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商社業界のM&A動向

業界別M&A

2025.04.02更新日:2025.04.02

商社業界は取引の仲介だけでなく事業投資なども行う業界であり、市場規模は大きい傾向にあります。

ただし、商社業界は規模が大きい総合商社と、中小規模が多い専門商社の2種類があり、業界動向の把握は簡単ではありません。商社ではビジネスモデルの変革も進んでいて、近年は業界再編や事業拡大などを目指したM&Aが活発に行われています。

今回は、商社業界の現況とM&A動向やM&Aを行うメリットを中心に解説し、商社業界で行われた主なM&A事例、さらに成功に向けたポイントも紹介します。

目次
 
 

商社業界とは?定義と主なビジネスモデルについて

商社業界とは、輸出入貿易や商品の卸売などを事業とする「商社」で構成される業界です。
商社には、主に「総合商社」「専門商社」の2タイプが存在します。

●総合商社

総合商社は、原料・資源から加工品・サービスまで、幅広い分野の商材を取り扱う商社です。国内・国外を問わない企業間の仲介から投資や金融までを手がける総合商社は、海外にはない日本特有の業態であると言われています。

幅広い分野・事業領域を持つ総合商社は潤沢な資金力を有し、事業規模も巨大である点が特徴です。総合商社の中でも代表的な企業を指して、7大商社や5大商社と呼ぶこともあります。

●専門商社

専門商社は、鉄鋼・食品・電子機器・繊維・機械などの中で特定分野に特化し、限られた商品群で独自のノウハウ・強みを活かした事業を行う商社です。

特定分野の商材の売上比率が全体の50%以上を占めている商社が、一般的に「専門商社」と定義されています。専門商社は地域に根付いた事業活動をするケースが多く、事業規模は総合商社よりも小さいことがほとんどです。

また、商社業界の主なビジネスモデルとしては「取引仲介」「事業投資」の2種類が挙げられます。

●取引仲介(トレーディング)

取引仲介(トレーディング)は、製品・サービスを製造する企業と購入したい企業を仲介して、仲介手数料や利ざやで利益を得るビジネスモデルです。商社における本来の事業であり、専門商社は現在も取引仲介をメイン事業としています。

一方、総合商社では取引仲介の重要度が低下しており、下記の事業投資にシフトする企業が増えています。

●事業投資

事業投資は、成長が期待できる企業に投資を行い、投資先の企業価値向上などを図って利益を得るビジネスモデルです。

総合商社の事業投資は継続保有を前提としており、投資先企業の経営にも加わる点に特徴があります。

商社とメーカーの違い

商社と混同されやすいものに「メーカー」があります。
メーカーとは、原材料を仕入れて加工し、自社の製品を製造・販売する企業のことです。
対して、商社は他社が製造した製品を扱う業種であり、自社では製品を製造しない点に違いがあります。
ただし、グループの他社工場で製品を製造する商社や、顧客の要望に合う製品を調達するメーカーなど、中には明確な区別が難しいケースも存在します。

商社業界の現況・市場規模

商社業界の現況・市場規模を、「総合商社業界」「専門商社業界」に分けて解説します。

●総合商社業界

総合商社業界の市場規模(主要な企業の売上高計)の推移は、下記の通りです。

2018年2019年2020年2021年2022年
約53.7兆円 約53.9兆円 約50.7兆円 約66.2兆円 約79.0兆円

(出典:業界動向サーチ「総合商社業界の動向や現状、ランキングなど」https://gyokai-search.com/3-syosya.htm )

2018年・2019年に横這いであった市場規模は、2020年には資源価格低迷の影響により大きく下落しました。
しかし、翌年の2021年には世界的なエネルギー需給の逼迫を受け、市場規模は大きく拡大しています。市場規模の拡大は2022年も継続している状況です。

●専門商社業界

専門商社業界の市場規模(主要な企業の売上高計)の推移は下記の通りです。

2018年2019年2020年2021年
約46.5兆円 約47.1兆円 約50.3兆円 約53.5兆円

出典:業界動向サーチ「専門商社業界の動向や現状、課題などを分析」https://gyokai-search.com/3-syosya-senmon.html )

