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M&Aファイナンスとは?
基本的な概要と主な手法をチェック

M&A初級編

2024.05.29更新日:2024.05.29

経営戦略の1つとして位置づけられているM&Aを実施するためには、さまざまな費目の資金が必要となります。そこで重要なのが、資金調達の手段であるM&Aファイナンスです。

この記事では、

  • M&Aファイナンスとは
  • M&Aファイナンスにおける具体的な調達先
  • M&Aファイナンスの方法
  • M&Aファイナンスを行う流れ
  • M&Aファイナンスの相談はどこにすべきか

などについて解説いたします。この記事を読めば、M&Aにおける必要な資金調達の方法であるM&Aファイナンスの具体的な調達先や手法の種類、M&Aファイナンスを行う際に必要な手続きが分かります。同時に、各調達方法が持つメリットやデメリットもまとめています。将来的にM&Aで資金調達を検討している経営者の方は、ぜひご一読ください。

目次

M&Aファイナンスとは?

M&Aファイナンスとは、M&Aを行うのに必要な資金を調達する方法のことです。「買収ファイナンス」と呼ばれることもあります。そもそも「ファイナンス」という言葉には「資金調達」という意味があり、そこから転じてビジネスの場面では「資金・財源」という意味合いでも使われているのが特徴です。一言でM&Aファイナンスといっても、具体的な手法は様々で、手法によって担保にするものや調達上限が異なっています。

M&Aファイナンスは外部から資金を調達する方法であるため、自己資金だけでは買収するのが難しい大型M&A案件を成功させたい企業にとって頼もしい手段です。M&Aの買い手企業にとって、「高いシナジー効果が見込める」、「新事業参入の成功が期待できる」というM&A案件は、多少無理をしてでも成約させたいものです。そのようなときに、銀行や投資家から必要資金をサポートしてもらえるM&Aファイナンスは魅力的な手段だといえるでしょう。

M&Aファイナンスにおける具体的な調達先

M&Aファイナンスでは、投資家や銀行などを主な調達先とします。特に銀行は、M&Aの必要資金を融資してくれる頼もしい存在です。くわえて、銀行によってはM&Aアドバイザーや仲介会社と提携し、依頼すれば資金調達の専門家を派遣してくれるところもあります。

直接金融・間接金融の違い

M&Aファイナンスは、前述したとおりM&Aに必要なお金を銀行や投資家から調達することを指します。どこから資金を調達するかによって、「直接金融」と「間接金融」と呼び分けられます。

例えば「直接金融」は、株主や投資家から直接資金調達を行う方法を指し、「エクイティ・ファイナンス」と呼ばれるケースもあります。社債発行や株式発行などが主な方法で、株式発行によって調達を行う場合はさらに「株主割当」と「第三者割当」があります。前者は株式を既に保有している株主へ向け、さらなる出資を募集する方法です。対する後者は、株主を新たに増やしたうえで出資を募る方法となっています。

借り入れるのではなく出資を募る方式であるため、調達した資金は「資本(エクイティ)」となり返済の必要がありません。金融機関から資金調達を行うケースと比べると、リスクを軽減しやすいのが大きな魅力です。

対する「間接金融」では、銀行から借り入れを行って資金を調達します。銀行を通して間接的に預金者の資金が融資されるため、銀行借入と呼ばれることもあります。出資を募る直接金融とは異なり、あくまで預金者の資金を借り入れているのが特徴。したがって、融資を受けた企業には返済義務が生じます。また、自己資金が少なく強みや資産が見出しにくい中小企業だと審査が厳しくなり、融資を受けにくいというケースもあります。

M&Aファイナンス資金調達の方法

M&Aファイナンスの具体的な手法は、「コーポレート・ファイナンス」と「ノンリコース・ファイナンス」の2種類に分けられます。以下では、それぞれの手法が持つメリットやデメリットをまとめました。

コーポレート・ファイナンス

コーポレート・ファイナンスとは、企業が自社の信用力を担保に資金調達を行うことです。ここでいう信用力とは、いわゆる「企業価値」のことです。ブランド力とも言い替えられますが、定量的には「株式価値+負債価値」または「金融資産+事業価値」という算式で計算できます。

コーポレート・ファイナンスでは、担保にするものが自社またはスポンサーの企業価値です。したがって、ノンリコース・ファイナンスと比べると審査を通過しやすいですが、逆に言えば、企業価値以上の資金は調達できないというデメリットもあります。くわえて万が一借入金額の返済が不可能になった場合は、自社やスポンサーの持つ全ての資産が担保として扱われるという面もあるので要注意です。借入金を完済するまで、企業の全財産を取り上げられるという大きなリスクがあります。

