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M&Aの重要項目「デューデリジェンス」とは

M&A初級編

2024.05.28更新日:2024.05.28

M&Aを実施するうえで、重要な役割を担うのが「デューデリジェンス」です。買収する企業の経営状態や財務状況を詳しく調査し、最終的にM&Aを実施するか否かを判断する材料となります。まさに、M&Aの成功のカギを握っているといっても言い過ぎではありません。

この記事では、

  • デューデリジェンスとは
  • デューデリジェンスの目的
  • デューデリジェンスの種類
  • デューデリジェンスの流れ

などについて解説いたします。この記事を読めば、デューデリジェンスはなぜM&Aにおいて重要なのか、どのようにして企業調査が実施されるのか、などデューデリジェンスの全体像が理解できます。買い手側にとっては、自社のM&A成功に向けて「なすべきこと」が分かり、売り手側にとっては、どのような調査が行われるのが分かり「準備すべきこと」が見えてきます。双方にとって、デューデリジェンスは重要な役割を果たしますので、将来的にM&Aの導入を検討している経営者の方は、ぜひご一読ください。

目次

デューデリジェンスとは

デューデリジェンスとは企業の収益性や将来性、抱えるリスクを調査するプロセスのことです。Due Diligenceという単語は、「当然行われるべき注意や努力」と直訳されます。「企業として当たり前の努力が行われているか」という点を調査する工程だと考えると良いでしょう。 より具体的には、M&Aにおける買い手企業が売り手企業の経営環境や法務状況、コンプライアンスを調査して企業価値を判定する調査を指します。「DD」と略されたり、「買収監査」と呼ばれたりすることもあります。買い手企業にとっては相手の価値を正しく測る手段であり、売り手企業にとっては取引の成否を左右する重要な調査です。

デューデリジェンスの目的

デューデリジェンスを行う目的は様々です。特に大きな目的としては、「企業価値の判定」、「M&A方法の検討・変更」等が挙げられます。くわえて、「リスク分散」や「統合に向けた情報収集」、「投資効果の判定」なども、デューデリジェンスが担う大きな役割です。

企業価値の判定

売り手企業の経営状態や将来性、リスクの有無などを客観的に算定するのが主な目的です。そのためデューデリジェンスには人事デューデリジェンスや法務デューデリジェンス、財務デューデリジェンスなど多岐に渡る調査項目があります。各種の項目に沿って調査が行われ、売り手企業の総合的な価値が決まるのです。

M&A方法の検討・変更

M&Aには複数の種類や方法があります。株式を譲渡する「株式譲渡」や、事業の全てもしくは一部を譲渡する「事業譲渡」等です。デューデリジェンスを行った結果、最初に予定していたM&A方法が変更になる可能性もあります。当初の予定が事業譲渡によるM&Aであったとしても、デューデリジェンスの結果、リスクが見つかり株式譲渡によるM&Aへ変更されるケースも考えられるのです。

リスクの分散

デューデリジェンスは、売り手企業が抱えるリスクやその対策方法を洗い出すために必要な調査です。ここでいうリスクとは簿外債務や訴訟リスク、法務面でのコンプライアンス問題などが該当します。なかには、当の売り手企業が気づきにくい細かなリスク・障害が埋もれているケースもあります。M&Aは、会社を売買する大きなやり取り。成約後の障害や混乱を最小限に抑えるためにも、デューデリジェンスによるリスクの洗い出しは重要な工程です。

統合に向けた情報収集

M&Aは、異なる社風を持つ企業同士が1つになるものです。成約後の統合作業(PMI:Post Merger Integration)が完了して初めて、M&Aは成功だといえます。デューデリジェンスによって情報収集を行うことでスムーズにPMIが進み、統合後のシナジー効果が期待できます。逆にデューデリジェンスが不十分だとPMIに必要な情報が不足してしまい、現場が混乱してしまうことも考えられます。

投資効果の判定

買収した結果得られるリターンや、期待できる投資効果を把握するのもデューデリジェンスの目的です。既存事業との間で得られるシナジー効果や、事業拡大による収益などがそれぞれ予測されます。デューデリジェンスの結果、投資効果やリターン効果が大きいと判定されれば取引がスムーズに進みます。

デューデリジェンスの種類

デューデリジェンスと一言でいっても、沢山の種類があります。以下では「技術デューデリジェンス」や「人事デューデリジェンス」など、特に重要なデューデリジェンスの種類をピックアップしました。

