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業界別M&A
近年、スーパーマーケット業界ではM&Aの動きが活発化しています。M&Aは業界が抱える課題を解決する手段の1つであり、実際にM&Aにより企業成長を実現しているケースが多く見られます。M&Aを検討している方は、知識を深めた上で信頼できるM&Aアドバイザーに相談してみましょう。
今回は、スーパーマーケット業界の概要と市場規模、M&A動向や立場ごとの実施メリットについて詳しく解説します。代表的なM&A手法とM&A事例も紹介するため、ぜひ参考にしてください。
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事業承継・譲渡売却は
スーパーマーケット業界とは、食品を中心に日用品・雑貨なども販売する総合食料品小売店の総称です。基本的に売り場面積が250平米以上あり、部門別管理が行われている総合食料品小売店がスーパーマーケットと定義付けられています。セルフサービス方式を採用していることも特徴です。
スーパーマーケットの種類は、次の2つです。
| 食品スーパー | 生鮮食品や日用品に特化して販売 |
| 総合スーパー | 生鮮食品や日用品に加えて衣料品、文具、玩具なども販売 |
近年は、スーパーマーケットが運営するインターネット上で生鮮食品や日用品などを販売するネットスーパーも普及しています。スーパーマーケットは、人々の生活を支える重要なインフラの1つです。

スーパーマーケット業界の2019年~2024年における総売上高の前年比推移は、下記の通りです。
| 2019年 | 99.9% |
| 2020年 | 106.3% |
| 2021年 | 99.5% |
| 2022年 | 100.8% |
| 2023年 | 103.7% |
| 2024年 | 103.9% |
(出典:一般社団法人 全国スーパーマーケット協会「2025年版 スーパーマーケット白書」/
https://www.super.or.jp/wp/wp-content/uploads/2024/02/NSAJ-Supermarket-hakusho2025_Full.pdf)
データから分かるように、スーパーマーケット業界は概ねプラスの影響をもたらしており、業界全体が順調に成長しています。特にコロナ禍は内食や昼食の需要が増えたこともあり、2020年には総売上高の前年比が106.3%となりました。一時的な売上の増加により2021年は前年を下回ったものの、以降は順調に売上を伸ばしています。
スーパーマーケットの販売店舗数は、わずかに増加しています。しかし、企業数自体は減少傾向が続いているのが現状です。
近年、国際エネルギー価格の上昇や急激な円安などの影響で、消費者の節約志向が高まっています。
多くの商品価格が上昇する中で、多くの消費者は家計を守るために買い控えや特売品・値引き商品の購入など自分たちでできる家計防衛策を行っています。
食品の中で節約している人が多いのが、野菜・果物・お菓子・コーヒーです。特にお菓子やコーヒーなどの嗜好品を我慢する消費者は多く見られます。
節約のために外食を控えて自炊する人やお惣菜やお弁当を買って中食を選ぶ人も多く、スーパーでの買い物頻度が増えた人も大勢います。こうした消費者の節約意識の変化により、購買行動にもさまざまな変化が起こっていると言えるでしょう。
多くのスーパーマーケットでは、クレジットカードやQRコード決済、電子マネーなどによるキャッシュレス決済の利用が可能です。全国スーパーマーケット協会が実施した調査によると、2024年11月時点でのキャッシュレス決済の導入率は93.3%です。
また、消費者のニーズに合わせてネットスーパーやオンラインで購入した商品を配送する店舗外販売を実施するケースも増えています。
スーパーマーケット業界における2024年の店舗外販売の実施率は、下記の通りです。
| ネットスーパー | 21.8% |
| 配送サービス | 47.2% |
(出典:一般社団法人 全国スーパーマーケット協会「2025年版 スーパーマーケット白書」/
https://www.super.or.jp/wp/wp-content/uploads/2024/02/NSAJ-Supermarket-hakusho2025_Full.pdf)
高齢化が進む日本において、店舗外販売の需要は今後も拡大すると予想されています。
物価上昇による商品価格の高騰で、各社が展開する低価格・高品質なプライベートブランド商品へのニーズも高まっています。
スーパーマーケットにおける2020年~2024年のプライベートブランド商品の導入率は、下記の通りです。
| 年度 | 導入率 |
|---|---|
| 2020年 | 70.6% |
| 2021年 | 70.6% |
| 2022年 | 76.5% |
| 2023年 | 80.5% |
| 2024年 | 81.9% |
(出典:一般社団法人 全国スーパーマーケット協会「2025年版 スーパーマーケット白書」/
https://www.super.or.jp/wp/wp-content/uploads/2024/02/NSAJ-Supermarket-hakusho2025_Full.pdf)
プライベートブランド商品の導入率は、2020年から2024年までの4年間で10%以上増えています。他店にはないオリジナル商品に魅力を感じる消費者が増えていることも、プライベートブランド商品の開発や販売が進む背景の1つです。