ノンリコース・ファイナンス

ノンリコース・ファイナンスとは、企業が投資対象のブランド力を担保にして資金調達を行う手法です。つまりM&Aにおける買い手企業が、売り手企業(投資対象)の信用力・ブランド力を担保にして借入を行います。

リコースとは「遡及」、「遡ること」を意味する言葉であるため、ノンリコースでは基本的に借入を行った企業にまで返済義務が遡及されません。遡及されても、部分的・限定的に生じるケースが一般的です。ノンリコース・ファイナンスにおいて返済義務を背負うのは、あくまで担保にされた投資対象だけであるため、借入を行った企業自体の負担は比較的少なく済みます。

その代わり、借入を行う企業は、投資対象による厳しい審査を受ける必要があります。この審査を通過することはもちろんですが、無事に借入に至った後も気は抜けません。ノンリコース・ファイナンスは、投資対象の企業価値に強く依存する資金調達方法です。投資対象にとっては大きなリスクが伴うため、投資対象は買い手企業による資金運用が健全にされているか否かを厳しく監視する必要があるのです。借入を行う企業は、投資対象の信頼を裏切らないよう健全かつ慎重な資金運用をすることが求められます。

資金調達時のローン

直接金融と間接金融の例から分かるとおり、M&Aファイナンスの手法には返済義務の有無によって違いがあるのです。そのうち、返済義務のある間接金融では「シニア・ローン」と「メザニン・ローン」という2つの資金調達方法があります。

シニア・ローン

「シニア・ファイナンス」とも呼ばれる調達方法です。銀行をはじめとする金融機関から借入を行い、負債利子の支払い義務、元本の返済義務があります。シニア・ローンによって資金を調達し、その資金によってM&Aや投資が成功し利益が生まれれば、シニア・ローンを優先的に返済することが必要です。

また、シニア・ローンでは保証人や抵当権の設定などといった「担保」をつけるのが一般的。優先的に返済されるため貸し倒れになりにくく、貸し手からみれば担保による債務不履行のリカバリーも効くため、信用度が高いという面があります。そのため、審査をパスすれば低い金利で借入ができます。返済できる可能性が高く、借り手だけでなく貸し手にとってもローリスクな手段だといえます。

ただし、低金利である反面与信審査が厳しいのがシニア・ローンのデメリットです。ローリスクな手段ではありますが、そのかわり借り手にも一定水準以上の信用度が求められます。またほとんどのケースで担保設定をされてしまうため、借り手からみればその点がデメリットに感じる場合もあるでしょう。

メザニン・ローン

「メザニン・ファイナンス」とも呼ばれる調達方法で、直接金融と間接金融の中間に位置しています。つまり借入を行うシニア・ローンよりは返済の優先度が低く、返済義務のない株式(エクイティ)よりは返済優先度が高いという位置づけにあるのが特徴です。シニア・ローンで調達しきれなかった資金分を補填するために、このメザニン・ローンを活用するケースが一般的です。メザニン・ローンは、シニア・ローンに比べると審査が厳格ではありません。これは、返済の優先度の低さを補うために金利が高めに設定されているからです。そのため借り手からすれば融資を受けやすくなり、貸し手は返済が遅れても金利の高さである程度のリカバリーが効くというメリットがあります。

反面、金利が高いため返済期間が長ければ長くなるほど借り手の負担は大きくなります。貸し手からすると信用度の低いユーザーにも資金を融資することになるため、全額回収が難しくなるのがデメリットです。

金利設定と優先度に決定的な違いがある

シニア・ローンとメザニン・ローンの違いは、金利の高さと返済の優先度にあります。逆に言えば、問題なく返済できている間は両者に特別な違いはありません。メザニン・ローンはシニア・ローンよりも返済の優先度が低い分、貸し手からみれば不良債権になりやすく投資的な面を持つ融資方法だと考えると良いでしょう。

M&Aファイナンスを行う流れ

M&Aファイナンスは、どのような手続きが必要なのでしょうか。以下では、M&Aファイナンスでも一般的な形態であるシニア・ローンの手続きをまとめてご紹介します。

守秘義務契約の締結

シニア・ローンによる借入を行う場合は、金融機関と秘密保持契約を結ぶ必要があります。秘密保持契約には、金融機関による情報の悪用や情報漏えいリスクを防ぐ目的があります。

