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成長戦略のフレームワークとは?分かりやすく解説

M&A初級編

2024.08.09更新日:2024.08.09

ビジネスは収益を得ればよいというものではなく、不慮の事態が発生した場合にも事業が存続できるようにしなければなりません。もしトラブルで事業が滞ってしまったら顧客や取引先に不信感を与え、企業の存続も危ぶまれてくるからです。だからこそ、企業は継続的に成長戦略を策定・実行する必要があります。

どんな企業も成長する可能性を秘めていますが、ゼロから成長戦略を練るのは時間も労力もかかります。「フレームワーク」と呼ばれる思考や理論のテンプレートは、成長戦略を正確かつ素早く決定するためのサポート役として必要不可欠です。

この記事では、

  • 企業のライフサイクル
  • 成長戦略のフレームワーク
  • 成長戦略の手法

などについて解説します。この記事を読めば、企業戦略の概要や成長戦略のフレームワークとその活かし方について把握できます。成長戦略を立案中の方、成長戦略のフレームワークについて知りたいという方は、ぜひご一読ください。

目次

成長戦略とは?

「成長戦略」とは、企業の業績アップを目指して市場開拓や製品・サービス開発の方法を模索し、企業の経営方針を支える重要な戦略です。いわば、企業がこれから「どのように変化していくか」の指針となる戦略といえるでしょう。

昨今ではモノがあふれ、顧客のニーズは数年足らずで様変わりし、競合他社との競争も激化の一途を辿っています。企業が事業を続けていくためには、市場の動向から事業機会を探り出し、経営資源を投入し、ビジネスモデルを模索するなどして企業の成長を確固たるものにする必要があります。あるいは、衰退している事業からの撤退を決断し、新たな事業に注力することも成長戦略の一環です。

「2023年「倒産企業の『平均寿命』調査」(東京商工リサーチ)」によると、2023年に倒産した企業の平均寿命は23.1年でした。同調査によると、老舗企業は金融機関や取引先との繋がりが深い一方で、「過去の成功体験に囚われてしまう」、「外部環境の変化への柔軟性が欠けている」といった課題を抱えていることも多く、業績悪化・倒産に至ってしまうケースが増えています。

老舗企業の3割以上が倒産を余儀なくされている現状は、変化の方向性を定める「成長戦略」が企業の継続にどれほど重要か推し量れるデータといえそうです。

出典:東京商工リサーチ 2023年 倒産企業の「平均寿命」調査

企業のライフサイクル

企業は永遠に続くわけではなく、事業は時代やニーズに合わせて変化させる必要があります。2023年時点で平均寿命が30年に満たないことから、企業はしばしば生き物に例えられます。「企業のライフサイクル」は、創業から衰退に至る周期を表現した概念であり、それぞれのフェーズでどのような対策を講じるべきかの指標となります。企業のライフサイクルは、下記のように4つに分けられています。

  • 創業期:起業・創業
  • 成長期:新規事業展開
  • 成熟期:承継・M&A
  • 衰退期:事業徹底・改革

創業して間もない「創業期」から、商品・サービスの認知が進んで売上・利益が最も増える「成長期」を迎え、やがて売上・利益が安定する「成熟期」に至ります。成熟期に入った事業は売上が伸びにくく、事業からの撤退も視野に入ってくる頃合いであるため、この間に新たな「成長期」を創り出すのが理想です。しかし、売上・利益の低下に歯止めをかけられず、市場開拓もままならないまま「衰退期」を迎える企業も少なくありません。

企業の成長で特に重要視されるのは、「成長期」と「成熟期」です。売上が順調に伸びていく「成長期」のうちにどれくらいシェアを拡大し、管理体制を盤石にできるかが成熟期の成果に関わってきます。また、「成熟期」に売上・既存顧客の維持や新規事業の開拓、事業継承の手回しが足りなければ、一気に「衰退期」へ突入してしまいます。

「成長期」と「成熟期」のこの時期の経営方針を決めるのが、成長戦略なのです。成長戦略を的確に設定するためには、自社が現在どのような状況にあり、どのフェーズに位置しているのかを正確に把握したうえで、対策を講じる必要があります。しかし、内部の人間が社内の状況を俯瞰するのは困難であるため、外部の中小企業診断士や経営コンサルタントに依頼したり、フレームワークに当てはめたりして、定期的に自社の状況を把握しておくことが大切です。

フレームワークとは?

