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成長戦略とは

M&A初級編

2022.09.01更新日:2022.09.01

事業の地盤を固めたり、より大きな成長を目指したりする際に重要なのが「成長戦略」です。ビジネスのみならず、政治においても成長戦略という言葉が使用されるケースは少なくありません。何かと耳にする機会が多い分「何となく聞いたことがある」という方も多いのではないでしょうか。ここでは、ビジネスにおける成長戦略の本質や、有効な成長戦略の立て方などを紹介します。

目次

成長戦略の種類

成長戦略は、文字通り「事業の成長を目的として練る戦略」のことです。ビジネスの世界においては、現状維持は退化や衰退と同義であるため、大きく成長し続けることを前提に成長戦略を練る必要があります。例としては、サービスや商品の開発、市場開拓などが成長戦略としてあげられます。

  • 事業を成長させるために何を開発するのか。
  • 開発したものをどのように販売するのか。
  • 既存の商品やサービスを新しい市場で販売できないか。
  • 同業他社やライバル企業と提携はできないか。

よりわかりやすく言えば、上記のような戦略を立てるのが「ビジネスにおける成長戦略」と言えるでしょう。成長戦略は、新規市場と既存市場のどちらか、もしくは両方を主軸に練っていくことが一般的です。自社の強みを活かして戦うのか、時代の流れやトレンドを掴んで戦うのかは、主軸によって変わってきます。以下では、新規市場と既存市場を主軸にした成長戦略のパターンを紹介します。

成長戦略の種類製品の軸
既存製品新製品
市場の軸既存市場 市場浸透 市場開拓
新市場 新商品開発 多角化

図のように製品と市場によって示した成長戦略のことを、経営学においては「アンゾフの成長マトリクス」と言います。企業の成長戦略を立てる際に加え、新しい事業やビジネス展開を考える時にも大きなヒントとなるでしょう。

市場浸透

市場浸透は、既存の市場や顧客に対して「既存の製品でアプローチする成長戦略」のことです。顧客一人あたりの購入費用や購買数を増やしたり、リピート率を高めたりすることを目指します。体制や市場がある程度整っているためビジネスを展開しやすく、起業する際のリスクを抑えられるのが魅力です。各種割引による価格設定の見直し、アフターフォローの充実化などの戦略が「市場浸透」に当てはまります。

市場開拓

市場開拓とは、既存の商品を新市場や新顧客に向けてアプローチする成長戦略を指します。地元から全国、国内から海外など展開するエリアの規模を拡大したり、アプローチ対象を広げたりするのが具体的な戦略内容です。良い市場や顧客を見つけるためには、専門的な分析や調査が不可欠。当然ながら、既存市場へのアプローチよりも作業量が増え、コストは高くなります。

新商品開発

名前の通り、新商品を開発して既存の市場や顧客へアプローチする成長戦略です。バージョンアップ商品の提供や、関連商品の売り込みなどが挙げられます。新規市場開拓のコストはかかりませんが、人材育成や設備確保などにコストがかかるのが特徴です。

多角化戦略

多角化戦略は、全く新しい市場や製品分野へ進出し、商品やサービスを展開します。ゼロからの事業進出となるため、市場調査や人材育成も一からスタートさせる必要があり、多大なコストがかかります。その反面、事業が多角化しているのであれば収益面でのリスクが分散されるのが特徴です。新規事業の収益があれば、会社全体の経営が大きく傾くことを避けられます。

企業が成長するまでの流れとは

企業が成長するまでの流れは、「創業期」に始まり「成長・安定期」、「成熟期」、「衰退期」という4つの過程で構成されます。下記で、各過程の特徴を簡単に紹介します。企業の成長戦略を練る際は、「自社は現在どの成長フェーズにいるのか?」を知ることが大切です。

