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業界別M&A
近年、医療法人や病院のM&Aは増加傾向にあり、病院・医療業界におけるM&Aが注目されています。病院M&Aを検討していて、どのようなスキームで実行すると良いか、メリット・デメリットはあるかが気になる方は多いでしょう。
病院・医療業界のM&Aには特徴があり、M&Aを進める際はポイントを押さえることが大切です。
今回は病院・医療業界におけるM&Aの特徴から、M&Aが注目される理由や主なスキーム、立場別でのメリット・デメリットとポイントまでを徹底解説します。
基本合意まで無料
事業承継・譲渡売却は
病院・医療業界とは、病院や診療所、医療法人などの医療機関・組織で構成されている業界です。けがや病気の診察・治療、入院医療など、病院・医療業界は医療制度の根幹となる医療サービスを提供しています。
日本において「病院」とは、医療法に基づき、20床以上の病床を備えた医療機関を指します。これに対し、無床または19床以下の医療機関は「診療所(クリニック・医院)」に分類されます。
病院は入院機能を備え、手術や長期療養などにも対応できる比較的大規模な医療機関であるのに対し、診療所は外来診療を中心とした地域密着型の医療機関という位置づけです。
また、病院は救急医療や専門医療など高度な医療サービスを担うケースも多く、地域の中核医療機関としての役割を果たしています。
一方で、診療所は日常的な診察や健康管理を担う「かかりつけ医」として機能しており、症状に応じて病院へ紹介するなど、相互に連携しながら地域医療を支えています。
このように病院・医療業界は、病院・診療所・医療法人などの多様な医療機関によって構成されており、それぞれが役割分担を行いながら地域住民に対して継続的な医療サービスを提供しています。
病院・医療業界は、開設主体や運営目的、参入条件などの面で、一般的な民間企業とは異なる特徴をもっています。ここでは、病院・医療業界の代表的な特徴について解説します。
●開設主体の違いと民間医療機関の役割
病院の開設主体には、国や地方自治体が運営する公的医療機関のほか、医療法人や学校法人などの民間組織があります。日本では、医療法人が開設する病院や診療所の割合が高く、民間医療機関が地域医療を支える中心的な役割を担っています。
特に診療所の多くは医療法人や個人によって運営されており、地域住民にとって身近な医療提供の場となっています。
●営利を主目的としない運営体制
医療機関は公共性の高いサービスを提供するため、一般企業のように利益の最大化を主目的とした運営は認められていません。特に医療法人は非営利法人として位置づけられており、株式会社のように利益を出資者へ配当することはできない仕組みとなっています。
医療機関で得られた収益は、医療機器の導入や施設の整備、人材確保など、医療体制の充実に充てることが求められます。
●参入のハードルが高い業界構造
病院を開設するためには、医療法をはじめとする各種法令の基準を満たす必要があります。例えば、病床数や設備基準、医師・看護師などの人員配置基準などが細かく定められており、これらを満たさなければ開設は認められません。
さらに、医療機器の導入や施設整備には多額の資金が必要となるほか、医療従事者の確保にも時間とコストがかかります。こうした制度面・資金面の制約から、新たに病院を開設するハードルは高く、参入障壁の高い業界となっています。
病院・医療業界では、医療需要が存在し続けている一方で、病院数は減少傾向にあります。
厚生労働省が公表した調査によると、2002年には9,000施設以上あった全国の病院数は、2024年には8,060施設まで減少しました。
開設主体別に見ると、医療法人が運営する病院は5,658施設から5,626施設へと32施設減少しており、減少率は約0.6%にとどまっています。一方で、個人が運営する病院は107施設から92施設へと15施設減少し、減少率は約14.0%と大幅な減少が見られます。
(出典:厚生労働省「令和6(2024)年医療施設(動態)調査・病院報告の概況|医療施設調査」/
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/24/dl/02sisetu06.pdf)
