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業界別M&A
熱絶縁工事業界は建設業界に属していて、業界内には中小の下請け会社が多数存在しています。熱絶縁工事業界に課題を抱えている、もしくは事業規模の拡大を考えていて、熱絶縁工事業界のM&Aを検討している会社も多いのではないでしょうか。
熱絶縁工事業界のM&Aを成功させるには、業界の市場動向と課題、さらにM&A動向をしっかりと把握することが大切です。
今回は熱絶縁工事業界の市場動向や課題を紹介した上で、業界のM&A動向とM&Aによるメリット、成功のポイントを解説します。
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熱絶縁工事業界とは、熱絶縁工事を行う「熱絶縁工事会社」で構成される業界です。
そもそも熱絶縁工事とは、工作物もしくは工作物の設備に熱絶縁を施す工事を指します。
例えばビルの空調ダクトに断熱材などを巻いて、冷房の冷たい空気を冷たいまま各所に送れるようにします。対象物から発生する熱や冷気を逃がさず、エネルギーを効率よく利用できるようにすることが熱絶縁工事の主な目的です。
また、熱絶縁工事業は建設業許可が必要な29業種の1つです。熱絶縁工事業界は建設業界に属していて、熱絶縁工事会社は建設会社の一種であると言えます。
熱絶縁工事会社が施工する熱絶縁工事は、主に「保温工事」「保冷工事」「耐火工事」「耐火断熱工事」「板金工事」「防音工事」の6種類があります。
●保温工事
保温工事は、主に常温以上~1,000℃以下の配管・ダクトなどの表面を保温材で被覆する工事です。保温材によって熱放散が少なくなり、外部からの熱吸収や結露・凍結を防ぎます。保温材には、ガラス繊維から作られたグラスウールなどが使われます。
●保冷工事
保冷工事は、常温以下の冷媒管や超低温設備などの表面を保冷材で被覆する工事です。保冷材で被覆すると対象設備への侵入熱量が小さくなるとともに、表面の結露発生を防ぐ効果があります。保冷材に使われる素材はポリスチレンフォーム・ウレタンフォーム・独立気泡ゴムなどです。
●耐火工事
耐火工事は、窯業・冶金といった高熱を使用する施設や、ビルや商業施設の排煙ダクト・排気ダクトに耐火被覆材を施す工事です。設備の保護熱効率性を高めたり、火災時にダクトからの延焼を防止したりすることを目的としています。耐火被覆材の素材はモルタルやロックウールが一般的です。
●耐火断熱工事
耐火断熱工事は、配管や機器などを断熱材で包む工事です。高温になる設備を断熱材で包むことで、周囲の温度上昇を抑えたり、接触時のやけどを防止したりできます。耐火断熱工事で使われる断熱材はグラスウールやロックウールなどです。
●板金工事
板金工事は、熱絶縁を施した配管などの設備に板金処理を行う工事です。保温・保冷性能の維持や耐久性向上を目的として行います。板金処理にはカラー鉄板・ガルバリウム鋼板・アルミニウム板などが使われます。
●防音工事
防音工事は、排水管やコンプレッサーなどが発する音の低減を目的として行われる工事です。グラスウール・ロックウール・遮音シートなどで設備を包むことで、高い防音効果を得られます。
熱絶縁工事会社が一定以上の規模を超えて熱絶縁工事業を行う際は、建設業許可(熱絶縁工事業許可)が必要です。
熱絶縁工事業許可とは、建設業法で定められている29種類の業種区分の1つ「熱絶縁工事」を行うときに取得が求められる許認可です。熱絶縁工事1件の請負代金が500万円以上になる場合は、熱絶縁工事業許可を取得しなければなりません。
なお、熱絶縁工事1件の請負代金が500万円未満の場合は軽微な熱絶縁工事とみなされ、熱絶縁工事業許可の取得は不要となります。
また、熱絶縁工事会社の運営にあたっては、熱絶縁工事業許可のほかに「熱絶縁施工技能士」をはじめとした資格の保有者が必要です。熱絶縁施工技能士は、熱絶縁工事にかかわる国家資格です。各都道府県の職業開発能力協会が開催する技能検定(熱絶縁施工)に合格すると取得できます。
大規模な施工現場では熱絶縁施工技能士の設置が義務付けられる可能性があるため、熱絶縁工事会社は熱絶縁施工技能士の確保が重要です。
熱絶縁工事の種類によっては求められる資格が異なるケースも少なくありません。熱絶縁工事会社は自社が施工する熱絶縁工事の範囲を把握し、範囲に応じた資格保有者を確保する必要があるでしょう。

