Useful

M&A成功のカギを握るTSAとは?|

M&A初級編

2024.05.22更新日:2024.05.22

近年、事業継承などの経営課題を解決する手段として、M&Aが注目を集めています。売り手と買い手が円滑に事業統合するには、様々な契約を取り交わしますが、中でもM&Aの成功を左右する重要な契約が「TSA」です。M&Aの最終段階で結ぶ契約ですが、どのような契約内容なのでしょうか。 この記事では、

  • TSAの具体的な契約内容について
  • TSAの契約を結ぶタイミング
  • TSA契約の対象となる業務

などについて解説します。この記事を読めば、M&A成功のカギを握るTSAの契約内容について詳しく理解できます。M&Aは専門的な知識や用語を理解する必要がありますので、その予備知識としても役立ちます。現在、経営課題を解決する手段としてM&Aをご検討の経営者の方は、ぜひご一読ください。

目次

TSAとは?

TSAは、Transition(遷移)Service Agreement(サービス契約)の頭文字をとったもので、「企業を譲渡する期間中のサービス提供に関わる契約」のことを言います。つまり、売り手がこれまで行ってきたサービスを、買収後の移行期間中、どのように取り扱うのかを、売り手と買い手の間で取り決めを行う契約です。 例えば、親会社が子会社をM&Aで買収した際、子会社が提供してきたサービスを、買収後も単独で提供することはできません。買収後の新サービス内容との間に「不一致」が生じてしまい、利用者に迷惑がかかってしまうためです。そこで、これまでのサービスを提供するにあたり、「親会社からの許可を必要とする」と取り決めをしたとしましょう。この取り決めがTSAにあたります。 M&Aを進めるプロセスにおいて、基本合意書、機密保持契約書など様々な契約を取り交わしますが、TSAはその最終段階で必要となる契約です。M&Aは契約が締結したから完了ではなく、契約締結後、組織再編やシステム統合などの具体的な合併業務がはじまります。合併に関わる業務の「責任の所在」を明確にする必要がありますが、その内容をTSAで取り交わします。

TSAはどのような時に締結されるのか?

TSAは、先ほどご紹介したようにM&Aに必要な様々な契約の最終段階で締結されます。TSAが締結されると、買い手企業は合併業務に取りかかり、その範囲は業務システムなどの物理的な合併だけにとどまらず、組織・制度・経営理念などの統合も行います。この合併業務がスムーズに進むかどうかで、M&Aの成否が決まると言われるほど重要で膨大な時間と労力を投入します。 そのため、クロージング(買い手によるM&A完了の対価の支払い)までに合併が間に合わない可能性もあります。クロージングに間に合わないからといって、売り手が行ってきたサービスを中止すれば、合併後の経営にも著しい影響が出るでしょう。よって、クロージング後も売り手によるサービス提供を継続してもらう必要があります。 TSAはクロージングと同時に締結する必要があるため、譲渡契約と並行して交渉を行います。そのため、M&A専門家のアドバイスも受けながら、TSA契約内容に不備がないように慎重に進めます。

TSAの対象となる業務とは?

バックオフィス業務

人事・総務・給与計算といったバックオフィス(社内向け)業務がTSAの対象となるケースがあります。バックオフィスでは外部に公表できない機密情報を取り扱ったり、バックオフィス間で使用する情報システムが複数あったりするケースが多いためです。そのため、複雑な業務を統合する手続きにも時間がかかることから、M&Aのクロージングと同時に完了させることが難しくなるため、その移行期間の猶予を設けTSAで業務統合の取り決めを行います。

ロジスティクス(物流)

商品の「調達」から「出荷」までを行うロジスティクス業務もTSAに組み込まれるケースが多いです。自社あるいはグループ会社において、商品の物流を一括管理することでコストを抑える企業は多いでしょう。ロジスティクス業務は、商品の「需要」と「供給」のバランスを調節する重要な部門です。M&Aによって、新物流システムに移行するまでの間、このバランスが崩れてしまうと、出荷の遅れなどが生じて消費者に迷惑がかかってしまいます。そのような状況に陥らないためにも、売り手側の物流システムを一時的に利用できるよう、売り手と買い手との間でTSAの契約を取り交わします。

サプライチェーン(商品の材料の仕入から販売までの流れ)

ロジスティクスと似ている業務に「サプライチェーン」があります。サプライチェーンとは、材料の「仕入」「調達」から「製造」「販売」などを一括管理する経営手法のことです。サプライチェーンもM&Aが実行され、これまでとは違った新しいシステムに切り替わる場合は、移行するまでにある程度の時間が必要となります。その間、仕入・調達・物流を中断させるわけにはいきませんので、TSAによって移行期間のサプライチェーンをどうするか取り決めをします。

TSAと深く関わる契約について

クロージング時にTSA契約を交わすにあたって、TSAと密接に関わる契約があります。「最終契約」と「業務委託契約」の2種類です。それぞれ、TSAとどのように関わるのか紹介します。