このように、近年の日本は病院数全体が減少しており、その中でも特に個人経営の病院の減少が顕著です。背景には、後継者不足や経営負担の増加などがあると考えられ、病院・医療業界が厳しい経営環境に直面している状況がうかがえます。

病院・医療業界、特に中小規模の民間病院では、経営環境の変化に伴い複雑な課題に直面しています。
ここでは、病院・医療業界が抱える代表的な課題として「後継者問題」「人材不足」「収益環境の悪化」の3つを紹介します。
病院では、院長が経営者を兼ねているケースが多く、院長の高齢化に伴って後継者問題が深刻化しています。特に中小規模の民間病院では、子どもが医師ではない場合や、医師であっても病院の経営を引き継ぐ意思がない場合など、後継者が決まらないケースが少なくありません。
後継者が不在のまま院長が引退を迎えると、廃院を選択せざるを得ない可能性もあります。病院の閉鎖は経営者個人の問題にとどまらず、地域住民が医療サービスを受けられなくなるおそれもあるため、地域医療の継続という観点からも重要な課題となっています。
日本では高齢化の進行により医療需要が増加しており、今後もその傾向は続くと見込まれています。特に、第2次ベビーブーム期に生まれた団塊ジュニア世代が高齢期を迎える2040年以降は、医療・介護サービスの需要がさらに拡大すると予測されています。
一方で、少子化の影響により生産年齢人口は減少しており、医師や看護師などの医療従事者の確保は年々難しくなっています。医療需要が増加しているにもかかわらず、サービスを支える人材が不足しているため、多くの医療機関が人材確保に課題を抱えている状況です。
人材不足が深刻化すると、十分な診療体制を維持できなくなる可能性があるほか、人材確保のための人件費の増加によって経営負担も大きくなります。
特に中小規模の病院では、大規模病院と比較して採用面で不利になりやすく、単独で安定した人材体制を維持することが難しい点も課題となっています。
日本の医療機関の収益は、公的医療保険制度に基づく診療報酬に大きく依存しています。そのため、診療報酬の改定は病院経営に直接的な影響を与える要因の1つです。
診療報酬は定期的に見直しが行われており、引き下げや実質的なマイナス改定となる場合もあります。また、薬価の引き下げなどの医療費抑制政策も、病院の収益を圧迫する要因となっています。
このように、制度改定の影響を受けやすい収益構造であることから、安定した経営を維持するためには、経営基盤の強化や運営体制の見直しが重要となっているのが現状です。

病院・医療業界が抱える課題は、M&Aで解決できる可能性があります。実際に、事業の継承や経営安定化などを目的として、M&Aを検討する病院・医療法人は増えています。
ここからは、病院・医療業界におけるM&Aの特徴と動向について詳しく解説します。
帝国データバンクの調査によると、2025年における医療業の後継者不在率は59.0%であり、後継者がいない医療機関は全国的に多い状況です。
(出典:帝国データバンク「全国「後継者不在率」動向調査(2025 年)」/
https://www.tdb.co.jp/resource/files/assets/d4b8e8ee91d1489c9a2abd23a4bb5219/a3db12c6a6e24859abce902a821ddf1f/20251121_%E5%85%A8%E5%9B%BD%E4%BC%81%E6%A5%AD%E3%80%8C%E5%BE%8C%E7%B6%99%E8%80%85%E4%B8%8D%E5%9C%A8%E7%8E%87%E3%80%8D%E5%8B%95%E5%90%91%E8%AA%BF%E6%9F%BB%EF%BC%882025%E5%B9%B4%EF%BC%89.pdf)
病院や診療所は、後継者の医師が医業を継承してくれなければ廃業の可能性が高まります。医療機関が廃業すると、地域の医療基盤が弱くなり、満足な医療提供ができなくなるケースもあるでしょう。
医業を継承・存続させるための手法として、病院・医療業界では事業譲渡ができるM&Aが注目されています。
病院・医療業界では、政府が進める医療費抑制政策によって経営難に直面する病院や診療所が少なくありません。医療費は病院の収入源であり、抑制されると病院の収入が減るためです。
また、医療は年々進歩していて、新たなシステム・機器などに対応するための設備費が発生します。医師・看護師に代表される人件費や設備維持費もかかり、病院経営は支出が多い事業です。