専門商社は総合商社と比べて内需依存型の傾向が強く、業界の市場規模は2018年から2021年にかけて順調に拡大を続けています。

ただし、専門商社の国内市場は飽和状態になりつつあると言われています。業界の成長が今後も同様に続くとは限らない点に注意しましょう。

商社業界の動向から見える今後の課題

商社業界は、商業全体の変化や世界情勢などの影響を受けやすい業界です。近年は特に業界を取り巻く変化が著しく起こっており、商社業界も複雑な課題が発生しています。

商社業界における近年の動向から、今後の課題となるポイントを3つ抜粋して解説します。

ECサイトの普及によるトレーディング需要の減少

ECサイトの普及によって小売業者とメーカーが直接取引をするケースが増加し、商社のトレーディング需要は減少している状況です。特に取引仲介を主要事業とする専門商社には大きな影響が出ています。

ECサイトなどの技術進歩は今後も加速し、トレーディング需要の減少も続くと考えられます。したがって、商社業界は取引仲介のみに頼らないビジネスモデルへの変革が求められるでしょう。

事業投資も、もともとは取引仲介依存からの脱却を目指して確立されたビジネスモデルです。 ただし、事業投資には豊富な資金が必要であり、規模の小さい商社は事業化が難しいという課題があります。

資源価格の変動による非資源分野の事業拡大

大手総合商社は海外のエネルギー資源・金属資源に着目した事業投資を行い、資源の販売によって巨額の利益を上げてきました。

しかし、資源価格は世界情勢による価格変動が起こりやすい点が課題です。2015年の中国経済低迷による鉄価格の下落など、資源価格の変動は世界情勢の影響を強く受けています。
そのため近年は総合商社・専門商社ともに、資源分野だけでなく非資源分野にも事業を拡大する流れが進んでいます。

非資源分野とは、資源分野には含まれない事業のことです。例えば伊藤忠商事株式会社では、繊維・食料・住生活などの生活消費関連と、機械・化学品などの基礎産業関連を非資源分野としています。 ただし、資源分野も世界情勢が好況になれば、大きな収益が期待できる分野です。今後の商社業界は、資源分野・非資源分野の事業構成比のバランスを取ることが重要となるでしょう。

付加価値を目的とした「バリューチェーン」の構築

近年の商社業界は、付加価値創出を目的とした「バリューチェーン」の構築に取り組んでいます。 バリューチェーンとは、原材料調達・製造・流通・販売というサプライチェーンを、価値創造の一連の流れとして捉える考え方です。

ECサイトの普及に代表されるインターネット技術の進歩により、商社は単に商材の仲介を行うだけでは高い価値の提供が難しくなりました。商社が取引仲介事業で存在感を発揮するには、バリューチェーンの構築によって付加価値を提供することが重要です。

総合商社は国内・海外企業とのネットワーク、専門商社は特定分野への専門性という強みがあり、バリューチェーンの構築をしやすい業態と言えます。

商社業界におけるM&A動向

商社業界が直面する課題を解決する方法として、M&Aを実施するケースが増えています。 商社業界におけるM&Aにはさまざまなケースがあるため、M&Aを検討する商社はいずれのケースが自社に合うかを考えましょう。

商社業界におけるM&A動向を3つ紹介します。

事業拡大を目的としたM&A

商社は自社で製品・サービスを製造しないため、事業の現状維持よりも拡大を目指す企業が多い傾向にあります。事業拡大を目的としたM&Aは活発に行われており、大手総合商社への傘下入りを目的としたM&A(会社売却)が代表的です。

また、協業による事業拡大・事業参入を目的とした、小~中規模商社同士や異業種(商社×メーカー)とのM&A(資本業務提携)も行われています。専門商社が強みのある特定分野を拡大するために、対象分野の専門商社やメーカーと資本提携を結ぶというケースが例です。

バリューチェーン構築を目的としたM&A

商社業界では総合商社を中心として、バリューチェーン構築を目的としたM&Aが進められています。商社がサプライチェーンにおける川上・川下企業の事業強化を図るために行う事業投資もM&Aの一種です。