熱絶縁工事は社会情勢やテクノロジーの進歩との関わりが深く、熱絶縁工事業界の市場動向は複雑な要素に影響を受けています。熱絶縁工事業界に関わる方は、業界を取り巻く市場動向をチェックしておきましょう。
ここからは、熱絶縁工事業界の市場動向を3つのポイントに分けて解説します。
熱絶縁工事は、主にビル・工場・商業施設などで施工される工事です。現代は大型施設の建設需要が増していることにより、熱絶縁工事業界の需要は増加傾向にあります。
既存施設の老朽化に伴う改修やリノベーションの件数が増加している点も、熱絶縁工事業界の需要増加につながる要因です。改修やリノベーションでは設備のより効果的な保温・保冷や、断熱性能・防音性能の向上を目指す工事が多く、熱絶縁工事は多くの工事現場で求められています。
また、太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギー施設にも熱断熱工事は必要です。熱断熱工事はさまざまな施設・設備で需要があり、熱断熱工事業界の需要は将来的にも安定していると考えられます。
熱絶縁工事会社では生産性向上を図るために、テクノロジーの導入が進んでいます。
具体的なテクノロジーの例を2つ紹介します。
(1)ロボットの導入
熱絶縁材料の生産や現場での工事などに産業ロボット・工事ロボットを導入する動きが見られており、技術開発が進められています。
(2)IT導入による施工管理の効率化
遠隔操作での施工管理や施工データのデジタル化により、管理担当者が現場と本社を行き来せずに業務を遂行できます。
建設業界全体では人手不足が大きな課題とされていますが、熱絶縁工事業界はテクノロジー化による生産性向上の動きが活発で、人手不足解消が期待しやすい環境となっています。
熱絶縁工事業界は、持続可能な社会の実現に向けた役割が求められていることも特徴です。
熱絶縁工事を施した施設・設備はエネルギーを効率よく利用でき、省エネルギーを実現できます。施設が環境に与える負荷を軽減することで地球温暖化対策に貢献できる点が、熱絶縁工事業界が持続可能な社会の実現において注目されている理由でしょう。
熱絶縁工事会社が保有する技術やノウハウを高めると、社会において果たせる役割も広がります。熱絶縁工事業界は社会的なニーズの高まりによって将来性が期待できるなど、大きな魅力がある業界です。

熱絶縁工事業界の市場動向は明るいと言えるものの、一方で業界はいくつかの課題も抱えています。熱絶縁工事業界のM&Aを検討する方は、業界の課題を把握しておくことも重要です。
以下では、熱絶縁工事業界が抱える課題を3つ挙げ、それぞれが熱絶縁工事会社にどのような影響を与えるかを解説します。
熱絶縁工事業界を含む建設業界では、元請け会社から工事を請け負う下請け会社がいくつも存在する「多重下請け構造」が常態化しています。
多重下請け構造では上位の会社が利益を確保してから下請け依頼を出すため、下位の会社になるほど利益率が低くなります。中小の熱絶縁工事会社は低い利益率で会社経営をしなければならず、従業員の給料も低く抑えることになるでしょう。
多重下請け構造が常態化している業界で熱絶縁工事会社が利益を上げるには、構造内においてできる限り上位の会社に位置する必要があります。
後継者不足や人手不足が慢性化していることも、熱絶縁工事業界を含む建設業界全体の課題です。
熱絶縁工事業界は中小規模の会社が中心であり、多くの会社が後継者不足の課題を抱えています。経営者の高齢化も進んでいて、後継者の育成が難しい会社は少なくありません。
もう1つの人材不足は、熱絶縁工事会社の業務は肉体労働が多く、多重下請け構造によって給料が低いというイメージが関係しています。
熱絶縁工事会社が後継者・人材不足の課題に対処するには、後継者を確保するとともに、人材にとって魅力的な就業環境を用意する必要があるでしょう。
熱絶縁工事業界は需要が増加傾向にあり、社会的に求められる役割も大きくなっていて、成長性が高い業界です。そのため、成長性が高い市場シェアを獲得するための市場競争が激化しています。
市場競争の激化は、M&Aを検討する熱絶縁工事会社にとってチャンスでもあります。優れたノウハウや高い技術力を有する熱絶縁工事会社は市場において高い価値があり、M&Aで有利な条件で交渉を進められる可能性があるでしょう。
近年の建設業界は様々な技術革新があり、熱絶縁工事業界も多くの影響を受けています。
例えばデジタル技術で作成した3Dモデルを設計・施工に活用するBIMや、IoT技術を導入した遠隔での施工管理などが挙げられます。
また、地球温暖化・環境変動対策への関心の高まりにより、ZEHやGX志向型住宅、省エネ建築物の需要が増加しています。
熱絶縁工事会社が事業成長を遂げるには、上記の技術革新や多様化に対応できる体制が必要です。