創業期

成長フェーズの中でも、「起業したての段階」に該当するのが創業期です。創業したばかりの時期では、地盤が固まっておらず事業が確立していないこともあります。いかにスピーディーに地盤を固められるかは、経営者層の手腕にかかっています。ちなみに、創業期のことを「幼年期」と呼ぶケースもありますが、成長フェーズにおける意味合いとしては同義です。

成長・安定期

事業に対して顧客やリピーターが生まれ、収益が安定してくる時期が企業にとっての成長期です。さらなる企業成長のため、人材確保や人材育成などを進める必要があります。企業の規模が大きくなる分、部署やチームなどを取りまとめる管理者の存在が不可欠です。

成熟期

事業拡大や人材確保というフェーズを経た企業は、成熟期へ突入します。事業の成長がひと段落するため、組織体制を全体的に見直し、「今後さらに成長するためにはどうすればいいのか?」と考えるフェーズです。このフェーズに合った成長戦略を考えていないと、衰退期への突入が速くなります。

成熟期の成長戦略でとくに重要なのが、経営者が企業の経営状況をリアルタイムで追うことです。成熟期は利益が安定している時期だからこそ、「次は何に投資すべきか?」を慎重に考える必要があります。その判断は、リアルタイムの経営状況を正確に把握しておかねば下せません。

衰退期

衰退期は、収益が低迷してくる時期です。このフェーズでは事業撤退や体制の改革など、大きな選択を迫られることになります。事業の撤退は、「現在の事業に投資価値があるか?」という点を早急に見極めることが大切です。衰退期を経て、新規事業の立ち上げなどが行われた後は、また創業期に戻ります。このサイクルを総じて「成長フェーズ」と呼ぶのです。

ちなみに、低迷している事業であっても、改革を起こせば収益を回復できる可能性があります。企業によっては、「M&A」を検討するところもあるでしょう。M&Aとは、企業同士の合併や事業の買収などを指します。M&Aを事業継承の手法としても活用されているのが特徴です。衰退期の企業が同業他社へ事業を譲渡し、事業継続を図るケースは少なくありません。

成長戦略・経営戦略の考え方とは?

成長戦略を練る際は、先に挙げた成長フェーズに加えて経営ビジョンと経営目標、経営課題をしっかり把握しておくことが大切です。これらの認識が曖昧なままだと、成長戦略の目的そのものがぼやけてしまいます。

経営ビジョン

経営ビジョンとは、企業の目指す理想像を言語化したものです。経営ビジョンをもとに「業界でどのような立ち位置を築きたいのか」、「事業を今後どのように展開していきたいのか」といった点を見直していきます。一言で経営ビジョンといっても、業界をリードする第一人者企業になりたいのか、労働生産性に秀でた企業になりたいのかでは練るべき戦略が大きく異なります。さらに健全な労働環境を作るためにも、理想とする社員と会社の関係性を明確にすることも大切です。

経営目標

経営ビジョンで企業が目指すべき場所を見直したら、具体的な経営目標を決めます。ビジョンの到達に向けて、数ヶ月・数年単位でどのような動きをするのかアクションプランを立てましょう。具体的な数値や達成期間など、可視化できるデータを使って明確に定める必要があります。

業績目標

業績数値を用いて、企業の将来像を見据えた時の目標が業績目標です。日常業務で達成すべき数値をはじめ、長期的な資本利益率や労働生産性、一人あたりの人件費などを考慮して算出する必要があります。

経営課題

経営課題とは、現状と経営目標の間にあるギャップです。自社の強みや弱み、経営環境などから経営実態を洗い出したうえで、経営目標とのギャップがどこにあるのかを考えます。それぞれの課題を調査したうえで、優先順位をつけて解決に当たる必要があるのです。

経営戦略

経営戦略は経営課題の解決方法、および企業を成長させるための計画です。自社の強みや弱み、経営環境などを考慮して練っていきます。このとき、とくに重要なのが「事業領域」を検討すること。事業領域とは、その名の通り事業を行なうフィールドのことです。事業領域は市場や事業のジャンル、サービスや商品などの経営資源によって決まります。どこの市場でどんな商品を提供するのか、適切な市場で勝負できているのか、などを考えることで経営戦略が練りやすくなります。

