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業界別M&A
ネイルサロンは美容業界で成長傾向にある業種で、近年は競争激化の傾向も見られます。ネイルサロン事業について売却・譲渡や、買収による拡大などを考えている方もいるのではないでしょうか。
ネイルサロンは零細事業の多さやブランド力の重要性といった特徴が見られます。M&Aを実施する際は、業界ならではのポイントを押さえることが重要です。
ネイルサロンのM&Aを検討している方に向けて、ネイルサロンのM&A動向や立場別でのM&Aメリット、成功させるポイントなどを解説します。
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事業承継・譲渡売却はネイルサロンとは、爪の手入れやジェルアートなどのサービスを提供する店舗・事業のことです。 厚生労働省が公表している「ネイルサロンにおける衛生管理に関する指針について」では、ネイルサロンについて下記の通りに定義しています。
第2 定義
この指針において、「ネイルサロン」とは、爪の手入れ、爪の造形、爪の修理、補強、爪の装飾など爪に係る施術を行う施設をいう。
(引用:厚生労働省「ネイルサロンにおける衛生管理に関する指針について」https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb6459&dataType=1&pageNo=1 )
ネイルサロンで各種サービスを施術する職業は、一般的に「ネイリスト」と呼ばれます。ネイリストは必須資格がないものの、実際の施術では専門的な知識とサービス提供の技術が求められる職業です。
ネイルサロンが提供するサービスの中でも、爪に芸術的なデザインを施すサービスは「ネイルアート」と呼ばれ、若年層の女性を中心に高い人気があります。
ネイルサロンの経営を行う上では、技術力の高いネイリストを雇用し、利用客にとって魅力的なネイルアートを提供することが重要となるでしょう。
日本ネイリスト協会がまとめた「ネイル白書」によると、ネイルサロンを含むネイルサービス市場の規模は、2021年~2023年の3年間で下記の通りに推移しています。なお、2024年は見込、2025年は予測の市場規模です。
予測の市場規模 | |
2021年 | 1,374億円 |
2022年 | 1,444億円 |
2023年 | 1,531億円 |
2024年見込 | 1,617億円 |
2025年予測 | 1,665億円 |
(出典:NPO法人 日本ネイリスト協会「ネイル白書」https://www.nail.or.jp/publish/nail_report.html )
2019年は1,736億5,000万円であったものの、コロナ禍の影響を受けた2020年・2021年は市場規模が大きく減退しました。 しかし、2022年以降はネイルサービス市場の規模は回復しつつあり、回復基調は2025年も継続すると予測されています。
また、ネイルサロン事業は他業種と比べて低コストで開業しやすく、特別な国家資格も必要ないため開業のハードルが低いという特徴があります。 したがって、ネイルサロン業界は個人の零細事業(小規模サロン・自宅サロンなど)が乱立している状況です。特に都市部を狙って出店するケースが多く、エリア内に競合するネイルサロンが複数存在するなど競争が激化しています。
集客力や顧客満足度が、在籍するネイリストの質によって左右される点もネイルサロンの特徴です。ネイルサロンの店舗数に比べて優秀なネイリスト人材の数は不足しており、ネイルサロン経営では優秀なネイリストの確保が課題となっています。
新規参入が目立つネイルサロン業界で生き残るためには、競合との差別化が最も重要です。 提供できるサービスなどに個性・独自性がなければ、「他のネイルサロンとの違いが分からない」「利用し続けることに意味を感じられない」と顧客に思われてしまいます。結果として、より提供価格が安く、立地が良い競合サロンに顧客を奪われてしまうでしょう。