インディケーションレターを作成してもらう

インディケーションレターとは、金融機関に作成してもらう参考資料のこと。金融機関は借り手側からさまざまな資料を提供してもらい、それをもとに金利条件や融資金額を記載したインディケーションレターを作成します。インディケーションレターはあくまで参考資料の1つであるため、法的拘束力は持ちません。契約書や同意書としての役割は持たせられないため、注意しましょう。

コミットメントレターの取得

交渉条件がまとまったら、金融機関からコミットメントレターを作成してもらいます。コミットメントレターとは、合意した交渉条件を明記した契約書のこと。具体的にはローン契約の締結、融資条件などの情報が記載されています。また、コミットメントレターは融資に同意する意思表示を行う資料でもあります。

タームシートの合意

タームシートとは、金利条件や融資金額など融資に関連する条項を記載したものです。借り手と金融機関は、このタームシートをもとに最終的な合意に向けて交渉を進めます。先のインディケーションレターやコミットメントレターよりもさらに詳細な融資条件を明記する必要があり、また借り手と金融機関の両者が納得できるものを作成する必要があります。

ローン契約の締結

タームシートに記載された条件をもとに、ローン契約を締結します。これには資金使途や前提条件、制約事項など8つの条項を盛り込んだ契約書が必要です。ローン契約が締結されたら、資金が融資されます。

担保の設定・差し入れ

各種保有資産を、担保や保証として設定します。これは万が一債務不履行になった際に、金融機関に損失を出さないためです。

ローン返済開始

M&Aによる買収が成立したら、ローン返済がスタートします。このとき金融機関は、融資資金が買収に正しく使われたか、健全な運用方法のもとで使われたかを厳しくモニタリングするのが一般的です。借り手はローンを返済しながら、各種報告義務や書類提出の義務も果たし、信用に応える必要があります。

M&Aファイナンスの相談はどこにすべきか

M&Aファイナンスは、銀行から資金を融資してもらうケースが一般的です。したがって、契約や融資に関する相談先も銀行になります。また、資金のバックアップのほか、提携しているM&A仲介業者を紹介してもらえるなどのサポートを受けられる場合もあります。

ただし、銀行が必ずしも中立的な立場にあるとは限りません。銀行も営利団体であるため、自社の利益を優先してアクションすることは十分に考えられます。知らず知らずのうちに不利な条件に誘導されたり、借り手の利益よりも銀行とM&A仲介業者の利益が優先されたりすることもあるのです。

そうなれば、M&Aファイナンスで資金を融資してもらってもM&Aのマッチングがうまくいかなかったり、見込んでいたシナジー効果が得られなかったりします。できれば、銀行以外にも中立的な立場で助言をしてくれる相談先・担当者を見つけることが理想です。

36年以上の実績を持つ
M&A仲介業者・レコフの強み

株式会社レコフは、1987年の創業以来
さまざまなM&A案件の戦略実案、支援に携わってきたM&A助言会社です。
中小企業のM&Aだけでなく、
上場企業同士の大型M&A案件にも数多く携わってきました。
非上場・上場企業を含め、
これまで接触してきた企業は20,000社を超えます。
そのなかで培った実績と経験をもとに、
利害関係のない中立的な立場からサポートを実施いたします。

案件ごとに法務や財務、
会計など各分野の専門家を交えたチームを編成し、
M&A案件を成約へ導きます。
M&Aの助言、サポートをご希望の方は、一度レコフへご相談ください。
詳しくはこちらのレコフの強みでご覧いただけます。

監修者プロフィール

株式会社レコフ リサーチ部 部長

澤田 英之(さわだ ひでゆき)

金融機関系研究所等で調査業務に従事後、政府系金融機関の融資担当を経て2005年レコフ入社。各業界におけるM&A動向の調査やこれに基づくレポート執筆などを担当。平成19年度農林水産省補助事業、食品企業財務動向調査委員、平成19年度内閣府経済社会総合研究所M&A究会 小研究会委員。著書・論文は「食品企業 飛躍の鍵 -グローバル化への挑戦-」(共著、株式会社ぎょうせい、2012年)、「データから見るIN-OUTの動向 -M&Aを通じた企業のグローバル化対応-」(証券アナリストジャーナル 2013年4月号、公益社団法人 日本証券アナリスト協会)など。

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    創業1987年の老舗

    レコフは日本にM&Aという言葉が広まる前から創業している歴史あるM&A助言会社で、豊富な実績がございます。

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