大手企業の成長戦略について

M&Aは、中小企業だけでなく大企業の成長戦略の一助になります。たとえば事業の買い手の場合、新規事業へ参入・市場開拓のコストカットをカットできるのが魅力。コストを抑えつつ、新規顧客の獲得や新分野の開拓を実現できるうえ、既存事業の成長を促す効果も期待できます。また、自社が不得手とする分野を補完できる企業とM&A契約を結ぶことで、自社の弱点補強にも繋がります。

M&Aによって、業界再編が進むのも大きな特徴です。とくに需要がピークに達した大企業同士の場合、苛烈な顧客争奪戦が起こります。それによって両者が消耗すると、経済に大きな影響が及ぶことは間違いありません。M&Aによって競合同士が合併すると、結果的に極端な顧客争奪戦が起こりにくくなり、経済への悪影響を抑えられます。加えて、成熟期に達した企業が新たな市場を開拓する際の一助にもなるのです。

中小企業の成長戦略について

中小企業の成長戦略では、事業継承・後継者不足が大きな課題に。いくら生産性が高い中小企業であっても、後継者不足が原因で廃業してしまえば経済に大きなダメージが及びます。時には、長く働いていた社員や高いスキルを持った社員を解雇することもあり、会社にとっても従業員にとっても歓迎できない結末です。

そんな中小企業の成長戦略として注目されているのが、M&Aです。企業の吸収合併という印象の強いM&Aですが、M&Aによる株式譲渡や事業譲渡を活用すれば、後継者不足を解消にも繋がります。M&Aには、売り手と買い手両者にメリットがあるのが特徴です。売り手にとっては、後継者不足を解消できるだけでなく、従業員雇用の保護や事業の発展に繋がるのが大きな魅力です。買い手側としてはある程度の事業ノウハウがある会社を買い取れるため、生産性の向上が図れる利点があります。加えて、競争力の強化や人材育成のコストカットなどに繋がるのもポイントです。

令和の現代では、中小企業のM&Aを支援すべく、税優遇や補助金などの措置も検討されています。たとえば、事業譲渡後の給与増加をサポートするため、給与総額の増加分のうち一部を法人税から差し引く方針が検討されているのです。これらの措置が実現すればM&Aがさらに広まり、金融市場も大きなビジネスチャンスが生まれることが予想されます。

自社のフェーズや事業に合った成長戦略を選ぶことが大切

一言で成長戦略といっても、自社が置かれている成長フェーズによって取るべき戦略は変わってきます。とくに成熟期や衰退期に入っている企業は、新規事業への参入やM&Aによる事業継承などを念頭に成長戦略を立てる必要があるのです。

企業が中期的な目標を達成するには、内部成長に加え外部成長が必要になる場合があります。企業が外部成長を遂げるための戦略的行動として、M&Aは、現在ではごく一般的な経営手法となっております。コア事業の強化、事業の多角化など活用場面は様々です。

レコフは、顧客企業の経営課題を理解し、成長戦略としてのM&Aをサポートいたします。

監修者プロフィール

株式会社レコフ リサーチ部 部長

澤田 英之(さわだ ひでゆき)

金融機関系研究所等で調査業務に従事後、政府系金融機関の融資担当を経て2005年レコフ入社。各業界におけるM&A動向の調査やこれに基づくレポート執筆などを担当。平成19年度農林水産省補助事業、食品企業財務動向調査委員、平成19年度内閣府経済社会総合研究所M&A究会 小研究会委員。著書・論文は「食品企業 飛躍の鍵 -グローバル化への挑戦-」(共著、株式会社ぎょうせい、2012年)、「データから見るIN-OUTの動向 -M&Aを通じた企業のグローバル化対応-」(証券アナリストジャーナル 2013年4月号、公益社団法人 日本証券アナリスト協会)など。

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