競合との差別化を実現するには、付加価値の提供がカギとなります。オリジナルのネイル用品・セルフケア用品を店内で販売したり、美容系の独自サービスを提供したりなどが、ネイルサロンで提供しやすい付加価値の例です。 しかし、付加価値となるサービスを開発・提供する場合にはコストが発生します。営業利益を伸ばしにくい零細規模の個人ネイルサロンにとって、前述したような付加価値の提供は簡単ではありません。
そのためネイルサロン業界では、ネイルサロン同士や隣接業種(美容院・エステ・まつ毛サロンなど)とのM&Aによる再編の動きも見られるようになってきました。 とは言え、ネイルサロン業界は依然として個人レベルの開業や廃業が中心であり、M&Aはさほど浸透していないことも実情です。数としては、M&Aよりも居抜き物件の売買のほうが活発に行われている傾向にあります。
ネイルサロン業界で居抜き物件の売買ではなくM&Aを実施する場合、どのようなメリットがあるか気になる方も多いでしょう。
M&Aには事業を譲渡する譲渡側と、事業を譲受する譲受側の2つの立場があります。立場によってM&Aによるメリットは異なるため、自分の立場で得られるメリットを知っておくことが大切です。
そこでまずは、ネイルサロンのM&Aによる譲渡(売り手)側のメリットを4つ紹介します。
M&A先が美容関係の大手グループ店である場合、大手グループ店の傘下に入ることができます。大手グループ店が持っている潤沢な資金力やブランド力を活用して、経営の安定化を期待できるでしょう。 また、大手グループ店が広告・テレビCMなどの販促活動に力を入れているところであれば、自店の販促活動も大々的に行えるようになるため集客力を大幅に向上できます。
ネイルサロン経営者の中には「ネイルサロンを誰かに引き継ぎたいけど、後継者が見つからない」という問題を抱えている方もいるでしょう。
M&Aは、ネイルサロンの後継者問題を解決できる点がメリットです。外部の企業・経営者にネイルサロンの経営を任せられるため、安心して経営からリタイアできます。
また、M&Aでネイルサロンを譲渡すれば従業員の雇用は基本的に継続できます。事業譲渡の場合は再契約が必要であるものの、廃業時のように従業員を解雇する必要はありません。
M&Aでネイルサロン事業を売却すると、経営者は事業の売却益を獲得できます。売却益は一般的にまとまった金額であり、様々な用途に活用できる点がメリットです。例えばリタイア後の生活や自分の趣味に使ったり、貯蓄に回したりといった使い方があります。
また、売却益を新規事業に投下すれば金融機関に依頼する融資額を低く抑えられます。融資が通りやすくなり、財務健全性を高めた状態で新規事業を経営することが可能です。
ネイルサロンの経営者は一般的に、金融機関からの融資に対して負った個人保証や、経営上で生じた負債を抱えています。個人保証や負債を抱えたまま生活することに、大きなストレスを感じる方も多いでしょう。
M&Aでネイルサロンを売却すれば、個人保証や負債は譲受側へと引き継がれます。譲渡側の経営者は個人保証や負債から解放され、心機一転して新しい生活・働き方をスタートできます。
M&Aでネイルサロンを譲受する会社は、事業参入や拡大に必要な経営資源を獲得できるなどのメリットがあります。 M&Aによってネイルサロン事業の成長を見込みたい方は、メリットの内容を詳しく把握すると良いでしょう。
次に、ネイルサロンのM&Aによる譲受(買い手)側のメリットを3つ紹介します。
M&Aによってネイルサロンを譲受すると、店舗・設備・経営ノウハウなどの経営資源をまとめて獲得できます。獲得した経営資源を活用して、ネイルサロン事業への新規参入やエリア開拓を進めることが可能です。
また、買収した店舗をそのまま引き継ぐ場合は、新店舗の立ち上げにかかる設備投資の削減にも繋がります。既存顧客やリピーターをそのまま確保して、店舗運営ができる可能性もあるでしょう。
M&Aを行った場合、基本的に従業員の雇用はそのまま引き継がれます。
即戦力となるスタッフを確保できることは、ネイルサロン事業のスムーズな展開に欠かせないメリットです。M&A後の人材教育に資金・時間といったコストをかける必要がなく、素早くサービス提供を行えます。
ネイルサロンでは、技術力の高いネイリスト個人に顧客が付いているケースが少なくありません。スタッフの雇用を継続することで、ネイリスト個人に付いている顧客もそのまま自店を利用してくれます。