病院経営の安定化を図るために、経営基盤の強化ができるM&Aを検討する病院は増えています。
厚生労働省は「地域医療構想」という制度のもとに、病床を高度急性期・急性期・回復期・慢性期の4機能に分化・連携を進める方針を取っています。
(出典:厚生労働省「地域医療構想」/
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000080850.html)
地域医療構想の実現には、地方の病院や診療所の協力が欠かせません。病床機能の分化・連携ができるよう、各医療機関は機能の差別化や、医療提供体制の再構築が求められています。
病院・医療業界のM&Aは0、医療法人や病院の組織再編を通じて病床機能の見直しができる方法です。病床機能を地域医療構想に沿わせると、地域の医療需要を満たせるようになり、経営安定化にもつながります。

M&Aにおける「スキーム」とは、M&Aを実行するための枠組み、いわば取引の手法のことです。M&Aのスキームは譲渡側と譲受側の話し合い・交渉によって決定し、選択したスキームに沿ってM&Aを進めます。
病院・医療業界におけるM&Aには、主に3つのスキームがあります。
| 合併 | 2つ以上の法人格を1つに統合する |
|---|---|
| 事業譲渡 | 事業の一部もしくはすべてを他法人に譲渡する |
| 出資持分譲渡 | 譲渡議決を行使できる社員の地位を譲渡し、出資持分所有者を変更する |
合併と事業譲渡は、一般的な業界のM&Aにも存在するスキームです。
しかし、一般的な業界のM&Aに存在する株式移転・株式交換・株式譲渡といったスキームは、病院・医療業界のM&Aにはありません。日本では、医療機関の経営を株式会社が行うことは原則としてできないためです。
ただし、医療法人の中には、出資者の財産権が認められている「出資持分あり」の医療法人が存在します。出資持分ありの医療法人が選べるM&Aのスキームが、出資持分譲渡です。
以下では病院・医療業界のM&Aで選択できる3つのスキームを、より詳しく説明します。
「合併」によるM&Aは、2つ以上の法人格が合併契約を締結し、1つの法人格に統合するスキームです。存続させる医療法人以外の法人格は消滅することとなり、消滅する医療法人が保有していた病院機能や部門などは、存続させる医療法人に集約されます。
合併は、大きく分けて「新設合併」「吸収合併」の2パターンがあります。
新設合併とは、合併対象の法人格をいずれも消滅させて、新しく設立した医療法人に統合する手法です。合併前の法人名などはすべて消滅し、新しい医療法人としてスタートを切ります。
もう1つの吸収合併は、1つの医療法人が他法人格を吸収する形で合併を進めます。存続する医療法人は従来の法人名を使い続けることが可能です。
なお、病院・医療業界が合併によるM&Aを進める際は、事務所がある都道府県への事前相談・申請を行い、認可を受ける必要があります。
「事業譲渡」によるM&Aは、医療法人が営んでいる事業の一部もしくはすべてを他法人に譲渡し、事業の引き継ぎを図るスキームです。譲渡側は譲渡対価として金銭などを得て、譲受側は譲渡された事業を承継します。
事業譲渡は、譲渡側が個人経営の病院・診療所か、出資持分なしの医療法人であるかによって譲渡対価の払い方が異なる点が特徴です。
譲渡側が個人経営の病院・診療所である場合は、譲渡対価は経営者である院長がすべて受け取ります。
一方で出資持分なしの医療法人は、譲渡側の社員が出資持分を持っていないため、譲渡対価を直接受け取ることはできません。出資持分なしの医療法人で事業譲渡によるM&Aを進める場合は、「役員退職金の支払い」などの方法で譲渡対価の間接的な支払いを行います。
なお、事業譲渡では医療機関の許認可は引き継がれません。譲渡側は病院・診療所の廃止届を、譲受側は開設許可申請などの行政手続きを進める必要があります。
また、従業員との雇用契約も承継できないため、雇用契約を解除・退職の後に再雇用します。
「出資持分譲渡」によるM&Aは、出資持分ありの医療法人が事業譲渡を進める場合に選択できるスキームです。
出資持分ありの医療法人では、譲渡側である医療法人の理事長が社員の出資持分を買い取ってからでなければ、譲渡手続きが進められません。出資持分のすべてを買い取った後に、譲受側へと持分を譲渡し、さらに社員・役員を入れ替えることで譲渡が完了します。