反対に、メーカーが自社の調達・商品納入・販売を強化するために、専門商社とのM&A(株式取得)を行うケースもあります。 バリューチェーン構築を目的としたM&Aは、M&Aを実施する2社が互いのブランド力や経営資源を活用し、シナジー効果を生み出す手法です。

「事業投資→事業運営」を目的としたM&A

事業投資のM&Aでは、商社が事業投資により培ったノウハウを活かして、特定事業を買収して本格的な事業運営を行う事例も増加傾向にあります。

伊藤忠商事によるファミリーマートの買収・運営や、三菱商事とKDDIによるローソンの共同経営などが、事業運営を目的とした商社によるM&Aの好例です。 商社が事業運営を行うことによって、M&A先企業の業績改善を直接的に目指せるようになります。事業運営は非資源分野への投資でもあり、資源分野投資とのリスク分散を図れるメリットがあります。

【ケース・立場別】商社業界におけるM&Aのメリット

商社業界のM&Aを実施する際は、M&Aのメリットも理解しておきましょう。

商社業界のM&Aは「商社同士」「商社とメーカー」というケースの違いや、譲渡側・譲受側による立場の違いがあり、それぞれでM&Aのメリットは異なります。

商社業界におけるM&Aのメリットを、ケース・立場別に解説します。

【商社×商社】譲渡側(売り手)のメリット

商社同士でのM&Aにおいて、譲渡側には下記のメリットがあります。

●財務基盤の安定化や取引先拡大を図れる

専門商社はM&Aで大手総合商社の傘下になると、財務基盤が安定化します。取引仲介件数が伸ばしやすくなり、取引先拡大も図れるでしょう。

●譲受側企業の経営資源を活用して利益増大を目指せる

譲受側企業が持つ顧客ネットワークなどの経営資源を活用して、新規顧客獲得や相互送客による利益増大を目指せます。

●DX領域の強化ができる

大手総合商社はDX推進を掲げている企業が多く、M&Aにより自社のDX領域を強化できます。営業や顧客管理の効率化ができ、生産性向上につながるメリットです。

【商社×商社】譲受側(買い手)のメリット

商社同士のM&Aを実施する譲受側のメリットは、下記の3点です。

●特定分野の取引仲介を強化できる

専門商社とのM&Aを行うと、譲渡側の商社が持つ特定分野の強みを承継できます。特定分野の取引仲介を強化できる点がメリットです。

●事業拡大や海外進出を目指しやすくなる

M&Aによって既存事業の効率化・強化を行うことで、譲受側の商社は経営に余裕が生まれるようになり、事業拡大や海外進出を目指せるようになります。

●事業投資とのリスク分散ができる

資源分野への事業投資を行っている総合商社は、機械・アパレルのような非資源分野の専門商社を買収・子会社化することでリスク分散ができます。

【商社×メーカー】譲渡側(売り手)のメリット

商社とメーカーのM&Aは基本的に、特定分野の強みを伸ばすために行います。譲渡側のメリットは下記の3点です。

●特定分野で競合にはない強みを持てる

メーカーの製品を専門的に商社が仲介・販売する仕組みを作ることができ、特定分野で競合にはない強みを持てます。

●特定分野の取引仲介事業を強化できる

商社が譲渡側となる場合は、M&A先として当該分野の有力メーカーを選びます。商社は専門的な調達力・企画力を発揮でき、特定分野の取引仲介事業を強化できるでしょう。

●商社のバリューチェーン構築により、メーカーは事業強化ができる

メーカーが譲渡側となるM&Aでは、メーカーは商社が構築するバリューチェーンの恩恵を受けられます。製品の売上増加や販路拡大が期待でき、事業強化が可能です。

【商社×メーカー】譲受側(買い手)のメリット

商社とメーカーのM&Aにおいて、譲受側には下記のメリットがあります。

●自社完結のサプライチェーンにより、バリューチェーンが構築できる

商社とメーカーが提携すると、自社完結のサプライチェーンを作れます。2社の強みを付加価値としたバリューチェーンを構築できる点がメリットです。

●事業投資・事業運営ができる

商社が譲受側の場合、メーカーとのM&Aには事業投資・事業運営の性質があります。ビジネスモデルの幅を広げられ、利益の増大が可能です。

●商社のネットワークを活用し、新製品開発や海外への販路拡大を目指せる

メーカーが譲受側の場合、メーカーは商社のネットワークを活用して調達や販売をスムーズに行えるようになります。新製品開発や海外への販路拡大といった事業計画を実現しやすくなるでしょう。