M&Aとは、2社以上の会社が合併や事業・会社の売買を行うことです。 M&Aを行うと経営基盤の強化や他社との連携ができるため、熱絶縁工事業界のさまざまな課題を解決に導く手段として注目を集めています。
そこで次に、熱絶縁工事業界のM&A動向を2つのパターンに分けて解説します。
熱絶縁工事業界では、大手建設事業者による中小の熱絶縁工事会社を買収するケースが目立っています。
大手建設事業者によるM&Aの目的は、成長が見込まれる熱絶縁工事業界における事業規模の拡大です。従来の建設工事に加えて、需要が高い熱絶縁工事も自社施工することで、収益源の増加を目指しています。
中小の熱絶縁工事会社にとっても、大手建設事業者とのM&Aは多重下請け構造の解消や、後継者・人材不足の課題解決につながるメリットがあります。
熱絶縁工事業界のM&Aは、中小規模の熱絶縁工事会社同士での合併・買収も多く見られます。
中小規模事業者同士でM&Aを行う主な目的は、経営基盤の強化です。2社が提携することで資金力や設備・人材などの事業リソースを確保できて、最新技術導入などの投資も進められます。
両社が持つノウハウの共有や、取引先との関係性強化といったシナジー効果を創出できる点も中小規模事業者同士のM&Aの魅力です。専門性が高い熱絶縁工事会社同士が協力すれば、資金力の大きな事業者にも対抗しやすくなるでしょう。

M&Aを検討する際は、譲渡(売り手)側と譲受(買い手)側というそれぞれの立場でのメリットの違いを押さえましょう。
譲渡側は事業や会社を売却する側であり、会社の存続が難しくなった状況をM&Aで解決することが期待できます。
ここからは、熱絶縁工事業界のM&Aによる譲渡側のメリットを3つ紹介します。
熱絶縁工事会社が後継者問題を抱えている場合、M&Aで会社を売却することで後継者問題を解決できます。外部の経営者に自社の熱絶縁工事業を任せられるため、会社を存続させることができる点がメリットです。
後継者が見つからないと経営者のリタイアに伴って会社を廃業せざるを得ず、従業員を解雇しなければなりません。M&Aで会社を売却すれば従業員は譲受側の企業でそのまま働けるため、従業員の雇用を守れます。
M&Aで会社を売却した譲渡側の経営者は、売却の対価として売却益(譲渡益)を獲得できます。売却益は会社の経営者が自由に使える資金となり、借入金の返済やリタイア後の生活資金、新規事業の準備金などに活用可能です。
会社を廃業した場合は売却益のような大きな対価を得ることはできず、反対に事務所・設備の処分費用や従業員への退職金支払いなどが発生します。経営が苦しい経営者は、廃業よりもM&Aでの売却を選んだ方が多くのメリットを得られるでしょう。
M&Aを選択した譲渡側の経営者は、個人保証から解放されます。
個人保証とは、金融機関から融資を受けるときに経営者本人が連帯保証人になることです。中小企業は融資の際に個人保証を設定するケースが多く、会社が経営難になったときに経営者の心理的・経済的負担に繋がるおそれがあります。
M&Aで会社の債務を譲受側に引き継いでもらうことが出来れば、譲渡側の経営者は個人保証から解放されます。債務の発生に悩む必要がなくなり、心機一転して新しい生活やチャレンジをできる点がメリットです。

