界の方々との交流が生まれ、その当時塚田さんとも出会っており、業界の先輩として交流を持たせていただいていました。
塚田(譲渡企業)
どこかで決断をしなければいけないとは思っていましたし、土浦自動車学校の経営母体がモトヤユナイテッドに変わって以来右肩上がりに伸びているのは見てきていましたから、前向きにお話を進めさせていただきました。
ただ株式を譲渡した後に会社に残るつもりがないことはお伝えしていました。もちろん会社にはとても愛着がありましたが、自分の中で区切りをつけ、経営からは身を引くべきだろうと思っていたのです。しかし小野さんには引き続き社長をお願いしたいと引き止めていただいて。
小野(譲受企業)
やる以上は業界で一番を目指したいという思いがありますから、一緒にいて、お力を貸してもらいたいとお伝えしましたね。
塚田(譲渡企業)
今後の戦略や夢を熱く語る小野さんのお言葉に、今後の会社の成長をそばで見ていたいなと。微力でも自分にお手伝いができるならという思いが生まれ、最終的には経営陣として会社に残ることを決めました。
塚田(譲渡企業)
話をした時は驚いた様子でしたが、私が社長として残ることを伝えると「社長が残ってくれるなら良いです」と受け止めてくれました。信頼してもらえているのだなと、ほっとした場面でもありましたね。社員との信頼関係を考え、小野さんもモトヤユナイテッドの経営層の方々も私のことを立ててくださり、社員との交渉の場などを任せていただけたので、非常にやりやすかったです。
小野(譲受企業)
現在はコロナ禍での規制緩和を受けてオンライン学科が導入された他、AI教習の導入に向けた取り組みも始められているなど、自動車学校で働く方々の仕事が機械に取って代わられるという動きが生まれています。
こうした動きを背景に、現在は「人にしかできないこと」を追求し、新たな職業をつくり出す事業展開に取り組んでいます。一例として、宅配ロボットや自律移動ロボット、農薬散布や電力会社の点検業務などに使われるドローンなどのオペレーターを育成する教習所の展開を進めてきました。
良いご縁があれば今後もM&Aによるドミナント戦略を拡大し、自動車学校としての事業に磨きをかけながらも、自動化が進む中で広がるマーケットも確実におさえていけるように。今後50年、60年存続できる事業をつくり出すことを目指す、途上にあります。
小野(譲受企業)
もともと知り合いという近い関係の中ですから、レコフさん無くして今回のM&Aは成立しなかったと思っています。貴重なご縁をいただき、間に立つ第三者の立場からしっかりと条件面をまとめていただけたことで今があります。
特に譲渡企業の社長が退任してしまうケースが多い中、塚田さんに引き続き会社の成長に力を貸してもらえることになったのは、レコフさんが互いの思いが重なるご縁を引き合わせてくださったからこそだと思いますね。
売り手・買い手それぞれに思いや迷いがある中で行われるM&Aは、非常に繊細なものです。その中で担当の山下さんが何かあればすぐに茨城まで足を運んでくださるなど、両者の思いや背景を汲み取るために細やかに対応してくださったことが印象に残っています。
塚田(譲渡企業)
自動車学校業界のM&A事例自体がそこまで多くはない中で、業界のことを非常によく勉強してくださり、様々なところに足を運んでは情報を仕入れて寄り添っていただけたのがありがたかったなと思います。
小野(譲受企業)
現在は、社員とその家族の生活を背負ってきた経験を持つ方が経営陣として社内にいてくださることに、大きな心強さを感じています。このように優秀な経営人材を得るという意味でも、また短い時間の中で事業を成長させる、後継者を得て会社を存続させる、個人保証のリスクをクリアにするなどの観点からも、M&Aは経営者が抱える課題を解決するために有効な手段なのではないでしょうか。
会社を買収するというマイナスのイメージから踏み切れない方も多いのではと思いますが、社員を守るために決断が必要な場面はありますから。今回の事例が、迷われている方がレコフのようなプロに相談し、課題を解決する最適解に出会うきっかけになれば良いなと思います。
塚田(譲渡企業)
一人で考えられること、できることには限界がありますが、5人いれば5人の情報量と意見をぶつけることができますし、その分選択肢は広がります。またある自動車学校で成功したことを他校でも試したり、合わなければ意見を出し合って止める決断をしたり。M&Aによって新たな仲間を得たことで、事業をより進めやすくなり、会社の可能性が大きく広がったことを実感しています。
事業をより良い形で永続させていくための一つの選択肢として、ご縁があればチャンスを逃さず掴んでいけると良いのかなと思います。
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