技術デューデリジェンス

技術デューデリジェンスとは、売り手企業が持つ技術を調査する項目です。売り手企業にどのような技術があって商品やサービスを開発し、提供しているのかを調査します。

M&Aでは、「他社の技術やノウハウを取り入れてさらに事業を拡大させたい」と考える企業が少なくありません。そのような買い手企業にとって、デューデリジェンスは特に重要な調査項目なのです。技術の具体的な内容を把握すると同時に、その技術が持つ市場への影響力も調査されます。

人事デューデリジェンス

M&A成約後の統合作業(PMI)に向けた調査を行う項目です。人件費や従業員数のほか、マネジメントや人事制度の実態も調査されます。人事デューデリジェンスで得られた情報は、統合後の人事制度や労働条件、雇用形態の統合時に役立てられるのがポイントです。PMIを滞りなく進めるだけでなく、従業員のモチベーション低下や対立を防止する役割もあります。統合時の混乱を最小限に抑えるためにも、欠かせない調査項目なのです。

財務デューデリジェンス

売り手企業の資産や、財務取引の内容を調査する項目です。具体的には株式や土地の所有状況、各種賞与の条件、債権の有無などが調査されます。調査結果をもとに、経理処理の公平性や将来的な収益性が割り出されるのもポイントです。調査には、キャッシュフロー計算書をはじめとした複数の財務諸表が使用されます。

法務デューデリジェンス

売り手企業が持つ法的リスクや事業に対する権利、債権債務の状況を調査する工程です。特に重要なのが、法的リスクの調査。「重大なリスクが発生しないか」、「新しく手続きが必要にならないか」といった点を見落とすのは大きな痛手になります。そうなると、法的な罰則を受けたり、社会的イメージが失墜したりすることにつながりかねません。法務デューデリジェンスによって法的リスクを洗い出し、対策を練ってはじめて取引が前進します。

事業デューデリジェンス

事業デューデリジェンスとは、売り手企業が属する市場を踏まえたうえで企業価値を判定します。売り手企業は、市場においてどのような立ち位置にあり、どのような影響力を持っているのかといった点を調査していきます。それらを踏まえたうえで、期待できるシナジー効果も調査します。売り手企業内の経営状態を評価する「内部環境分析」と、市場動向と売り手企業の価値を照らし合わせる「外部環境分析」という2つの方法で調査されるのが特徴です。

税務デューデリジェンス

税務デューデリジェンスでは、売り手企業の税務リスクを調査します。税務の申告漏れや納税処理に関わる不備があると、M&A成約後に買い手企業がそれらを支払うことになり、損失が生じてしまうからです。ケースによっては買い手企業にペナルティが課せられることもあり、そうなれば社会的イメージも損なわれてしまいます。こうした損失を最小限に抑えるために、予め税務リスクを洗い出して対策を講じることが大切なのです。

ITデューデリジェンス

売り手企業が導入しているITシステムと、その操作方法を調査する項目です。この調査を行うことで、既存システムとの兼ね合いや、システム統合にかかるコストを把握できます。特に、勤怠管理や顧客管理などを行う「業務システム」はなくてはならないものです。システム統合の混乱を最小限に抑えるために不可欠な調査項目なのです。

不動産デューデリジェンス

売り手企業の所持する不動産を調査する工程です。「不動産鑑定業務」とも呼ばれます。物件の価値や権利関係の有無が明らかにでき、買い手企業にとっては交渉のチャンスでもあります。ただし、不動産は地価によって価値が大きく変動する資産。より適正な鑑定結果を出すためには、不動産鑑定士など専門知識を持った人による評価が不可欠です。

顧客デューデリジェンス

既存・新規顧客の本人確認を実施し、マネーロンダリングなど不正行為の有無を調査します。調査の性質上、他の項目に比べると行われる機会はさほど多くありません。

デューデリジェンスの流れ

デューデリジェンスは、大まかに「方針決定」「各種調査の開始」「現地調査」「報告書提出・結果分析」「最終報告」の5つのステップで進みます。以下で、各ステップの概要をまとめました。

ステップ①:方針決定

売り手企業について、「どのような調査をするのか」、「デューデリジェンスの対象となる分野はどれにするか」を協議します。事前に調査の方向性やデューデリジェンスの対象範囲を決めておけば、スムーズに調査へ臨めます。

ステップ②:各種調査の開始

実際のデューデリジェンスがスタートします。売り手企業から必要書類を開示してもらい、それらを確認することで調査が進むのがポイントです。ただし、デューデリジェンスは財務や法務などさまざまな専門知識が求められる工程です。司法書士や弁護士、税理士といった専門家の知識を借りないと、調査がスムーズに進まないうえに重要なリスクを見落とすことにもつながります。M&Aを成功させるためにも、デューデリジェンスには十分な費用と時間をかけることが大切です。