これまでの成功体験や経営者の直感は、時に経営の助けとなることもあります。しかし、それだけでは自社の強みや弱みを取り違えたり、重要な課題を見落としてしまったりする事態になりかねません。物事を正確かつ迅速に把握するためには、「フレームワーク」と呼ばれる思考の型を利用するのが効果的です。

フレームワーク(framework)はもともと「枠組み」や「骨格」を指す言葉であり、概念・思考法・法則などが体系的にまとめられたテンプレートのことを指します。分析・業務改善・問題解決・意思決定の思考法が体系的にまとまっているため、目的に応じたフレームワークに思考を当てはめていくことで、効率よく問題と向き合い、解決策を考えることができます。また、フレームワークを利用すると情報がシンプルにまとまるため、他人に情報や思考を共有するツールとしても有効です。

成長戦略に使えるフレームワーク

内部環境・外部環境を把握し、事業領域を定めた後に成長戦略を立案するのが、経営戦略の主な流れとなります。事業の成長戦略や施策を考えるのに便利なフレームワークは多数ありますが、ここでは、フレームワークの中でも代表的な「SWOT分析」と「アンゾフの成長マトリクス」を紹介します。「SWOT分析」は自社が置かれている環境を分析するためのフレームワークで、「アンゾフの成長マトリクス」は成長戦略を練るために使うフレームワークです。

SWOT分析

SWOT(スウォット)分析とは、市場や競合他社などの「外部環境」と、自社が持つブランドや経営資源などの「内部環境」をプラス要因・マイナス要因、内部要因・外部要因に分けることで、今後の成長戦略や経営資源の管理・最適化といった意志決定に活かすためのフレームワークです。

SWOTは、フレームワークの軸となる4つのカテゴリーの頭文字です。SWOT分析では、強み・弱みは内的要因、機会・脅威は外的要因であると仮定されます。

  • Strength(強み:自社の強み)… 目標達成のプラス要因となる組織・個人の特性
  • Weakness(弱み:自社の弱み)… 目標達成のマイナス要因となる組織・個人の特性
  • Opportunity(機会:自社のビジネスチャンスとなる環境・市場)… 目標達成のプラス要因となる外部の特性
  • Threat(脅威:自社サービスの脅威となるサービス・企業)… 目標達成のマイナス要因となる外部の特性

4つのカテゴリーがあり、それぞれ内部要因・外部要因を固定して分析していきますが、政治や法例、競合他社のアクション、経済状況といった外部の特性が内部要因に影響を与えることは珍しくないので、先に機会・脅威などの外部要因から埋めるのがよいでしょう。

SWOT分析は、例えば新たな事業を始めるときに、成長戦略を考えるうえで、自社の強みを明らかにしたり、反対に弱みを補うための方策を考えたりする際に用いられます。

<SWOT分析>

また、強み・弱み、機会・脅威を軸としてマトリックスを作る「クロスSWOT分析」というフレームワークも存在します。

<クロスSWOT分析>

SWOT分析だけで戦略策定をするのは難しいですが、フレームワークをさらに掘り下げて分析を行うことで環境要因を多角的に捉えることができま す。

アンゾフの成長マトリクス

経済学者イゴール・アンゾフが著書『企業戦略論』で提言した「アンゾフの成長マトリクス」と呼ばれるフレームワークです。 こちらについては下記のコラムで詳しく解説しておりますので、併せてご覧ください。

成長戦略のフレームワーク「アンゾフの成長マトリクス」とは?成功事例に学ぶ

成長戦略の手段

フレームワークはあくまでも、成長戦略の合理性を確認したり、分析したり、新たな視点からビジネスを見るためのツールに過ぎません。成長戦略が固 まったら、次は実行する必要があります。代表的な手段としては、事業再生のためにキャッシュフローを改善する施策「リストラクチャリング」が挙げられ ます。

