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M&Aにおける銀行の役割

M&A初級編

2024.08.14更新日:2024.08.14

買い手であれ売り手であれ、M&Aを実行するには各種手続きや専門家への報酬といった経費が発生します。M&Aで資金調達を行う方法は多岐に渡りますが、もっとも身近な方法は、銀行から融資を受けることでしょう。

近年では金融庁の働きかけにより金融機関の業務範囲が広がり、金融機関でもM&Aアドバイザリー業務を担いやすくなりました。メガバンク・地方銀行を問わずM&A支援サービスを提供する金融機関が増え、今や銀行では融資を受けるだけではなく、アドバイザリー契約まで依頼できるのです。

この記事では、

  • 銀行が提供するM&A支援サービスの内容
  • 銀行からM&Aの融資を受けるコツ
  • 銀行とアドバイザリー契約を結ぶうえでの注意点

などについて解説します。銀行は経営を支えるのに不可欠な存在であり、M&Aにおいても心強い存在となります。M&Aを検討されていて、M&Aのための融資をお考えの企業経営者の方は、ご参考のために、ぜひご一読ください。

目次

M&Aにおいて銀行はどのような役割を担っているのか?

企業を存続させるためには、次世代へと経営を引き継いでいかなくてはなりません。特に中小企業では後継者不足を解消するため、第三者へ事業承継をするために「M&A」が選ばれることも増えてきました。M&Aは幅広い専門知識を要するため、公認会計士や税理士、M&A仲介会社、アドバイザーといった専門家に助力を求めることになりますが、その中には「銀行」も含まれています。

銀行のメイン業務は「融資」ですが、金融庁によって業務範囲の規制緩和が行われ、M&A仲介会社の紹介やM&Aアドバイザリー業務といった支援サポートを提供しやすくなりました。そのため、全国規模のメガバンクはもちろん、地方銀行でもアドバイザリー業務を提供している銀行が増えています。

事業承継などで会社の「売り手」となる場合、ほとんどの経営者にとっては初めてのM&Aとなります。分からないことだらけで不安な中、身近なメインバンクで事業承継の相談ができるのは安心だと感じる企業経営者の方も多いでしょう。

資金調達先としての銀行

銀行の主な業務は融資であり、M&Aにおいては資金調達先として融資を行います。融資を必要とするのは買収資金を必要とする買い手企業がメインです。売り手企業も、M&Aの専門家へ依頼する資金が必要となるので、状況によっては銀行からM&Aのための資金調達を行う機会があるかもしれません。

銀行の融資方法

M&Aのために銀行から融資を受けようとする場合、2種類の融資方法があります。「プロパー融資」と「保証協会融資」です。

  • プロパー融資:協会保証を通さず、銀行から直接受ける融資
  • 保証協会融資:返済できなくなったとき、銀行の債権が信用保証協会に移り代わりに返済される融資

銀行にとっては融資のリスクが低い方法であるため、基本的には保証協会融資になります。保証協会融資は、信用保証協会の審査も行われるため融資までに時間がかかる点に注意が必要です。保証協会融資の上限はやや低めですが、プロパー融資と併用することで融資枠を広げることができます。

格付の仕組み

銀行からの融資が通るかどうかは「格付」で決まります。銀行は融資した金額はしっかり回収したいと考えています。そこで、債務者に返済能力がどれくらいあるのか評価して格付を行い、融資をするかどうか、金利をどれくらいに設定するかを決めるのです。

企業から融資の申し込みがあった場合、銀行は決算書の内容をもとに格付を行います。格付が良ければ融資も通りやすく、金利も低くなります。格付の結果は「債権者区分」に反映され、融資をしても問題ないか、将来に業績が不安定になる可能性がないか判断します。

<債権者区分>

債権者区分詳細
正常先
  • 業況が良好であり、財務内容にも問題がない債務者
要注意先
  • 金利減免・棚上げを行っているなど貸出条件に問題のある債務者
  • 履行状況に問題がある債務者(元本返済・利息支払いを延滞しているなど)
  • 業況が低調・不安定な債務者
  • 財務内容に問題がある債務者

※要注意先となる債務者については「要管理先」とそれ以外に分けて管理することが望ましい。

破綻懸念先
  • 経営難の状態で、経営破綻に陥る可能性が大きい債務者

債権者区分は金融機関によって異なります。ここではざっくりと3つに分けていますが、債権者区分は上記の項目が細分化され10~12段階まであります。今まで付き合いのなかった銀行から融資を受けるためには、「正常先」とみなしてもらわなければなりません。