売り手企業の業種や規模によっては、要請した資料に相当するものがない可能性もあります。その場合は専門家へ相談しながら、提出された資料をもとに柔軟な調査をすることが大切です。

デューデリジェンスにおける情報開示の請求は慎重に行う必要があります。資料のなかには、売り手企業が第三者との間に秘密保持契約を結んでいたり、個人情報保護法の下で保護されていたりする資料もあるためです。

これらの資料は、秘密保持契約書や個人情報保護法に対する理解を深めたうえで扱うことが求められます。取引の途中で情報漏洩が発生すれば、売り手企業・買い手企業双方の信用問題に発展してしまいます。

ステップ③:現地調査

各種資料による調査だけでなく、現地調査も実施します。現地調査では売り手企業の本社や拠点を訪問し、会議室などで資料の確認をしたり責任者へインタビュー調査を行ったりするのが一般的です。大企業の場合、数十人単位のデューデリジェンスの専門家が現地入りして1~2週間調査を実施するケースもあります。中小企業M&Aの場合、専門家の数や調査期間はこれよりも短くなると考えて良いでしょう。

現地調査は専門家へ任せきりにせず、出来る限り案件全体の責任者・担当者が同行することが望ましいといえます。特にインタビュー調査は、売り手企業に対しての理解をさらに深める機会です。現地調査の専門家は法的・財務的な専門知識の面では頼れる存在ですが、売り手企業の事業や業界の動向、社風などにまで精通しているとは限りません。そのような知識のギャップを埋めるためにも、現地調査にはできるだけ同行することが大切です。

ステップ④:報告書提出・結果分析

資料調査や現地調査が完了すると、デューデリジェンスの専門家による報告書が買い手企業へ提出されます。提出された報告書の結果から、専門家を交えてリスクやシナジー効果を検証していきます。デューデリジェンスの調査項目は多岐にわたるため、報告書の量が膨れ上がる可能性もあります。場合によっては追加の資料開示を要請するケースもあるため、分析の段階になって慌てないように情報管理の体制を前もって作成しておきましょう。

ステップ⑤:最終報告

分析結果がレポートとしてまとめられ、M&Aの妥当性や方向性が議論される局面です。その議論をもとに、基本合意書に提示されている取引価格や交渉条件の見直しを行い、最終契約書を作成していきます。最終契約書は、基本合意書と異なり法的効力を持っています。最終契約書による契約は一方的に破棄することは不可能ですので、修正内容は慎重に協議する必要があります。

日本のM&Aの草分け的存在レコフ

売り手企業・買い手企業だけで
M&Aを進めるのは難しいものです。
通常の業務と並行して複雑な手続きを進めたり、
専門的な知識が必要な分野と向き合ったりしなければなりません。
効率よくM&Aを進めるためには、M&Aアドバイザーのサポートが必須です。

株式会社レコフは、日本のM&A業界の草分け的存在として活躍してきました。
創業は1987年で、36年以上のM&A支援実績を誇ります。
中小企業同士のM&A支援はもちろん、
大企業・上場企業同士の大型M&A支援の経験があるのも強みです。
幅広い規模やジャンルの案件に対応しております。
20,000社以上の企業と接触し、
企業との独自のネットワークを構築しているのも強みです。
企業とのネットワークを活用して、
M&Aを行う候補企業の選定やご提案をいたします。

また、業種研究や業界研究を欠かさず実施。
業界の最新動向や再編動向を調査し続け、
業界・業種に精通した担当社員を育成しています。
こうした知識を蓄積することで、大型案件から事業承継、
業界再編などさまざまなジャンルに対応できる体制を構築しているのです。
M&A専門会社をお探しの方は、ぜひ一度レコフへご相談ください。

詳しくはこちらのレコフの強みでご覧いただけます。

監修者プロフィール

株式会社レコフ リサーチ部 部長

澤田 英之(さわだ ひでゆき)

金融機関系研究所等で調査業務に従事後、政府系金融機関の融資担当を経て2005年レコフ入社。各業界におけるM&A動向の調査やこれに基づくレポート執筆などを担当。平成19年度農林水産省補助事業、食品企業財務動向調査委員、平成19年度内閣府経済社会総合研究所M&A究会 小研究会委員。著書・論文は「食品企業 飛躍の鍵 -グローバル化への挑戦-」(共著、株式会社ぎょうせい、2012年)、「データから見るIN-OUTの動向 -M&Aを通じた企業のグローバル化対応-」(証券アナリストジャーナル 2013年4月号、公益社団法人 日本証券アナリスト協会)など。

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