譲受側が隣接業種の場合は、ネイルサロンを傘下に加えることでグループ店のブランド力・集客力が高まる点がメリットです。 例えば譲受側が美容室であれば、美容室とネイルサロンを併設して一つのコースを提供する売り方ができるでしょう。 また、美容系事業の多角化によって顧客から「美容サービス全般を提供する会社」として認知されやすくなり、事業間のシナジー効果創出も見込めます。
ネイルサロンの売却価格は、一般的な相場で1店舗当たり「約300万~1,000万円」と比較的幅広くなっています。 ただし、個人が経営する零細サロンでは、希望売却価格が相場より低く設定されることも多々あります。ネイルサロンの経営者は女性が多く、結婚・出産といったライフステージの事情によって「売却価格が安くても早く売りたい」と考える方が多いためです。
反対に、売却価格の相場を大きく上回って2,000万円以上で売却できるケースもあります。ほかの美容サービスと並行して店舗運営をしていたり、人気店で毎月安定した売上を得ていたりするネイルサロンは、売却価格が高くなりやすいでしょう。
ネイルサロンの売却・譲渡価格を算出するときは、「年倍法」と呼ばれる方法がよく用いられています。
【年倍法の計算式】
売却・譲渡価格 = 時価純資産 + 営業利益 × 2~5年
時価純資産とは、事業用資産を時価で算定した金額です。 もう1つの営業利益とは1年あたりの収益力のことで、2~5年分の営業利益は営業権(のれん)とも呼ばれます。
例として、ネイルサロンの時価純資産が800万円、営業利益が250万円の場合、売却・譲渡価格を年倍法で算出すると下記の通りです。
売却・譲渡価格 = 800万円 + 250万円 × 2~5年 = 1,300万~2,250万円
ただし、年倍法で算出した金額はあくまでも目安です。実際の売却・譲渡価格は、譲渡側・譲受側の交渉によって決まることを覚えておきましょう。
ネイルサロンのM&Aを成功させるためには、事例を参考にするのも有効です。ここでは、ネイルサロン業界で行われた主なM&A事例を2つ紹介します。
●株式会社鉄人化計画×ビアンカグループ
株式会社鉄人化計画は、2021年12月にビアンカグループ6社の全株式を取得して子会社化しました。 株式会社鉄人化計画は首都圏エリアでカラオケ・飲食事業を展開し、中京エリアではまつ毛エクステ・ネイルサロンを展開する企業です。一方、譲渡側のビアンカグループは首都圏エリアでまつ毛エクステ・ネイルサロンなどの店舗を運営しています。 株式会社鉄人化計画はM&Aによって美容事業の拡大とともに、首都圏エリアでの効率的な事業運営を目指しています。
●株式会社ヤマノホールディングス×有限会社みうら
株式会社ヤマノホールディングスは、2018年7月に有限会社みうらの全株式を取得して子会社化しました。 株式会社ヤマノホールディングスは美容事業・和装宝飾事業・DSM事業を展開しています。譲渡側の有限会社みうらは30年弱の社歴がある老舗ネイルサロンです。 株式会社ヤマノホールディングスは美容事業の拡大を図っていて、成長戦略の一環として本M&Aを実施しました。
ネイルサロンのM&Aを成功させるためのポイントは、譲渡側と譲受側とで違いがあります。 M&Aで達成したい目的も踏まえて、自社の立場に合ったポイントを押さえながらネイルサロンのM&Aを実施しましょう。
【譲渡(売り手)側のポイント】
●ネイリストが離職しないように対策する
ネイリストの離職は売却価格に影響する可能性があります。M&Aへの不安からネイリストが離職しないよう、M&Aについて伝えるタイミングなどに注意してください。
●自社の強みを分析する
エリアでの認知度や立地の良さ、個性的なサービスなど、譲渡側にアピールできる自社の強みや特徴を分析しましょう。
●自社の特徴を伝えられる資料を用意する
M&Aでは譲渡側が自社の情報を一部公開してM&A先を探します。零細規模のネイルサロンであっても、自社の概要や財務状況をまとめたほうが良いでしょう。
【譲受(買い手)側のポイント】
●競合との差別化ができるネイルサロンを選定する
立地条件・アクセス性や提供できるサービス内容など、競合との差別化ができるネイルサロンとM&Aをすると、譲受後の経営がしやすくなります。