業界の総売上高は順調に伸びているため、スーパーマーケット経営は一見好調に見えます。しかし、実際にはコスト面や競合の影響などの課題を抱えています。
ここからは、スーパーマーケット業界における今後の課題を詳しく解説します。
高騰する物流コストや上昇する人件費への対応は、企業にとって大きな課題です。
商品となる食料品や日用品などの仕入れコストはもちろん、商品の輸送費や各店舗の光熱費なども高騰しており、スーパーマーケットの利益を圧迫しています。最低賃金の上昇により、従業員全体の賃金見直しも避けられません。
スーパーマーケット経営のコスト増加に対しては、物流の効率化や同業同士での共同配送、業務の省人化・自動化などの対応が求められます。業務を自動化する方法としては、セルフレジの導入や在庫管理システムの導入などが考えられます。ただし、導入コストがかかる点がデメリットです。
スーパーマーケット業界では、ネットスーパーや宅配サービスなどEC化が急速に進んでいます。価格の安さや品質の良さ、さらに利便性の良さなど顧客ニーズが多様化する中で、従来の実店舗中心のビジネスモデルは競争にさらされています。
また、ドラッグストアやコンビニ、ディスカウントストアなどの他業種との競争が激化して、売上やシェアに影響していることも大きな問題です。生鮮食品や総菜を取り扱うドラッグストアやコンビニも増えており、スーパーマーケットの強みを発揮することが難しくなっています。
プライベートブランド商品の強化や地域密着型サービスの提供、オムニチャネル戦略などEC化や他業態との差別化を図るための戦略が必要です。オムニチャネル戦略とは、実店舗とSNSやアプリを連携させて消費者にアプローチする販売戦略の1つです。
近年、日本における労働人口の減少により、人材不足が深刻化しています。スーパーマーケット業界も例外ではなく、人手不足に陥っている企業がほとんどです。長時間労働や低賃金といった問題も人材不足を招いている原因の1つです。
人材不足の解決策として有効なキャッシュレス決済・在庫管理・ネットスーパー運営も、導入するにはまとまった資金が必要となります。システム投資にかかる初期費用や維持費が経営の負担となっています。
人材不足の改善とシステム投資による経営負担の軽減を目指すには、人材確保と育成への取り組みとシステム投資のバランスが重要です。今後のスーパーマーケット業界には、持続可能な経営体制の構築が求められます。

スーパーマーケット業界では、他業種と同様にM&Aが活発化しています。M&Aを検討している方は、業界内のM&A動向をチェックしておきましょう。
ここでは、スーパーマーケット業界のM&Aの主な目的とメリットについて詳しく解説します。
スーパーマーケット業界では、同業同士でのM&Aが多く実施されています。事業を統合して特定地域にチェーン店を集中させるドミナント戦略が主な目的です。競争率の強化や市場規模の拡大、販路拡大などが期待できます。
同じ業界だからこそ双方への理解が深く情報の共有もしやすいため、M&A後の引継ぎもスムーズに進めることができます。経理や総務といった重複する間接部門を統合できれば、業務の効率化とコスト削減も可能です。譲受(買い手)側の経営資源の活用により、新たな成長機会を見出すこともできるでしょう。
スーパーマーケット業界の経営に長けている企業同士が手を組むことで、人材育成や組織の最適化といった経営面におけるシナジー効果も発揮しやすくなります。
スーパーマーケット業界では、異業種とのM&Aも活発に行われています。供給網の強化や配送力の強化、商品開発力向上などがM&Aの目的です。
スーパーマーケット業界とのM&Aが行われている主な業界は、下記の通りです。
異業種M&Aは、手を組む業界によって得られるメリットが異なります。物流業界なら配送力の強化、EC業界であればデジタル強化を図れるでしょう。企業成長のために何が必要なのかを考えて、目的に合わせて理想のM&A相手を見つけることが重要です。
譲受(買い手)側がスーパーマーケット業界の知識に乏しい場合は、譲渡(売り手)側の経営の自主性が尊重されやすい傾向にあります。

スーパーマーケット業界のM&Aでは、スーパーマーケットが譲渡(売り手)側になることもあれば譲受(買い手)側になることもあります。それぞれのメリットをチェックした上で、M&Aを検討しましょう。
ここからは、スーパーマーケット業界のM&Aによるメリットを立場別に解説します。
スーパーマーケットが譲渡(売り手)側になる場合の主なメリットは、次の通りです。
経営を続けられず廃業することになれば、地域住民のインフラに大きな影響を及ぼし、従業員も職を失うことになります。しかし、M&Aが成功すれば事業と従業員の雇用を守ることができます。借入金の保証や担保からも解放されるため、経営者が抱える不安を解消できるでしょう。
また、大手企業の傘下に入ると、店舗網・サプライチェーン・人材といった豊富な経営資源を活用できます。ドミナント戦略により物流コストも大幅に削減できるため、経営基盤の安定化を図れます。
スーパーマーケットが譲受(買い手)側になる場合の主なメリットは、次の通りです。
譲受(買い手)側にとって、未開発の地域に効率良く出店できるのは特に大きなメリットです。市場シェアの拡大が進めば、認知度の向上を目指しやすくなります。
さらに、プライベートブランド商品の共同開発や販売ができるようになれば、顧客ニーズやトレンドに合わせたビジネス展開もしやすくなるでしょう。
譲受(買い手)側が異業種の場合は、経営資源やスーパーマーケット事業の経営ノウハウを獲得してスピーディに新規参入を実現できます。