出資持分譲渡は、医療法人の資産や契約をそのまま承継できる点が特徴です。廃止届や開設許可申請などの手続きが不要であり、事業譲渡よりも短い期間でM&Aを完結できます。
従業員との雇用契約についても、譲受側へとそのまま承継させることが可能です。
ただし、譲渡側が抱える負債や医療提訴などのリスクもそのまま承継されるため、譲受側はリスクとリターンを適切に把握する必要があります。

病院・医療業界におけるM&Aは、後継者不在や経営悪化に悩む医療機関にとって、有効な選択肢の1つです。単に事業を手放す手段というだけでなく、医療体制の維持や経営の安定化など、多くのメリットが期待できます。
ここからは、病院・医療業界のM&Aによって譲渡(売り手)側が得られる主なメリットを4つ解説します。
M&Aを活用することで、後継者がいない場合でも廃業を回避し、医療機関を存続させることが可能になります。
病院は地域住民の健康を支える重要なインフラであり、廃業すると地域医療に大きな影響を及ぼします。しかし、買い手へ経営を引き継ぐことで、診療体制を維持したまま事業承継を実現できます。
長年築いてきた医療サービスや患者さんとの信頼関係を将来に引き継げる点は、経営者にとって非常に大きなメリットと言えるでしょう。
M&Aによって事業が継続されることで、医師や看護師、事務職員などの従業員の雇用を維持できる点も重要なメリットです。
廃業を選択した場合、従業員は職を失うことになりますが、M&Aであれば雇用契約を引き継ぐ形で勤務を継続できるケースが一般的です。
雇用を守ることは従業員の生活を守るだけでなく、医療サービスの質の維持につながると言っても過言ではありません。
また、従業員にとっても安定した環境で働き続けられることは安心材料となり、円滑な事業承継の実現にも寄与します。
M&Aによって大規模な医療法人や医療グループの傘下に入ることで、経営基盤の強化や収益改善が期待できます。
例えば、医療機器の共同購入によるコスト削減や、人材採用の強化、運営ノウハウの共有などにより、単独では難しかった経営改善を実現できる可能性があります。
また、グループ内での役割分担や連携を通じて、診療体制の充実や患者数の増加につながるケースもあります。
経営の安定化は、医療サービスの質の向上や長期的な事業継続にもつながる重要なポイントです。
事業譲渡や出資持分譲渡などのスキームで病院を譲渡した場合、対価として売却益を得られる点もメリットの1つです。
長年にわたって経営してきた医療機関の価値が金銭として評価されるため、創業者利益を確保できます。獲得した売却益は引退後の生活資金として活用できるほか、新たな事業への投資などに充てることも可能です。
また、経営者にとっては、経済的なメリットを得ながら円滑に事業承継を実現できる点も、M&Aを選択する大きな理由の1つとなっています。
病院・医療業界のM&Aは多くのメリットがある一方で、譲渡を進める過程や譲渡後の運営において注意すべき点も存在します。特に、手続き面での負担や、譲渡後の運営体制の変化については事前に理解しておくことが重要です。
次に、病院・医療業界のM&Aによる譲渡(売り手)側の主なデメリットを解説します。
病院や医療法人のM&Aでは、一般企業と比較して多くの行政手続きや書類準備が必要となり、完了までに時間と労力がかかる傾向があります。
例えば、理事長変更に伴う登記申請や役員変更届の提出、保険医療機関に関する各種届出など、複数の行政機関への申請が必要です。また、譲受側との交渉に用いるために、自院の財務状況や診療内容などをまとめた資料の作成も求められます。
これらの対応には専門的な知識と準備期間が必要となるため、適宜専門家の力を借りながら計画的に進めることがおすすめです。
M&Aの成立後は、譲受側の経営方針に基づいて運営体制や組織体制が見直される可能性があります。
例えば、診療体制の変更や人事制度の見直し、業務フローの統一などが行われるケースもあります。こうした変化によって、従来の運営方針との違いに戸惑いが生じる場合もあるため、譲渡後の方向性について事前に十分な協議を行うことが重要です。
自院の理念や地域医療への方針を理解し、尊重してくれる譲渡先を選定することが、円滑な事業承継につながります。

病院・医療業界におけるM&Aは、譲受(買い手)側にとって事業基盤を強化し、効率的に経営を拡大できる有効な手段です。