最終契約

M&Aでは、中間的な合意を記した契約書を経て、売り手・買い手の双方の権利や義務について正式な合意内容を記した「最終譲渡契約」にサインし正式に契約を締結します。これは、M&A全体で最も重要な契約といって良いでしょう。最終契約は、Definitive Agreementの頭文字を取ってDAとも呼ばれます。最終契約書(DA)に記載される内容は、誓約(コベナンツ)・表明保証・譲渡対象範囲・譲渡対価・クロージングの前提条件・補償などです。TSAもこの最終的に合意するタイミングで締結されます。

業務委託契約

2つ目は「業務委託契約」です。双方がTSAに合意した場合、譲受会社(買い手)は「すぐには統合が難しい業務」の一部を委託し、譲渡会社(売り手)が受託します。TSAで決めた業務を具体的に委託するために交わす契約です。これらの契約を締結することで「法的拘束力」が伴いますので、クロージング後も合併業務がスムーズに進められます。

TSAはM&A成功を左右する重要な契約

近年の日本では、M&Aが意欲的に行われています。後継者不足の解決策として実施する企業もありますし、スケールメリットを見越して大企業が吸収合併を進めるケースもあります。一方で、M&Aでは統合後の管理に失敗し、M&Aを行っても想定していた利益に結び付かないというケースも散見されます。

M&Aは、良くも悪くも企業の揺るがす影響力のある経営戦略です。特に、統合作業をスピード重視でおろそかにしてしまうと、統合後に優秀な従業員が離脱したり経営状況が悪化したりと、譲受会社にとってマイナスとなるトラブルにつながりかねません。TSAは事業統合の要となる契約です。

早期から交渉を進めて有利な契約締結ができるよう働きかけて、移行作業を詳細に明文化し、一部業務を委託してもらいつつ慎重に移行作業を進めることが大切です。そうすることでスムーズな事業統合が実現し、ひいてはM&Aの成功に繋がるでしょう。

M&Aは専門家のアドバイスで進めるのが適切

M&Aには専門知識を要するケースが多いうえ、先回りをして対策を講じておかなければならない場面もあります。こちらで取り上げた「TSA」も、正式契約までに先んじて手を打っておき、クロージングと同時に契約締結を行わなければ、M&A後のサービス提供に悪影響が出てしまいかねません。

M&Aを進める際には、確かな専門知識を持った仲介会社のサポートを仰ぐのが一般的です。その理由は、M&Aの知識が不十分なまま譲受会社・譲渡会社の2社間で取引を進めてしまうと、思わぬトラブルを招いたり、計画通りの成果を受け取れなくなったりする可能性があるからです。M&Aを依頼するなら、経験と実績が高い会社への依頼をおすすめします。

M&Aで関わってきた企業
20,000社以上!
36年以上の実績を持つ
レコフがM&Aに最適な
1社をご提案

レコフは創業1987年の国内で最も歴史のあるM&A専門会社です。
これまで、国内外における大小様々な規模の、
数多くのM&A、事業継承サポートを実行してきました。
日本の上場企業は3,500余社を数えますが、
創業以来その9割を超える企業と接触しており、
未上場企業を加えると、これまでに関わってきた企業は20,000社を超えます。
こうした実績と企業とのネットワークが新たなM&Aのマッチングにも活かされます。
36年以上の実績を持つレコフがM&A成功に導く最適な1社をご提案します。

監修者プロフィール

株式会社レコフ リサーチ部 部長

澤田 英之(さわだ ひでゆき)

金融機関系研究所等で調査業務に従事後、政府系金融機関の融資担当を経て2005年レコフ入社。各業界におけるM&A動向の調査やこれに基づくレポート執筆などを担当。平成19年度農林水産省補助事業、食品企業財務動向調査委員、平成19年度内閣府経済社会総合研究所M&A究会 小研究会委員。著書・論文は「食品企業 飛躍の鍵 -グローバル化への挑戦-」(共著、株式会社ぎょうせい、2012年)、「データから見るIN-OUTの動向 -M&Aを通じた企業のグローバル化対応-」(証券アナリストジャーナル 2013年4月号、公益社団法人 日本証券アナリスト協会)など。

M&Aを知る最新記事

選ばれる理由

  • 創業1987年の老舗イメージ画像
    1

    創業1987年の老舗

    レコフは日本にM&Aという言葉が広まる前から創業している歴史あるM&A助言会社で、豊富な実績がございます。

  • 業界トップクラスの成約件数実績イメージ画像
    2

    業界トップクラスの
    成約件数実績

    創業以来、1,000件以上の案件の成約をサポートして参りました。M&Aブティックの草分けとして様々な案件に携わってきた経験を蓄積し、新たなご提案に活用しております。

  • 約2万社の顧客基盤数イメージ画像
    3

    業界に精通した
    アドバイザーがサポート

    プロフェッショナルが業界を長期間担当し精通することにより、業界の再編動向、業界を構成する各企業の歴史や戦略、トップマネジメントの人柄に至るまで、対象業界に関する生きた情報を把握しております。

ご相談無料

M&Aのことなら、
お気軽にご相談ください。

お電話で
お問い合わせ

電話アイコン
03-6369‐8480

営業時間 / 平日9:00〜18:00