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M&A初級編
近年、中小企業を中心とした「後継者問題」は年々深刻さを増しています。その主な理由には、(1)経営者の高齢化と後継者の人口減少(2)「会社は子が受け継ぐ」という価値観の薄れ(3)後継者対策の準備が進められていない などがあります。中には事業承継が円滑に進まず、廃業を選択するケースも増えつつあります。 この記事では、
などの疑問をお持ちの方に向けて解説します。この記事を読めば、後継者問題の現状が分かると共に、解決する手段の一つとして「M&A」の活用法についても理解できます。現在、後継者不足にお悩みの方は、ぜひご一読ください。
近年、企業の後継者不足によって、廃業を余儀なくされる経営者が増えています。後継者不足と聞くと、伝統工芸や伝統芸能の担い手不足のイメージが強いかもしれませんが、実のところ企業においても、経営者にとっては後継者候補がいないことが悩みの種となっているのです。近年は「子供がいない」「家族が事業を継げない」「継ぐ意思がない」などといった理由で、経営者のご親族への事業承継が難しくなっています。
社内から後継者候補を探そうにも、事業承継に前向きで経営のノウハウがある人材、自社株式を譲受できるほどの経済力を持った人材というのはなかなか存在しません。団塊世代が第一線から引いた2007年以降、中小企業の経営者の平均年齢は上昇の一途を辿っており、後継者不足の現状が垣間見えます。
後継者が見つからないまま、廃業した中小企業やすでに廃業が決まっている中小企業は年々増加しています。帝国データバンクが2023年に行った「全国企業後継者不在率動向調査」によると、国内企業の53.9%がすでに後継者不足に直面しています。後継者不在率がもっとも高い業種は「建設業」であり、全体の6割を占めるほど深刻な状況です。
経済産業省によると、2025年には70歳を超える中小企業経営者が約245万人になり、1/3が後継者問題に悩まされると推計されています。中でも、後継者さえいれば存続する黒字休廃業が予測される企業の経営者は約60万人にのぼります。「後継者候補の選定はまだ先の話」という企業もあるかもしれませんが、遅かれ早かれどの企業も直面する問題です。
後継者が不在のままであれば、業績が黒字であっても廃業を考慮せざるを得ないでしょう。日本が誇る高度な技術も事業承継者がいなければ廃業してしまいますし、中小企業の減少は雇用状況の悪化に繋がります。いずれにしても、日本経済を大きく揺るがす問題に発展する懸念もあります。このような点を踏まえて、企業は早期に後継者問題の解決策を講じておく必要があります。
参照元:
全国企業後継者不在率 動向調査(帝国データバンク)日本政策金融公庫総合研究所が行った「中小企業の事業承継に関するインターネット調査(2023年調査)」によると、中小企業のうち後継者が決定している企業はわずか10.5%であり、後継者が見つからずに廃業を予定している企業は57.4%にも及びます。「後継者がいなくても構わない」という経営者は一定数存在するものの、およそ75%の企業が何らかの経営資源を引き継いでもらいたいと考えていることが、同調査には如実に表れています。
それでも後継者がいない会社のうちおよそ3割は、「事業を継げる子供や親族がいない」「子供や親族に事業を継ぐ意思や能力がない」といった後継者不足によって、廃業が危ぶまれている状況です。後継者候補としては子供の数が顕著に廃業予定割合に影響しており、依然として実子・養子が事業承継の状況を左右する状況にあります。
なお、後継者が決まっていない企業のうち、事業承継時に問題になりそうな事柄を抱えている企業の割合は7割ほどです。問題の内訳は相続税・贈与税の問題や取引先との関係維持などが上がっており、経済力や経営能力の観点から、安易に事業を継げない状況に陥っていることも後継者問題の一因と考えられます。
参照元:
中小企業の事業承継に関するインターネット調査(日本政策金融公庫総合研究所)後継者問題を解決するには、親族に承継する「同族承継」や、社内・他社から継承者候補を選ぶ「親族外承継」などがあります。最も一般的に知られる方法ですが、それ以外の方法についても合わせて解説します。
同族承継のメリットは、若いうちから後継者候補を育てることができるうえ、後継者が従業員や取引先から認められやすいという点です。一方で、相続税・贈与税などの負担が大きく、後継者として育てた候補者候補が必ずしも事業承継を快諾する保証がないという点がデメリットとして挙げられます。
参照元:
全国企業後継者不在率 動向調査(帝国データバンク)近年では、社内の優秀な人材の内部昇格やM&Aによる事業譲渡など、親族外の事業承継も増えています。帝国データバンク「全国企業 後継者不在率動向調査(2023年)」によると、後継者候補として最も多いのは「内部昇格」でした。すなわち、血縁関係によらない役員・社員を登用する方法です。親族外へ承継する場合、経営だけを継いでもらうパターンと、自社株式も含めて完全に企業を引き継がせるパターンがあります。内部昇格では経営判断に優れた人材選定が容易ですが、会社を譲受する後継者には自社株式を丸ごと買収してもらうだけの経済力が求められるため、かなり負担が大きく厳しい条件となります。したがって、M&Aを選択して金融機関・投資ファンドからの融資・支援を行う、特別目的会社(SPC)を設立するといった方法で資金調達を行い、経営権を買収させるといった手段を講じることも珍しくありません。