ここでは、病院・医療業界のM&Aによって買い手となる企業が得られる主なメリットを3つ解説します。
M&Aにより既存の病院や医療法人を取得することで、診療エリアや病床数を拡大でき、事業規模の拡大が実現します。自院単独での成長と比べて短期間で規模を拡大できるため、地域医療における存在感の向上や、医療サービスの提供体制の強化にもつながります。
また、複数拠点での運営により経営の安定化を図れる点もメリットです。
M&Aで既存病院を買収することで、売り手となる病院が雇用していた医師・看護師などの人材に加え、医療機器や施設、既存の患者さんも引き継ぐことが可能です。
新規開業の場合は人材採用や設備投資に多くの時間と費用がかかりますが、M&Aであればこれらの経営資源を一括で確保できるため、コストを抑えながらスムーズに事業を開始・拡大できます。
医療業界では、地域医療計画に基づく基準病床数の制限により、新たな病院の開設が認められない場合があります。そのため、既存の病院をM&Aで取得することは、各種規制を回避して医療機関を運営する有効な方法です。
参入が難しい地域で医療サービスを展開したい場合には、大きなメリットとなります。
M&Aによって既存の病院や医療法人を承継できることは大きなメリットですが、譲受後の運営が必ずしも想定通りに進むとは限りません。
特に、現場の運営体制や設備状況は譲受前の想定と異なる場合もあり、経営面で新たな課題が生じる可能性があることに注意が必要です。
ここからは、病院・医療業界のM&Aを実施する際に買い手が把握しておきたい主なデメリットを解説します。
多くの病院は、地域の医療ニーズや患者層に合わせた方針で運営されています。そのため、譲受後に経営方針や診療体制を大きく変更すると、これまでの患者層と合わなくなり、患者数の減少につながる可能性があります。
また、職場環境や運営方針の変化に不安を感じた医師や看護師などが離職するケースもあり、人材確保の面で新たな課題が生じるおそれもあります。安定した運営を実現するには、既存の体制や地域特性を十分に理解したうえで、慎重に方針を検討することが重要です。
譲受する病院の建物や医療設備の状態によっては、修繕や改修、設備の更新が必要になる場合があります。特に、老朽化した施設や旧式の医療機器を使用している場合は、安全性や診療の質を維持するために追加投資が求められます。
当初は既存施設を活用することでコストを抑えられると見込んでいても、想定以上の費用が発生する可能性もあるため、事前に設備状況を十分に確認し、中長期的な視点で資金計画を立てておくことが重要です。

病院・医療業界のM&Aを成功させるには、実際の事例を参考にしながら、どのような目的で実施され、どのような効果をもたらしたのかを把握することが重要です。
ここでは、医療機関の再編や後継者問題の解決、経営資源の集中などを目的として実施された主なM&A事例を紹介します。
一般社団法人恵生会は、2026年1月1日付で医療法人恵生会の健診事業を事業譲渡により承継しました。
| 譲渡(売り手)側 | 医療法人恵生会 |
|---|---|
| 譲受(買い手)側 | 一般社団法人恵生会 |
| M&Aの目的 | 予防医療事業の体制強化 |
| M&Aのスキーム | 事業譲渡 |
一般社団法人恵生会は、病院やクリニックの運営を通じて地域医療を支えてきた医療法人恵生会が、予防医療分野の体制強化を目的に新たに設立した法人です。
今回のM&Aによって、医療法人恵生会の健診部門およびクリニックの健診事業を新法人へ移管し、予防医療に特化した体制を構築しました。事業の専門性を高めることで、健診サービスの質の向上や効率的な運営を目指しています。
2025年5月、社会医療法人健生会は医療法人岡谷会および社会医療法人平和会と合併し、新たな社会医療法人健生会として再編されました。
| 合併法人 | 社会医療法人健生会(旧:健生会・岡谷会・平和会) |
|---|---|
| M&Aの目的 |
|
| M&Aのスキーム | 合併 |
旧健生会、岡谷会、平和会はいずれも奈良県内で病院や介護施設を運営し、地域医療や福祉を支えてきた医療法人です。
今回の合併は、医療を取り巻く環境変化に対応し、安定した医療提供体制を維持することを目的として実施されました。合併後も各病院や施設は存続しており、経営資源の統合による効率化やサービスの充実を図りながら、地域医療の継続的な提供を行っています。