商社のM&Aにおける売却価格の考え方

商社のM&Aにおける売却価格には、明確な「相場」と呼べるものは存在しません。

なぜなら、企業の評価は規模や収益力だけでなく、将来性や事業内容、さらには売り手・買い手の交渉状況によって大きく変わるためです。同じ売上規模の商社であっても、扱う商材や取引先、成長余地によって売却価格が大きく異なるケースは珍しくありません。

M&Aにおける価格は、企業価値を客観的に評価したうえで、その結果を参考にしながら、最終的には売り手と買い手の交渉によって決定されます。

企業価値を算定するプロセスは「バリュエーション」と呼ばれ、商社のM&Aにおいても売却価格を考えるうえで欠かせない考え方です。

そのため、商社のM&Aにおける売却価格を正しく理解するには、まずバリュエーションの基本的な枠組みを押さえておくことが重要と言えるでしょう。

ここからは、商社M&Aにおけるバリュエーションの基本から、よく用いられる企業価値の算定方法、さらに商社の企業価値を左右する無形資産について詳しく説明します。

商社M&Aにおける企業価値評価(バリュエーション)の基本

企業価値の評価(バリュエーション)には、主に「コストアプローチ」「マーケットアプローチ」「インカムアプローチ」の3つがあります。商社M&Aにおいても、これらの考え方をもとに企業価値が算定されます。

●コストアプローチ

コストアプローチは、企業が保有する純資産をもとに価値を評価する方法です。貸借対照表上の資産・負債を基準とするため、比較的分かりやすい点が特徴となっています。

代表的な算定手法としては、帳簿上の数値を用いる「簿価純資産法」や、資産・負債を時価に置き換える「時価純資産法」があります。また、中小企業のM&Aでは、後述する「年買法(年倍法)」が用いられることも多く、簡易的な評価方法として活用されています。

●マーケットアプローチ

マーケットアプローチは、同業他社や過去の類似M&A取引と比較することで企業価値を算定する方法です。

類似企業比較法や類似取引比較法などがあり、上場企業のように財務情報が公開されている場合に活用されやすい傾向があります。ただし、非上場の中小商社では比較対象が限られるため、補助的な位置づけで用いられるケースも少なくありません。

●インカムアプローチ

インカムアプローチは、企業が将来生み出すと見込まれる収益やキャッシュフローをもとに価値を評価する方法です。

代表的な手法として、将来キャッシュフローを現在価値に割り引いて算定するDCF法(ディスカウント・キャッシュフロー法)があります。将来性を重視した評価が可能で、成長性のある商社や事業拡大を見込むM&Aで活用されやすい点が特徴です。

どのアプローチを採用するかは、企業の規模や業種、M&Aの目的によって異なります。実務では、単一の手法だけで判断するのではなく、複数のアプローチを組み合わせて企業価値を多角的に検討するケースが一般的です。

商社M&Aでよく用いられる企業価値の算定方法

商社のM&Aでは、数ある算定方法の中でも、コストアプローチに基づく「年買法」や、インカムアプローチに基づく「DCF法」がよく用いられる傾向にあります。

●年買法

「時価純資産額 + 営業利益 × 2年~5年分」といった形で企業価値を算定する方法です。

計算が比較的シンプルで、企業価値を簡易的に把握できる点が特徴であり、中小商社のM&Aでは実務上よく活用されています。一方で、将来の成長性や事業リスクが十分に反映されにくい点には注意が必要です。