●既存事業とのシナジー効果を得られるかを検討する
ネイルサロン事業に新規参入する場合は、自社の既存事業とのシナジーがあるか、新たな価値創出ができるかを検討してください。
●雇用を継続したネイリストが働きやすい環境づくりをする
M&Aで雇用を継続したネイリストは、新しい会社に不安や戸惑いを感じている可能性があります。ネイリストのモチベーション低下や離職を招かないよう、働きやすい環境づくりをしましょう。
また、譲渡側・譲受側のいずれの立場にも共通する成功のポイントとして「M&Aに詳しい専門家への相談」が挙げられます。 M&Aを実行する際はM&A先探しや条件・価格交渉、各種契約の締結など、多くのプロセスが存在します。独力でM&Aのプロセスを進めるのは難しく、費用や時間といったコストを浪費するだけの結果になる可能性もあるでしょう。
ネイルサロンのM&Aを成功させるには、M&Aに詳しい専門家に相談することが重要です。
M&Aに詳しい専門家とひとくちに言っても、具体的にどこに相談すれば良いか分からない方は多いでしょう。 M&Aについて相談先となる主な候補として、「金融機関」「マッチングプラットフォーム」「M&Aアドバイザー」があります。
相談先によって得られるサポート内容が異なるため、それぞれの特徴を把握して自社のケースに合う相談先を選びましょう。
多くの金融機関が事業承継やM&Aについての支援・相談対応を行っています。金融機関は様々な企業・組織とのネットワークがあるため、自社の状況や希望条件に合う譲受候補先を紹介してもらえます。
しかし、金融機関によっては規模の大きいM&A案件のみを取り扱っていて、零細規模のネイルサロンに向いた案件を取り扱っていない可能性があります。
マッチングプラットフォームは譲受候補先を自分で探せるサービスであり、運営会社によってはM&Aについての相談受付をしてもらえるケースもあります。譲受候補先の選択肢が多く、相談に乗ってもらいながらM&A先の選定ができる点がマッチングプラットフォームのメリットです。
ただし、運営会社によってはM&Aについての相談受付をしていなかったり、支援内容が手薄であったりするケースもあります。マッチングプラットフォームは譲受候補先の探索がメインであり、積極的な支援は受けにくいと考えた方が良いでしょう。
M&Aアドバイザーは、M&A先の仲介や交渉のサポートを行う会社です。M&Aを専門的に取り扱っており、ネイルサロンのM&Aを検討した際の相談先として最もおすすめです。
M&AアドバイザーはM&Aの専門知識やノウハウがあり、ネイルサロンのM&Aについても適切な助言がもらえます。幅広いネットワークによるM&A先探しや、条件交渉の支援も行ってくれるため、ネイルサロンのM&Aを効率的に進めたい方は相談してみると良いでしょう。
ネイルサロンは零細規模の店舗が多く、競合との競争が激しい業界です。ネイルサロンのM&Aを検討する方は、自社の立場でどのようなメリットがあるかを検討しましょう。
ネイルサロンのM&Aでは競合との差別化が最も重要です。競合との差別化ができていて安定した売上のあるネイルサロンは、M&Aの売却価格が高くなります。
株式会社レコフは、M&Aを検討する会社の希望をヒアリングし、M&Aの実現を支援するM&A助言会社です。ネイルサロンのM&Aを検討している方は、株式会社レコフにご相談ください。
監修者プロフィール
株式会社レコフ リサーチ部 部長
澤田 英之(さわだ ひでゆき)
金融機関系研究所等で調査業務に従事後、政府系金融機関の融資担当を経て2005年レコフ入社。各業界におけるM&A動向の調査やこれに基づくレポート執筆などを担当。平成19年度農林水産省補助事業、食品企業財務動向調査委員、平成19年度内閣府経済社会総合研究所M&A究会 小研究会委員。著書・論文は「食品企業 飛躍の鍵 -グローバル化への挑戦-」(共著、株式会社ぎょうせい、2012年)、「データから見るIN-OUTの動向 -M&Aを通じた企業のグローバル化対応-」(証券アナリストジャーナル 2013年4月号、公益社団法人 日本証券アナリスト協会)など。
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