日本では「リストラ」という略称で人員整理・クビ切りなどネガティブなイメージが先行しがちな言葉ですが、本来のリストラクチャリングは、事業の構造 改革のことを指します。撤退・事業縮小といったダウンサイジングに留まらず、事業の再構築・成長部門への経営資源集中も含んでいます。
Restructuring という単語には「作り直す」という意味があり、欧米では事業の構造改革という意味で用いられるのが一般的です。「人員整理」もリ ストラクチャリングの一部ですが、日本のように人員整理がメインとなるリストラクチャリングはほとんどありません。事業の再構築を実行するかどうかは、 現金が十分に増えるかどうか(キャッシュフローの最大化)が判断基準となります。現金はスピーディーな経営判断・事業展開に必須の経営資産で あり、現金が足りないと成長戦略を想定通りに進めることができなくなる可能性が高まるからです。

リストラクチャリングとしてのM&A

不採算事業からの撤退や新規事業への参入などを目的に、成長戦略の一環としてM&A が利用されることもあります。一般的に企業の買収・合併を指すM&Aは、取引内容によりますが、売り手にとっても買い手にとっても成長戦略として申し分ない手法といえます。

売り手にとっては衰退部門の売却によって経営資源の有効活用が可能になり、多額の資金を手に入れられます。リストラクチャリングの目的が、現金 を増やす「キャッシュフローの最大化」であることを考えると一考の余地があるでしょう。

買い手にとっては成長戦略に欠かせない機能・技術という外的資源を獲得してさらなる発展を目指せます。また、ゼロから事業を立ち上げるよりも、 既存企業から技術や販路を譲り受けたほうが成功の確率が上がるという利点があります。

フレームワークを活用してフェーズに応じた成長戦略を練る

成長戦略といっても、事業がライフサイクルのどこに位置するかによって戦略は変わります。経済評論家が「売上増は七難隠す」という言葉を残しているように、成長期に突入して売上・利益がどんどん上がっているときには、事業に課題があっても大した問題には感じられません。売上が伸び続ければ、利益は後からついてくるからです。

しかし、市場が成熟してモノが売れにくくなる「成熟期」に突入し、売上を維持できなくなってくると、これまで隠れていたさまざまな課題やリスクが浮き彫りになります。特に、「成熟期」が目前にある企業は、新規事業への参入や事業継承を視野に入れた成長戦略を立てる必要があるでしょう。成長戦略を効率よく組み立てるのに一役買ってくれるのが、「アンゾフの成長マトリクス」に代表されるフレームワークです。ただし、フレームワークは視野を広げたり思考を整理したりするツールに過ぎません。経営の柱となる成長戦略を滞りなく進めるには、フレームワークで得た分析結果を評価し、実行計画を練るという作業が待っています。

レコフでは中小企業・大企業を問わず
M&Aによる成長戦略をサポート

レコフは1987年の創業以来、M&Aの助言役として多くの案件に関わり、
案件を通して20,000社以上の企業とネットワークを構築してきました。
中小企業同士のM&Aはもちろんのこと、上場企業同士のM&Aを通した
事業再生など大企業ならではの複雑な案件成就のサポートも経験しています。
また、レコフでは業界ごとに精通した担当者を設けることで
M&Aの成功に至るフォローを可能にしています。
成長戦略を模索されている、あるいは、
事業改革でM&Aを検討されている企業経営者やご担当者の方は、
ぜひ一度レコフへご相談ください。
詳しくはこちらのレコフの強みでご覧いただけます。

監修者プロフィール

株式会社レコフ リサーチ部 部長

澤田 英之(さわだ ひでゆき)

金融機関系研究所等で調査業務に従事後、政府系金融機関の融資担当を経て2005年レコフ入社。各業界におけるM&A動向の調査やこれに基づくレポート執筆などを担当。平成19年度農林水産省補助事業、食品企業財務動向調査委員、平成19年度内閣府経済社会総合研究所M&A究会 小研究会委員。著書・論文は「食品企業 飛躍の鍵 -グローバル化への挑戦-」(共著、株式会社ぎょうせい、2012年)、「データから見るIN-OUTの動向 -M&Aを通じた企業のグローバル化対応-」(証券アナリストジャーナル 2013年4月号、公益社団法人 日本証券アナリスト協会)など。

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