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M&A依頼で支払う手数料はどのくらい?
相場・算出法を解説

M&A初級編

2024.05.21更新日:2024.05.21

M&A導入を検討する際、「依頼会社にいくら手数料を支払えば良いのか」気になることでしょう。M&Aの手数料は、依頼会社や売却金額などによって左右されるため、一概にいくらとは言い難いのが現状です。 この記事では、

  • M&A手数料にはどんな種類があるのか?
  • M&A手数料はどのように算出されるのか?
  • M&Aを成功させるにはどんな方法がある?

などの疑問をお持ちの方に向けて解説します。この記事を読めば、手数料の種類と大まかな相場、成功報酬の算出方法が分かります。手数料を支払う意義についても記載しておりますので、将来的にM&Aをご検討の方は、ぜひご一読ください。

目次

手数料の種類

M&Aアドバイザーへの依頼を検討するにあたり、「いくら手数料を支払えばよいのか」「その相場はどのくらいなの」か疑問に思うことでしょう。手数料と一口に言っても、M&Aを進めるプロセスにおいて、支払うべき手数料の種類があります。ここでは、その種類と内容について解説します。

手数料の種類詳細
相談料 正式依頼前の相談時
着手金 正式依頼時
中間報酬 基本合意契約を締結した際
成功報酬 最終契約(株式譲渡契約等)を締結した際
リテイナーフィー 月額固定料金
ディーデリジェンス費用 財務・事業内容・法務・税務等のリスク調査時

相談料

今後の経営にM&Aの導入が適切かどうか、専門家に相談する際に支払います。他にも、「買い手企業が見つかる可能性はあるか、あるとしたら譲渡価額はいくらになるのか」等についても相談します。0~1万円程度が相場と言われています。

着手金

着手金は、正式にM&Aのサポート依頼をする際に支払う金額で、売買企業の選定や、調査を行うための人件費として使われます。着手金を支払う段階では、売買企業が必ず見つかる保証はされておりませんので、見つからなかったとしても返金されることはありません。着手金は、M&A専門会社によっても異なり、着手金が不要な会社もあれば、100~200万円程度発生する会社もあります。

中間報酬

M&Aの「基本合意契約」を締結したときに発生する手数料です。M&Aにおける基本合意契約とは売買の方向性を決めることであり、買収の意思が示されたときに締結されます。相談料・着手金が無料で中間報酬が発生するケースもあれば、中間報酬を取らない専門会社もあります。 「基本合意契約」を結んだからといってM&Aが確実に成立するわけではありませんが、基本合意契約が結ばれれば譲渡企業・譲受企業ともにM&A成立に向けて交渉を重ねることになります。

成功報酬

M&Aが正式に成立し「最終契約」を交わした際に発生する手数料です。成功報酬という性格上、どのM&A専門会社に依頼してもほぼ発生する手数料ですが、M&Aが成立しなかった場合に支払う必要はありません。成功報酬の算出には、「レーマン方式」を導入している助言会社が多くみられます。レーマン方式の計算方法については、この後ご紹介します。

月額手数料(リテイナーフィー)

仲介会社によっては、月額で手数料が発生します。リテイナーフィーは着手金と同様、M&Aの成功率を高めるための諸費用であり、リテイナーフィーがないM&A専門会社も少なくありません。

デューデリジェンス費用

デューデリジェンスとは、譲受企業から依頼された弁護士・公認会計士等の専門家が譲渡企業に対して行う実態調査にかかる費用です。基本合意契約が終わった後、譲受企業が費用を負担してデューデリジェンスを行います。中小企業間のデューデリジェンスにも50~300万円もかかるので、基本合意契約で交渉権を独占した時点で行うのが良いでしょう。

M&Aが小規模でリスクが低い場合はデューデリジェンスが省かれることもありますが、譲渡事業に潜在的なリスクがないとも限りませんし、それらの隠れたリスクは大抵買収後に大きく膨らんだ状態で顕在化するものです。省ける費用ではありますが、譲受企業はデューテリジェンスこそ経費を投入し、デューデリジェンスでリスク調査を行ってから慎重に売買の判断を下すべきです。

成功報酬の計算式「レーマン方式」とは

多くのM&A専門会社が「成功報酬」の計算方式として採用しているのがレーマン方式であり、売却額によって手数料の割合を計算します。成功報酬は最も金額が大きい手数料であるため、助言会社の成功報酬額が妥当かどうか知るためにもレーマン方式の知識は欠かせません。手数料の割合は一定ではありませんが、一般的に採用されている料金テーブルはあります。手数料の割合は一定ではありませんが、一般的に採用されている料金体系はあります。