医療法人社団明康会は、2025年5月に古謝内科医院の事業を譲り受け、沖縄県での診療体制を拡大しました。
| 譲渡(売り手)側 | 古謝内科医院 |
|---|---|
| 譲受(買い手)側 | 医療法人社団明康会 |
| M&Aの目的 | 後継者不在の解決 事業エリアの拡大 |
| M&Aのスキーム | 事業譲渡 |
医療法人社団明康会は、複数の医療機関を運営する医療法人であり、新たな地域への展開を検討していました。
古謝内科医院は約40年にわたり地域医療を担ってきた診療所でしたが、後継者不在が課題となっていました。
今回のM&Aによって、古謝内科医院は「いろのわクリニック」として運営が継続され、地域医療の維持が実現しました。売り手側は廃業を回避でき、買い手側は新たな地域での事業基盤を獲得するという、双方にメリットのあるM&A事例となっています。
医療法人社団水生会は、2024年12月に一般社団法人AND medical groupが運営していた男性向け泌尿器科部門の事業譲渡契約を締結し、同部門を承継することとなりました。
| 譲渡(売り手)側 | 一般社団法人AND medical group |
|---|---|
| 譲受(買い手)側 | 医療法人社団水生会 |
| M&Aの目的 | 経営資源の集中 専門性の強化 |
| M&Aのスキーム | 事業譲渡 |
一般社団法人AND medical groupは美容外科や皮膚科クリニックの運営を行っています。男性向け泌尿器科部門を譲渡することで、主力とする美容外科や皮膚科分野へ経営資源を集中させ、重点領域における競争力の強化を図りました。
医療法人社団水生会は、内科や外科など複数の診療科を備えた総合的な医療を提供している医療法人です。当該部門を承継することで泌尿器科分野の診療体制を強化し、提供できる医療の幅を広げています。
今回のM&Aは、双方が専門分野における強みを高め、より質の高い医療サービスの提供につなげることを目的とした事例と言えるでしょう。

病院・医療業界のM&Aでは譲渡側・譲受側のいずれにもデメリットが存在します。M&Aのデメリットをできるだけ防ぎ、成功へとつなげるには、いくつかのポイントを押さえましょう。
病院・医療業界におけるM&Aのポイントを、譲受側・譲渡側それぞれについて解説します。
譲受側は、M&Aの目的を明確化することが大切です。自院がM&Aで達成したい目的は何かが明確になると、適切なM&Aスキームや譲受する病院・医療法人の選択ができます。
また、譲受側は病院・医療法人を単に取得するだけではなく、目的達成のために経営をしなければなりません。組織のガバナンスコントロールを行うには社員が何人必要か、経営安定のために人材派遣ができるかなど、譲受後の経営を見据えてM&Aの計画を立てる必要があります。
合併・事業譲渡のスキームでは多くの行政手続きが発生するため、行政手続きの手順についてもあらかじめ確認しておきましょう。
譲渡側はM&Aの準備を早期に、かつ計画的に進めましょう。
M&Aには入念な準備が必要であり、準備段階で多くの時間・労力がかかります。病院・医療法人の社員から譲受について賛同を固め、万全な資料作成ができるよう、M&Aの準備は早い段階で進めてください。
また、譲受側の候補となる医療法人について調査することも大切です。譲受側が経営している病院の経営方針や規模を調べたり、M&Aにおける希望条件を把握したりすると、自院の希望条件に近いかどうかを判断できます。
病院・医療業界のM&Aを実施する際は、譲受側・譲渡側いずれの場合も、M&A助言会社をはじめとした専門家への相談がおすすめです。

病院・医療業界におけるM&Aは、一般的に「検討・準備」「マッチング・交渉」「最終契約」の3つのフェーズに分けて進められます。
【フェーズ(1)検討・準備】
まずは、M&Aを実施するかどうかの検討と準備を行います。具体的には、M&Aアドバイザーや金融機関、税理士、弁護士などの専門家へ相談し、M&Aの進め方や想定される譲渡価格、適したスキームなどについて情報収集を行います。
そのうえで、実際にM&Aを進める場合は、支援を依頼するアドバイザーを選定し、秘密保持契約を含むアドバイザリー契約を締結します。この段階では、M&Aの目的や希望条件を整理し、今後の方針を明確にすることが重要です。
【フェーズ(2)マッチング・交渉】