M&Aの譲受側は、譲渡側から事業や会社を取得する側です。熱絶縁工事業界のM&Aでは、譲受側は基本的に人材確保や事業規模の確保などを目指すことになります。
熱絶縁工事業界のM&Aで譲受側となるときは、下記の3つのメリットが得られるかどうかを確認しましょう。
譲受側は事業や会社を取得すると同時に、譲渡側が雇用していた人材を確保できるメリットがあります。
熱絶縁工事業は専門的な知識・技術が必要な業種であり、新規参入や事業規模の拡大を実現するには優秀な人材が必要です。人材を確保する手段には求人募集や教育といった方法もあるものの、M&Aを行えば求人・教育に大きなコストをかけずに優秀な人材を確保できます。
譲受側は人材・設備・ノウハウなどの資産を取得できるため、熱絶縁工事業界において事業規模やシェアの拡大を狙えます。譲渡側の強みを自社に取り込むと業界内での存在感を増すことができ、競争が激化している業界内で生き残りやすくなります。
熱絶縁工事業界への新規参入を考えている企業にとっても、最初からシェアの確保に乗り出せる点は大きなメリットとなるでしょう。新規事業にかけるコストを抑えつつ、譲渡側の資産を活用して市場でのシェアを伸ばせます。
M&Aによって譲渡側の顧客情報や取引先情報といった無形資産を譲受側が承継できれば、安定した案件の確保につながります。
熱絶縁工事は施主や元請けからの請け負いによって成り立っているため、売上を伸ばすには熱絶縁工事の受注案件を増やすことが欠かせません。M&Aで顧客情報や取引先情報を承継すると、顧客・取引先との関係も引き継げるため、案件確保数を安定させられます。

最後に、熱絶縁工事業界のM&Aを成功させる2つのポイントを紹介します。
POINT(1)明確なM&A戦略をしっかり立てておく
M&Aを成功させるには、M&A戦略の立案が欠かせません。「M&Aでどのような成果を得たいか」「M&Aをいつまでに、いくらで・どのように行いたいか」といった要点を整理して、具体的なM&A戦略を立てましょう。
POINT(2)信頼できるM&Aアドバイザーに相談する
M&Aを進める際は相手企業との交渉や契約締結が発生し、選択するM&Aスキームや交渉条件によっては手続きが複雑化します。M&Aをスムーズに進めるためにも、信頼できるM&Aアドバイザーに相談することがおすすめです。
熱絶縁工事業界には、多重下請け構造による利益率の減少や後継者・人手不足の問題などがあり、課題解決のためのM&Aが活発化しています。
熱絶縁工事業界のM&Aを進める際は、紹介したM&A動向や立場別のメリットを参考に、自社の目的達成ができるM&A先を探しましょう。
株式会社レコフは創業1987年の老舗M&A助言会社であり、約2万社の顧客基盤を保持しております。熱絶縁工事業界のM&Aを検討している方は、株式会社レコフにご相談ください。
監修者プロフィール

株式会社レコフ リサーチ部 部長
澤田 英之(さわだ ひでゆき)
金融機関系研究所等で調査業務に従事後、政府系金融機関の融資担当を経て2005年レコフ入社。各業界におけるM&A動向の調査やこれに基づくレポート執筆などを担当。平成19年度農林水産省補助事業、食品企業財務動向調査委員、平成19年度内閣府経済社会総合研究所M&A究会 小研究会委員。著書・論文は「食品企業 飛躍の鍵 -グローバル化への挑戦-」(共著、株式会社ぎょうせい、2012年)、「データから見るIN-OUTの動向 -M&Aを通じた企業のグローバル化対応-」(証券アナリストジャーナル 2013年4月号、公益社団法人 日本証券アナリスト協会)など。
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