<レーマン方式による成功報酬一覧>

対象資産手数料の割合
5億円以下の部分 5%
5億円超・10億円以下の部分 4%
10億円超・50億円以下の部分 3%
50億円超・100億円以下の部分 2%
100億円超 1%

成功報酬額を明確に決めてしまうと、売却益よりも高額な費用を払う事態になりかねません。手数料の割合を一律にすると、売却益が大きくなりがちな大企業は、依頼した業務の対価以上の費用を払うことになるでしょう。対象資産ごとに割合を当てはめるレーマン方式を導入するのは、成功報酬として妥当な金額を算出するためなのです。なお、報酬の基準には株式・オーナー受取・企業価値・移動総資産があり、仲介企業によってどの報酬基準額を採用しているのか異なるため、同じレーマン方式でも成功報酬に差異が生じます。 余談ではありますが、日本に初めてこのレーマン方式を持ち込んだのはレコフです。

手数料の相場

手数料にはいくつか種類があり、どの手数料を採用するのか、どれくらいの価格設定を行っているかはM&A専門会社によって異なりますが、大まかな手数料としては以下の通りです。

<手数料の相場一覧>

手数料の種類手数料の相場
相談料 0~1万円
着手金 0~200万円
中間報酬 0~500万円
成功報酬 譲渡価額による
リテイナーフィー 20~50万円/月
ディーデリジェンス費用 0~200万円

金額に幅があるのは、M&Aで発生する手数料は、助言会社と対象企業の状況に左右されるからです。上記はあくまで目安として覚えておき、M&Aアドバイザーを比較・検討する際には、相場ではなく自社の状況と当てはめた場合に手数料がどれくらいかかるのかを確認することが大切です。

手数料を支払う意義

より良い条件でM&Aが成立できる

譲渡企業は、自社のアピール力が低い傾向にあるため、M&Aアドバイザーを通すことでハンデの少ない交渉が可能です。M&A専門会社は、買収意欲のある企業との幅広いネットワークを持っているため、譲渡企業にとってより良い条件でM&Aを成立させることできます。

効率的に買収候補先を見つけられる

自社のアピール力に自信がない譲渡企業が自力で買収候補企業を募るのは至難の業です。M&A専門会社を通せば、譲受企業が集まってくれるとは断言できないものの、オークション形式であれマッチング形式であれ、譲渡企業がより良い買収候補企業を見つけるには、M&A専門会社の膨大なネットワークを利用する方が効率的です。仲介会社は業務の一環として企業買収に意欲的な会社とコンタクトを取っており、情報収集をしてネットワークを構築しています。片手間にはとても構築できない広く強固なネットワークを利用できるという点が、譲渡企業にとってのメリットといえます。

安く買い叩かれることを避けられる

M&Aの手数料が高額である点について疑問を覚える経営者の方もいらっしゃるかもしれませんが、M&Aでは「売れない」ことよりも、安く買い叩かれたり承継後の会社・事業がぞんざいに扱われたりする方がデメリットの大きい失敗です。譲渡企業が不利に立たされやすいため、譲受企業に押されて後悔が残るM&Aが成立してしまうケースもあります。

今後のビジネスに禍根が残らないよう調整を行うのが、M&Aアドバイザーの役割なのです。M&A専門会社が提供するサービスとメリットを把握し、多少時間をかけてでも、ご検討中のM&A専門会社のサービスに高額な手数料を支払う価値があるのかどうかを熟考することをおすすめします。

M&Aを成功させるには

M&Aは様々な専門知識が必要となる大きな取引です。譲渡会社は特に、M&Aに不慣れな状態で手続きを進めると、売却がスムーズにいかないほか、後継者としてふさわしくない会社へ譲渡してしまう等、M&Aを後悔するような取引に終わってしまうこともあります。自社で抱え込まずに、確かな実績と強固なネットワークを保有したM&A専門会社へ相談することをおすすめします。

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監修者プロフィール

株式会社レコフ リサーチ部 部長

澤田 英之(さわだ ひでゆき)

金融機関系研究所等で調査業務に従事後、政府系金融機関の融資担当を経て2005年レコフ入社。各業界におけるM&A動向の調査やこれに基づくレポート執筆などを担当。平成19年度農林水産省補助事業、食品企業財務動向調査委員、平成19年度内閣府経済社会総合研究所M&A究会 小研究会委員。著書・論文は「食品企業 飛躍の鍵 -グローバル化への挑戦-」(共著、株式会社ぎょうせい、2012年)、「データから見るIN-OUTの動向 -M&Aを通じた企業のグローバル化対応-」(証券アナリストジャーナル 2013年4月号、公益社団法人 日本証券アナリスト協会)など。

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