銀行から融資を受けるコツ

資金調達のために銀行から融資を受ける際には、いくつかコツがあります。前提として、既存顧客であれば融資が通る可能性が高くなります。銀行側は過去の融資状況をすでに把握していますし、財務内容を判断するための決算書などの情報も手元に揃っているため、不安材料が少ないからです。

事業計画書・資金繰り表の提出

M&Aの融資を受けるためには、事業計画書や資金繰り表を用意する必要があります。M&Aを目的とした融資を通してもらうためには、「買収後はどのように事業を進めていくのか」、「その間の資金繰りはどうするのか」などを銀行側に示すことが必須になります。

銀行は金融庁から「事業者の実情に応じた資金繰り支援」を行うように伝えられています。そのため、企業へ融資する際、銀行側はこのM&Aが無理ではないか、シナジー効果が期待できるのかをきちんと確認します。決算書は次のような項目をチェックされます。以下で紹介している項目はほんの一部ですが、これらの総合点の大きさに比例して評価が決まります。

<決算書の評価対象になる項目の例>

項目評価内容
安全性の指標 自己資本比率、ギアリング比率、固定長期適合率、流動比率など
収益性の指標 売上高経常利益率、総資本利益率(ROA)、自己資本利益率(ROE)、総資本回転率など
生産性の指標 労働生産性など
成長性の指標 売上高伸び率、売上高研究開発費率など
健全性の指標 EBITDA有利子負債倍率など

資金繰り表は必須書類ではないものの、提出しておくと審査が有利に働きます。人にお金を貸すとき、「何に使うのか」と「本当に返せるのか」を聞きたくなるものですが、それは銀行も同じです。資金繰り表は、「本当に返せるのか」の合理的な説明となります。

複数の銀行から融資の見積もりを取る

融資先を1行に絞るのではなく、複数の銀行から融資の見積もりを取ることも大切です。特定の銀行と膝を詰めて相談した方が融資を受けやすいという側面もありますが、融資が受けられるかどうかは、担当者がM&Aに明るい人物か、融資に対して積極的か、あるいは銀行側が融資実績を増やしたいと考えているかにも左右されます。

また、少額であっても他の銀行から融資が受けられた場合には競争が発生し、他の銀行も貸してくれる可能性があります。例え融資を断れてもスムーズに次の融資を受けられるため、リスクヘッジとして相見積もりを取っておくとよいでしょう。銀行と既に信頼関係を築いていて、メインバンクが自社の状況を把握している状態であれば、相見積もりをするよりもメインバンクに依頼してしまった方が良いケースもあります。

銀行にM&Aアドバイザリーを依頼するメリット

普段から付き合いのある銀行に限定されますが、銀行側が自社の経営状況を把握しているため融資が通りやすく、相談もスムーズに進むというメリットがあります。普段からメインバンクに会社の悩みや個人の資金計画について相談している関係であれば、M&Aを検討する際にも気軽に相談できるでしょう。弁護士や税理士と提携しているため、M&Aの相談料・着手手数料を取っていない銀行が多いのもメリットといえるでしょう。

融資を行っている銀行は様々な企業と取引があるため、取引先の企業情報を保有しており、膨大なデータベースの中から条件に合った取引先を選んでくれる可能性があります。また、M&Aを専門に扱う部署を設けている銀行もあるため、M&Aの相談先として銀行を選ぶ価値はあります。

メリットやリスクを考慮して相談先を選ぼう

M&Aは「小規模」と称されているものでさえ数千万円以上の資金が動く大掛かりな取引です。銀行では融資のほかにもM&A支援事業を手掛けており、近年ではM&Aの専門部署を設ける金融機関も増えているため、銀行を相談先として選ぶのも1つの案です。

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監修者プロフィール

株式会社レコフ リサーチ部 部長

澤田 英之(さわだ ひでゆき)

金融機関系研究所等で調査業務に従事後、政府系金融機関の融資担当を経て2005年レコフ入社。各業界におけるM&A動向の調査やこれに基づくレポート執筆などを担当。平成19年度農林水産省補助事業、食品企業財務動向調査委員、平成19年度内閣府経済社会総合研究所M&A究会 小研究会委員。著書・論文は「食品企業 飛躍の鍵 -グローバル化への挑戦-」(共著、株式会社ぎょうせい、2012年)、「データから見るIN-OUTの動向 -M&Aを通じた企業のグローバル化対応-」(証券アナリストジャーナル 2013年4月号、公益社団法人 日本証券アナリスト協会)など。

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