後継者人材バンクを活用する方法もあります。事業承継を円滑にサポートする公的制度で、全国都道府県に設置されている「事業引き継ぎ支援センター」が運営しています。後継者が欲しい企業と、後継者候補となる人材をマッチングさせる仕組みになっており、起業家や起業家志望の方が人材バンクに登録しています。利用者(事業者)は、申込書に「希望する人材」を記載します。登録された人材の中から候補者を選定し、お互いの条件が合致した場合、具体的な事業承継の手続きに進む流れになっています。国が運営しているので信頼性がある一方、その存在を知らない事業者が多いため、後継者人材バンクに登録されている案件も少なく、最適なマッチングが実現しにくいデメリットもあります。
近年では、後継者問題を専門家のサポートによって解決する「M&A」の手法が積極的に用いられています。M&Aとは、企業の合併・買収の総称です。複数のビジネスを1つに統合する手段であり、「後継者問題」を売り手・買い手の両方に利がある形で完遂させる方法として、M&Aを採用する経営者も増えています。
<事業承継系M&Aの推移>
(注)公開情報から収集した「売り手の経営者や個人株主が株式の大半あるいは一定規模を売却した案件
(オーナー系企業売却案件)」を事業承継M&Aと定義。 (出所)(株)レコフデータ
M&Aの専門家としてあげられるのはM&A専門会社や、事業承継を扱う金融機関・弁護士・税理士です。信頼性の高い情報を有しており、買収意欲の高い企業とのコネクションがあるケースも多いため、事業承継の相談相手として最適でしょう。M&Aで引き継ぎを行う際には株式譲渡・事業譲渡を選べますが、いずれにしてもM&Aを採用する目的と事業譲渡の方向性を定めたうえで、M&Aの専門家へ相談することからスタートします。 買い手はデューデリジェンスを実施して売却企業のリスク調査を行い、双方合意の上で最終契約が締結されます。
親族・社内共に経営を任せられる者が見つからなかった建築会社が、M&Aの株式譲渡によって後継者問題を解決したという事例もあります。買い手企業はもともと人材不足で悩んでおり、売り手企業に在籍している職員の技術力に魅力を感じて取引に応じました。買い手は人材不足解消と事業拡大を図れますし、売り手の経営者側は売却益を得たうえで後継者問題を解決できます。このように、取引を成功させれば売り手・買い手の双方が利を得る構造になるのがM&Aのメリットです。
日本企業の後継者問題は年々増加している一方で、「後継者候補の選定方法が分からない」あるいは「問題解決に時間を割く余裕がない」と頭を抱える経営陣も多く、問題解決のために専門家の助力を欲する企業が多いというのが現状です。このようなニーズを受けて日本にも導入されたM&Aは、後継者問題への対策としてメジャーな方法になりつつあります。
M&Aでは、事業譲渡の専門家によるサポートを受けながら、売り手・買い手の双方が納得できる取引が可能です。M&Aの存在を視野に入れておけば、後継者不在に直面しても「何をしていいのか分からない」と立ち往生することはなくなるでしょう。企業の状況にもよりますが、M&Aは親族承継・親族外承継いずれの場合でも優秀な対策になり得ます。もし現時点で後継者不在にお悩みの場合は、M&Aを検討してみてはいかがでしょうか。
参照元:
M&Aの現状(経済産業省)レコフは創業1987年で、業界で最も歴史のあるM&Aサポート専門の企業です。
これまで、国内外における大小様々な規模の、
数多くのM&A、事業承継サポートを実行してきました。
日本の上場企業は3,500余社を数えますが、
創業以来その9割を超える企業と接触しており、
未上場企業を加えると、これまでに関わってきた企業は20,000社を超えます。
こうした実績と企業とのネットワークが新たなM&Aのマッチングにも活かされます。
30年以上の実績を持つレコフがM&A成功に導く最適な1社をご提案します。
監修者プロフィール
株式会社レコフ リサーチ部 部長
澤田 英之(さわだ ひでゆき)
金融機関系研究所等で調査業務に従事後、政府系金融機関の融資担当を経て2005年レコフ入社。各業界におけるM&A動向の調査やこれに基づくレポート執筆などを担当。平成19年度農林水産省補助事業、食品企業財務動向調査委員、平成19年度内閣府経済社会総合研究所M&A究会 小研究会委員。著書・論文は「食品企業 飛躍の鍵 -グローバル化への挑戦-」(共著、株式会社ぎょうせい、2012年)、「データから見るIN-OUTの動向 -M&Aを通じた企業のグローバル化対応-」(証券アナリストジャーナル 2013年4月号、公益社団法人 日本証券アナリスト協会)など。
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