●DCF法

企業が将来にわたって生み出すと予測されるキャッシュフローを算出し、それを現在価値に換算して企業価値を評価する方法です。

将来の事業戦略や成長性を評価に反映できるため、比較的規模の大きい商社や成長分野を扱うM&Aで活用されることが多くなっています。ただし、将来予測に基づくため、前提条件の設定によって評価額が大きく変動する点が特徴です。

商社の企業価値を左右する「無形資産」について

年買法やDCF法によって算出された企業価値は、あくまでも交渉の出発点となる「目安」にすぎません。特に商社のM&Aでは、数値として表れにくい無形資産が売却価格を大きく左右する傾向があります。

商社の企業価値を大きく左右する代表的な無形資産には、下記が挙げられます。

●長期的な取引関係とパートナーネットワーク

長年にわたって築いてきた仕入先や販売先との関係性、海外を含むパートナーネットワークは、商社ならではの重要な無形資産です。安定した取引基盤がある企業ほど、事業継続性の面で高く評価されやすくなります。

●市場での信頼性・商社としての評価

業界内での知名度や信用力、取引先からの評価も企業価値に大きく影響します。コンプライアンス体制が整っていることや、安定した実績を積み重ねてきた点は、買い手にとって大きな安心材料となります。

●顧客基盤

特定の顧客に依存しすぎていない、バランスの取れた顧客基盤をもつ商社は、リスクが低いと評価されやすい傾向にあります。継続的な取引が見込める顧客を多く抱えている点も、売却価格を左右する要素です。

●独自技術・先進技術

専門性の高い分野でのノウハウやAIなどの独自技術・先進技術を有する商社は、将来の成長余地が期待され、評価が上乗せされることがあります。

このように、商社のM&Aにおける売却価格は、数値評価だけでなく、無形資産を含めた総合的な企業価値をもとに、最終的には交渉によって決定されます。自社の強みを正しく把握し、適切に伝えることが、納得のいく売却価格につながる重要なポイントと言えるでしょう。

商社業界における主なM&A事例7選

 

商社業界におけるM&Aは、商社のタイプや規模などによって違いがあります。M&Aを成功させるためには、商社が行ったM&Aの事例を参考にするのも有効です。

ここからは、商社業界における主なM&A事例を7つ紹介し、具体的にどのようなM&Aが行われたかも説明します。

株式会社オータケ×株式会社田中産業

株式会社オータケは、2024年9月に株式会社田中産業の全株式を取得し、同社を完全子会社化しました。


譲渡(売り手)側
株式会社田中産業

譲受(買い手)側
株式会社オータケ

M&Aの目的
  • 取扱商品の拡充
  • 顧客基盤の相互活用
  • 事業領域の拡大

M&Aのスキーム
株式譲渡

株式会社オータケは、全国主要都市に安定した営業基盤を有した1946年創業の管工機材専門商社です。

田中産業は、ステンレス鋼材・配管資材を扱う専門商社で、関西エリアを中心に事業を展開しています。

本M&Aにより、両社の取扱商品や顧客基盤を連携させることで、商品調達力や供給力、提案力の強化を図り、商社としての事業領域拡大と収益力向上を目指しています。

ヱトー株式会社×株式会社ウエルストン

ヱトー株式会社は、2024年9月に株式会社ウエルストンの全株式を取得し、同社を完全子会社化しました。


譲渡(売り手)側
株式会社ウエルストン

譲受(買い手)側
ヱトー株式会社

M&Aの目的
  • 新市場への参入
  • 事業の多角化
  • 海外ネットワークの活用

M&Aのスキーム
株式譲渡

ヱトー株式会社は、技術総合商社として多様な産業分野の生産現場を支え、顧客とサプライヤー双方をつなぐ役割を担っています。

ウエルストンは、船舶補修部品の輸出および国内卸を主力とする専門商社で、20年以上にわたり培った業界知見と、東南アジアを中心とした海外顧客ネットワークを強みとしています。

本M&Aにより、ヱトーは船舶補修部品という新たな分野へ参入するほか、ウエルストンの知見や海外ネットワークとノウハウを融合させることで、新たなビジネス創出と中長期的な成長を目指しています。