スーパーマーケット業界における代表的なM&Aの手法には、「株式譲渡」「事業譲渡」の2つがあります。
それぞれの概要とメリット・デメリットは、以下の通りです。
●株式譲渡
株式譲渡とは、譲渡(売り手)側が保有する株式を譲受(買い手)側に譲渡する手法です。手続きが簡易的で、従業員の雇用や取引先との契約をスムーズに引継げます。譲受(買い手)側は負債も引き継ぐため、簿外債務のリスクが伴う点がデメリットです。
●事業譲渡
事業譲渡とは、譲渡(売り手)側の事業や資産・負債などを選んで譲受(買い手)側に譲渡する手法です。譲受(買い手)側は簿外債務や不要な部分を引き継がずに済みます。ただし、譲渡対象となる部分に対して個別に手続きが必要となるため、株式譲渡に比べて手間と時間がかかります。

スーパーマーケット業界のM&Aを成功させるためには、具体的な事例を参考にするのも有効です。どのような手法で何を目的としたM&Aを行ったのかを知ることで、自社のM&Aをイメージしやすくなります。
ここでは、スーパーマーケット業界のM&A事例を詳しく解説します。
株式会社クスリのアオキホールディングスは、2025年4月に株式会社ミワ商店の全株式を取得して完全子会社化することを決定しました。
| 譲渡(売り手)側 | 株式会社ミワ商店 |
|---|---|
| 譲受(買い手)側 | 株式会社クスリのアオキホールディングス |
| M&Aの目的 |
|
| M&Aのスキーム | 株式譲渡 |
株式会社クスリのアオキホールディングスは、ドラッグストア「クスリのアオキ」や専門調剤薬局の運営を行う大手企業です。
株式会社ミワ商店は、香川県内に地域密着型の食品スーパー「PiCASO」を展開しています。生鮮部門を中心に、専門性の高い人材が揃っていることが大きな強みです。
双方の経営ノウハウと優れた人材の共有によって、さらなる企業成長を目指しています。
U.S.M.H株式会社は、2024年4月に株式会社いなげやと株式交換を行い完全子会社化することを決定しました。
| 譲渡(売り手)側 | 株式会社いなげや |
|---|---|
| 譲受(買い手)側 | U.S.M.H株式会社 |
| M&Aの目的 |
|
| M&Aのスキーム | 株式交換 |
U.S.M.H株式会社は、「マルエツ」「カスミ」「マックスバリュ関東」からなる共同持株会社です。全国展開するイオングループに属しています。
株式会社いなげやは、関東圏でスーパーマーケット事業とドラッグストア事業を展開する企業です。U.S.M.H株式会社と同様にイオングループの傘下として、企業成長を続けています。
首都圏における顧客ニーズへの対応と新たなビジネスモデルの実現を目指すために、M&Aが行われました。
株式会社エコスは、2024年9月に株式会社ココスナカムラの全株式を取得して完全子会社化しました。
| 譲渡(売り手)側 | 株式会社ココスナカムラ |
|---|---|
| 譲受(買い手)側 | 株式会社エコス |
| M&Aの目的 |
|
| M&Aのスキーム | M&Aのスキーム 株式譲渡 |
株式会社エコスは、地域に根差した店づくりを目指して事業を行ってきた食品スーパーマーケットチェーンです。地域社会に貢献できる活動にも力を入れています。
株式会社ココスナカムラは、東京都内で生鮮食品スーパーとベーカリーを展開しています。株式会社エコスと同様に、地域密着型の店舗運営を行っているのが特徴です。
経営資源とノウハウを統合して店舗網を拡大することで、競争が激化するスーパーマーケット業界でのさらなる成長を目指しています。
スーパーマーケット業界は、総売上高が継続的に安定しており業界全体が成長していると言えます。一方で、高騰する物流コストや人件費への対応、人材不足などの課題も抱えているのが現状です。
各企業では、抱えている課題を解決するために、さまざまな取り組みを行っています。同業または異業種とのM&Aも解決策の1つです。
「株式会社レコフ」では、さまざまな業界においてM&Aの支援を行っています。業界に精通したアドバイザーが丁寧にお手伝いします。会社のM&Aをお考えの方は、まずはお問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。
監修者プロフィール

株式会社レコフ リサーチ部 部長
澤田 英之(さわだ ひでゆき)
金融機関系研究所等で調査業務に従事後、政府系金融機関の融資担当を経て2005年レコフ入社。各業界におけるM&A動向の調査やこれに基づくレポート執筆などを担当。平成19年度農林水産省補助事業、食品企業財務動向調査委員、平成19年度内閣府経済社会総合研究所M&A究会 小研究会委員。著書・論文は「食品企業 飛躍の鍵 -グローバル化への挑戦-」(共著、株式会社ぎょうせい、2012年)、「データから見るIN-OUTの動向 -M&Aを通じた企業のグローバル化対応-」(証券アナリストジャーナル 2013年4月号、公益社団法人 日本証券アナリスト協会)など。
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