次に、譲受先(買い手)の選定と交渉を進めます。まず、医療機関の概要や財務状況などをまとめた資料を作成し、アドバイザーを通じて候補先へ提示します。関心を示した候補先とは経営者同士の面談などを行い、理念や運営方針の相性を確認します。
その後、条件面で合意できる相手と基本合意契約を締結し、譲渡価格やスケジュールなどの大枠を決定します。さらに、買い手によるデューデリジェンス(買収監査)が実施され、財務状況や法務面などに問題がないかを詳細に確認します。
また、必要に応じて行政への申請や調整も行われます。
【フェーズ(3)最終契約】
デューデリジェンスの結果を踏まえ、最終的な条件を確定させたうえで最終契約を締結します。契約書には譲渡価格や支払い方法、譲渡後の責任範囲などが明記され、法的拘束力を持つ正式な合意となります。
その後、クロージングと呼ばれる手続きを行い、出資持分や事業の引き渡し、対価の支払い、経営権の移転などが実行されます。これらの手続きが完了することで、病院・医療業界におけるM&Aは正式に成立します。

医療機関のM&Aでは、医療法に基づく手続きや行政との調整も必要となるため、専門家の支援を受けながら段階的に進めることが重要となります。数ある相談先の中でも特におすすめなのが、M&A助言会社です。
M&A助言会社は、M&Aを検討している企業の準備から交渉、契約締結までを支援してくれる心強い存在と言えます。病院・医療業界のM&Aを相談するM&A助言会社は、下記3つのポイントを押さえて選びましょう。
POINT(1)実績
M&Aは病院・医療法人の経営規模や経営方針を大きく変える取り組みであり、支援を行うM&Aアドバイザーには知識・経験が求められます。知識・経験が豊富なM&A助言会社を選ぶには、ホームページや問い合わせなどでM&A支援の実績をチェックしてください。
M&A助言会社の実績は、件数はもちろん、支援した企業の業種を見ることが大切です。病院・医療業界のM&Aを支援した実績があるM&A助言会社を選ぶと良いでしょう。
POINT(2)費用・手数料
M&A助言会社に支援を依頼すると、着手金や月額報酬、成功報酬といった費用・手数料がかかります。M&A助言会社によっては着手金が高額だったり、月額報酬が長期間発生したりなどで、費用総額が高額になるケースがあるため注意してください。
M&A契約締結までに発生する費用・手数料の総額について、事前に分かりやすく説明してくれるM&A助言会社がおすすめです。
POINT(3)得意とする業界
M&A助言会社は得意とする業界が限定されているケースがあります。病院・医療業界のM&Aを依頼する際は、M&A助言会社が病院・医療業界を得意としているかどうかを確認しましょう。
M&A助言会社の中には、得意とする業界が多岐にわたる会社も存在します。病院・医療業界に精通したアドバイザーが在籍する会社を選択すると、業界の現状や自院の課題に対応したM&Aの提案が期待できます。
病院・医療業界では、医業の継承や病院経営の安定化が図れるM&Aに注目が集まっています。
病院・医療業界におけるM&Aの主なスキームは「合併」「事業譲渡」「出資持分譲渡」の3つがあります。M&Aの譲渡側・譲受側はそれぞれの目的を達成できるよう、適切なスキームを選択することが重要です。
株式会社レコフは創業以来1,000件以上の豊富な実績があり、着手金無料の支援体制でM&Aの実現をサポートしております。事業拡大や医業の承継のためにM&Aを検討している方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。
監修者プロフィール

株式会社レコフ リサーチ部 部長
澤田 英之(さわだ ひでゆき)
金融機関系研究所等で調査業務に従事後、政府系金融機関の融資担当を経て2005年レコフ入社。各業界におけるM&A動向の調査やこれに基づくレポート執筆などを担当。平成19年度農林水産省補助事業、食品企業財務動向調査委員、平成19年度内閣府経済社会総合研究所M&A究会 小研究会委員。著書・論文は「食品企業 飛躍の鍵 -グローバル化への挑戦-」(共著、株式会社ぎょうせい、2012年)、「データから見るIN-OUTの動向 -M&Aを通じた企業のグローバル化対応-」(証券アナリストジャーナル 2013年4月号、公益社団法人 日本証券アナリスト協会)など。
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