丸紅株式会社×株式会社ソルトン

大手総合商社の丸紅株式会社は2021年6月、電子部品の専門商社である株式会社ソルトンを完全子会社化しました。


譲渡(売り手)側
株式会社ソルトン

譲受(買い手)側
丸紅株式会社

M&Aの目的
  • 電子部品事業の拡大
  • 商品ラインナップの拡充と物流サービスの効率化

M&Aのスキーム
株式譲渡

丸紅株式会社は2016年に電子部品事業への参入を行っており、当該事業の拡大を進めています。

需要が高まっている産業用コネクタについて、株式会社ソルトンが強みを有していることから、丸紅株式会社は株式会社ソルトンの全株式を取得し、完全子会社化しました。

株式会社GSIクレオス×桜物産株式会社

繊維・工業製品の専門商社である株式会社GSIクレオスは2022年4月、パッケージングの専門商社である桜物産株式会社を完全子会社化しました。


譲渡(売り手)側
桜物産株式会社

譲受(買い手)側
株式会社GSIクレオス

M&Aの目的
  • 従来製品の販売増加
  • 機能性フィルムの拡販推進

M&Aのスキーム
株式譲渡

GSIクレオスと桜物産株式会社は、各種フィルム・パッケージ製品について長年の取引をもった会社です。

2社はパッケージング分野における専門性・競争力の強化を目的として、株式会社GSIクレオスが譲受側となる株式譲渡でのM&Aを実施しています。

アルコニックス株式会社×株式会社ソーデナガノ

非鉄金属の商社・メーカーであるアルコニックス株式会社は2022年11月、金属加工メーカーの株式会社ソーデナガノを連結子会社化しました。


譲渡(売り手)側
株式会社ソーデナガノ

譲受(買い手)側
アルコニックス株式会社

M&Aの目的
  • 顧客ニーズに対応した商流の開拓
  • グループ全体のコスト競争力・生産効率性の向上

M&Aのスキーム
株式譲渡

株式会社ソーデナガノはリチウムイオン電池用機構部品の特許・意匠を多く保有するメーカーです。

アルコニックス株式会社は、株式会社ソーデナガノの連結子会社化による事業へのシナジー効果と、企業価値の向上を目的としてM&Aを実施しました。

エムスリー株式会社×東和産業株式会社

幅広い医療関連事業を展開するエムスリー株式会社は2021年1月、東和産業株式会社を完全子会社化しました。


譲渡(売り手)側
東和産業株式会社

譲受(買い手)側
エムスリー株式会社

M&Aの目的
  • サービス提供地域の拡大
  • DX加速

M&Aのスキーム
株式譲渡

エムスリー株式会社は近年、医療機器業界での事業拡大を進めています。

東和産業株式会社は、関西圏に強い営業基盤を有する眼科専門商社です。エムスリー株式会社は本M&Aによってサービス提供地域の拡大ができ、医療機器・眼科領域でのDX加速を推進できるとしています。

伊藤忠商事株式会社×ほけんの窓口グループ株式会社

大手総合商社の伊藤忠商事株式会社は2019年10月、ほけんの窓口グループ株式会社を連結子会社化しました。


譲渡(売り手)側
ほけんの窓口グループ株式会社

譲受(買い手)側
伊藤忠商事株式会社

M&Aの目的
  • 顧客接点の多様化
  • 新たなサービスの創出

M&Aのスキーム
株式譲渡

伊藤忠商事株式会社は2014年からほけんの窓口グループ株式会社と資本・業務提携を行っており、同社の事業成長を支援していました。

本M&Aは伊藤忠商事株式会社のネットワークやグループの強みと、ほけんの窓口グループ株式会社の強みによりシナジーを生み出すことを目的としています。

【フェーズ別】M&Aの主な流れ

M&Aは、単に企業を売買する手続きではなく、複数の工程を段階的に進めていくプロセスです。一般的には、「検討・準備」「マッチングと交渉」「最終契約」「成立後の統合(PMI)」という4つのフェーズに分けて進行します。

各フェーズで行うべき対応や押さえるべきポイントを理解しておくことで、想定外のトラブルを防ぎ、M&Aの成功確率を高められるでしょう。

ここからは、M&Aの主な流れをフェーズごとに詳しく解説します。

フェーズ1:M&Aの検討と準備

最初のフェーズは、M&Aを実施するかどうかを検討し、実行に向けた準備を行う段階です。

売り手は、自社が抱える経営課題を踏まえてM&Aの目的を明確にし、M&A戦略を立案する必要があります。あわせて、財務諸表や契約書類、許認可の状況などを確認し、後のデューデリジェンスに備えた情報整理も進めます。

一方、買い手も、自社の成長戦略に合致するM&Aの目的や条件を定め、どのような企業を対象とするのかを明確にします。

いずれの立場も、この段階で「問題点」や「外せない条件」を洗い出し、必要に応じて改善しておくことで交渉を有利に進めやすくなるでしょう。

なお、M&Aの検討段階でM&アドバイザーに相談し、専門的な視点を取り入れながら準備を進めるのが一般的です。

フェーズ2:マッチングと交渉

次のフェーズでは、売り手と買い手のマッチングが行われ、具体的な条件交渉へと進みます。アドバイザーを通じて候補先が紹介され、秘密保持契約(NDA)を締結したうえで、詳細な企業情報が開示されます。

この段階では、譲渡価格の目安やスキーム(株式譲渡・事業譲渡など)、従業員の処遇、経営体制の変更有無といった条件について協議が進められます。条件が大枠で合意に至った場合、基本合意書(LOI)を締結するのが一般的です。

ただし、基本合意書はあくまで暫定的な合意であり、最終的な契約内容を保証するものではありません。双方の意向や優先順位を丁寧にすり合わせながら、信頼関係を構築していくことが、このフェーズの重要なポイントとなります。

フェーズ3:最終契約

基本合意後は、買い手によるデューデリジェンス(DD)が実施されます。デューデリジェンスでは、財務・法務・労務・税務・事業内容などを詳細に調査し、リスクや課題を洗い出します。

デューデリジェンスの結果を踏まえ、最終的な譲渡価格や契約条件が調整され、問題がなければ最終契約書の締結へと進みます。最終契約書には、譲渡条件だけでなく、表明保証や補償条項など、トラブル防止のための重要事項が盛り込まれます。

このフェーズでは、専門的な知識が求められる場面が多いため、弁護士や公認会計士などの専門家と連携しながら慎重に進めることが不可欠です。契約内容を十分に理解し、納得したうえで締結することが、M&A成功の前提となります。

フェーズ4:M&Aの成立とPMIの実行

最終契約の締結とクロージングをもって、M&Aは形式的に成立します。しかし、実務上はクロージングがゴールではなく、その後の「PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)」と呼ばれる統合プロセスが最も重要と言っても過言ではありません。

PMIでは、経営体制や業務フロー、人事制度、企業文化などを段階的に統合し、M&Aによるシナジー創出を目指します。特に、従業員への説明やコミュニケーションが不十分な場合、離職やモチベーション低下につながる恐れがあるため注意が必要です。

M&Aの成果を最大化するためには、成立後の体制づくりまでを見据えた計画が欠かせません。各フェーズを丁寧に進め、PMIまで一貫して取り組むことが、M&Aを成功に導く鍵と言えるでしょう。

商社業界のM&Aを成功させるためのポイント

商社は、モノを扱うだけでなく、取引先との信頼関係や情報力、専門性といった無形の経営資源によって価値が形成されるビジネスモデルであるため、M&Aにおいてもそれらを踏まえた戦略的な対応が求められます。

商社業界のM&Aを成功に導くためには、売却価格や契約条件の交渉だけに目を向けるのではなく、事前準備から成約後の統合・運営までを一体として捉えることが重要です。

ここからは、商社特有の特性を踏まえたM&A成功のポイントを解説します。

M&Aの目的を明確にする

商社のM&Aでは、「なぜM&Aを行うのか」「M&Aを通じて何を実現したいのか」を明確にすることが欠かせません。既存事業の拡大や収益基盤の強化を目的とするのか、新規分野への参入や取扱商材の多角化を狙うのかによって、適切な対象企業やM&Aのスキームは大きく異なるためです。

あわせて、買収後に期待するシナジーについても具体的に整理しておくことが重要です。例えば、調達力の強化によるコスト競争力の向上、販売網や顧客基盤の拡大、付加価値の高い提案力の強化など、実現したい効果を明確化することで、M&Aを単なる企業取得ではなく、戦略的な成長投資として位置づけやすくなります。

経営資源とリスクを可視化する

商社の企業価値は、売上や利益といった財務数値だけで測れるものではありません。長年にわたって築かれてきた取引関係、業界に特化した専門性、仕入・販売に関するノウハウなどが、企業価値を大きく左右します。

したがって、M&Aを進める際は、自社および相手先企業がどのような経営資源を有しているのかを整理し、どの価値が引き継がれるのかを明確にしておく必要があります。

一方で、商社特有のリスクにも注意が必要です。取引契約の継続性、在庫の評価、為替変動による影響などを事前に洗い出し可視化しておくことで、交渉を円滑に進めやすくなります。

M&A後を見据えた統合体制を事前に設計する

M&Aは成約がゴールではなく、その後の事業運営によって成否が左右されると言っても過言ではありません。特に商社の場合、担当者個人の関係性や情報網が事業の基盤となっているケースも多く、統合の進め方には慎重な配慮が求められます。

「どの業務や組織を統合し、どこを一定期間維持するか」といった方針を事前に整理し、段階的に進める体制を設計しておくことが重要です。

統合後の混乱や人材流出を防ぎ、M&Aによって期待されるシナジーを確実に実現するためには、「成約後を見据えた準備」が不可欠と言えます。

商社業界のM&Aにおける主な相談先

M&Aを検討する際の主な相談先としては、金融機関、事業承継・引き継ぎ支援センター、M&Aアドバイザーなどが挙げられます。いずれも相手先企業のマッチングから条件交渉、成約までを支援する役割を担います。

ただし商社業界のM&Aでは、取引先との契約関係や商流・在庫管理、為替変動や信用リスクなど、業界特有の論点が多く存在します。

商社業界ならではのリスクを的確に把握し、条件交渉やスキーム設計に反映させるためには、一般的なM&A知識に加えて商社業界での支援実績や深い業界理解をもつ専門家の関与が不可欠です。

できる限り手厚いサポートを受けたいのであれば、商社業界のM&A支援実績を豊富にもつM&Aアドバイザーがおすすめです。商社特有のビジネス構造を理解したM&Aアドバイザーを活用することで、成約後のトラブルを防ぎ、円滑なM&Aを実現しやすくなるでしょう。

まとめ

商社業界は総合商社・専門商社の2タイプが存在し、事業内容・規模や主な課題にも違いがある業界です。

課題解決の方法としてM&Aを選択する企業は多く、事業拡大を目指すM&Aやバリューチェーン構築を目指すM&Aが実施されています。商社同士だけでなく、商社・メーカー間でのM&Aも活発です。

「株式会社レコフ」は、商社業界を含む豊富なM&A案件の成約実績があります。商社業界のM&Aを検討している方は、ぜひお気軽にご相談ください。

監修者プロフィール

株式会社レコフ リサーチ部 部長

澤田 英之(さわだ ひでゆき)

金融機関系研究所等で調査業務に従事後、政府系金融機関の融資担当を経て2005年レコフ入社。各業界におけるM&A動向の調査やこれに基づくレポート執筆などを担当。平成19年度農林水産省補助事業、食品企業財務動向調査委員、平成19年度内閣府経済社会総合研究所M&A究会 小研究会委員。著書・論文は「食品企業 飛躍の鍵 -グローバル化への挑戦-」(共著、株式会社ぎょうせい、2012年)、「データから見るIN-OUTの動向 -M&Aを通じた企業のグローバル化対応-」(証券アナリストジャーナル 2013年4月号、公益社団法人 日本証券アナリスト協会)など。

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