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半導体は非常に多くの分野・製品に使用されており、半導体製造にかかわる半導体業界は大きな市場規模がある業界です。日本全体でも半導体業界は近年注目を集めている業界であり、M&Aは活発化しています。
半導体業界のM&Aを検討する際は、業界を取り巻く状況や課題、M&A動向などを把握することが重要です。
そこで今回は、半導体業界の概要から、半導体業界のM&A動向とM&Aが活発化する理由、さらに主なM&A事例まで詳しく解説します。
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半導体業界とは、半導体の研究開発・設計・製造や販売・流通などにかかわる企業で構成される業界です。
そもそも半導体は一般的に半導体素子や集積回路のことを指し、パソコン・スマホ・自動車などの電気製品に組み込まれています。近年はAI設備投資やIoTによる半導体需要の拡大もあり、半導体業界は国内外のさまざまな企業と関係しながら事業展開をしています。
半導体業界はトレンドの変化が激しく、需要の移り変わりも大きい業界です。半導体業界の経営者は業界構造や半導体製品の需要を把握し、経営判断を行う必要があるでしょう。
また、半導体業界は半導体そのものを作る企業だけでなく、材料を供給する企業、製造装置を開発する企業、流通を担う商社など、多様な企業群によって成り立っていることも特徴です。
半導体製造メーカーは、半導体そのものを設計・製造する企業群です。パソコンやスマートフォン、自動車などの電子機器に組み込まれる半導体を実際に作り出す役割を担っており、業界の中核を成しています。
また、半導体製造メーカーと一口に言っても、代表的な事業モデルは「製造の形態」によって大きく3種類に分けられるのが特徴です。
【1】IDM(Integrated Device Manufacturer)
自社で設計から製造まで一貫して行う企業です。設計・製造の両方を内製することで、高度な技術の蓄積や品質管理を強みとしています。
【2】ファブレス
製造は外部の工場に委託し、設計に特化する企業です。自社で工場を持たない分、設備投資を抑えつつ最先端の設計技術に注力できます。
【3】ファウンドリ
他社が設計した半導体を受託して製造する企業です。設計に専念するファブレス企業と協業する形で成長しており、世界的に需要が拡大しています。
半導体材料メーカーは、半導体製造に欠かせない各種材料を供給する企業群です。
代表的な製品としては、半導体の基盤となるシリコンウェーハ、パターン形成に用いるフォトレジスト、成膜やエッチングに使う各種ガス・薬液、そして半導体を保護する封止材などがあります。
これらの材料は、微細加工の精度や製品性能に直結するため、高品質で安定的な供給が求められます。材料メーカーは単なる供給者に留まらず、製造工程に合わせた技術サポートを提供することも多いため、半導体業界全体の技術進化に欠かせない存在と言えます。
半導体製造装置メーカーは、半導体の前工程・後工程で使用される各種装置を開発・提供する企業群です。
前工程では、露光装置や成膜装置、エッチング装置などを用いて回路パターンを半導体上に形成します。後工程では、完成した半導体をテスト・検査するための検査装置や、パッケージング用の装置が活躍します。
半導体製造装置メーカーは、半導体メーカーが高性能かつ歩留まりの高い製品を安定して作るための技術的基盤を支える重要な役割を担っています。
半導体商社は、半導体や関連部材の調達・販売を担う企業です。
主に製品や材料の需給調整、価格交渉、さらには技術サポートまで幅広く行い、メーカーと市場をつなぐ役割を果たしています。
商社は単なる流通業者ではなく、半導体業界における情報ネットワークやノウハウを活かして、効率的な供給体制を構築するパートナーとしても重要な存在です。

世界の半導体市場は、近年のAI需要やデータセンター投資の拡大を背景に成長を続けています。下記は、世界半導体市場統計から、直近5年間における世界の半導体市場規模をまとめた表です。
| 半導体市場規模 | |
| 2021年 | 約5,559億ドル |
| 2022年 | 約5,741億ドル |
| 2023年 | 約5,269億ドル |
| 2024年 | 約6,305億ドル |
| 2025年 | 約7,722億ドル |
(出典:JEITA 電子情報技術産業協会「1.WSTS 2025年秋季半導体市場予測について」https://www.jeita.or.jp/japanese/stat/wsts/docs/20251202WSTS.pdf )
(出典:一般社団法人日本半導体製造装置協会「2026年1月発表半導体・FPD製造装置需要予測(2025年度~2027年度)」https://www.seaj.or.jp/file/jan2026seajforecastforpress_j.pdf )
2020年から2022年にかけては、パソコンやスマートフォン向け需要の堅調な推移を受け、世界の半導体市場は拡大基調で推移しました。しかし、2023年はメモリー市況の悪化や世界的な経済不安の影響もあり、前年比で8.2%の減少となりました。
その一方で、2024年はAI関連の設備投資が活発化したことにより、データセンター向けのメモリー製品やGPUなどのロジック製品が市場を牽引し、前年比19.7%増の約6,305億ドルまで回復しました。
さらに同資料では、2026年には約9,755億ドルまで拡大する見通しが示されています。拡大の背景には、自動運転やIoTの普及など新たな半導体需要の拡大があると考えられます。
なお、日本における2021年~2025年の半導体市場規模は下記の通りです。
| 半導体市場規模 | |
| 2021年 | 約437億ドル |
| 2022年 | 約482億ドル |
| 2023年 | 約468億ドル |
| 2024年 | 約467億ドル |
| 2025年 | 約448億ドル |
(出典:JEITA 電子情報技術産業協会「1.WSTS 2025年秋季半導体市場予測について」https://www.jeita.or.jp/japanese/stat/wsts/docs/20251202WSTS.pdf )
日本市場は2020年から2022年にかけて拡大したものの、2023年以降はおおむね横ばいで推移しています。2024年も前年比でほぼ変わらず約467億ドルにとどまり、世界市場全体の約1割未満の規模です。
世界的な成長の勢いをそのまま取り込めているとは言いにくく、依然として市場規模の伸び悩みが課題となっています。2026年には+11.9%と予測されており、回復の可能性はあるものの、先行きは不透明です。
1980年代には世界市場の約5割を占めていた日本の半導体業界ですが、現在では当時の存在感を保てておらず、衰退傾向が指摘されています。
しかし、なかには高品質・高精度の製造技術や材料・装置分野での強みを生かし、今後の回復や成長への布石を模索する企業も見られます。日本の半導体業界にとっては、世界市場の拡大と技術進化の波にどう対応していくかが大きな課題と言えるでしょう。

かつて世界市場の半分近くを占めた日本の半導体業界は、現在では存在感を失い、衰退が指摘される状況にあります。その背景には、国際環境の変化や国内企業の戦略の遅れ、政策面の差など、複合的な要因が存在します。
ここからは、日本の半導体業界が衰退した主な理由を4つ紹介します。
1980年代に世界市場でのシェアを握った日本産半導体は、日米貿易摩擦の原因となりました。
1986年には貿易摩擦の解消を目的として日米半導体協定が締結され、国内半導体メーカーへの貿易規制が強まります。
その後、1990年代に半導体の主流がメモリ(DRAM)からロジック(CPU)へと変わっていく潮流を捉えられず、国際的な競争力を急速に失う結果となりました。
1990年代には、半導体のサプライチェーンが従来の垂直統合型から、水平分離型へと移行する変化がありました。
垂直統合型とは、半導体の設計・製造を一社で行う方式です。対して水平分離型は、設計を行うファブレス企業と、製造に特化したファウンドリ企業が連携する方式です。水平分離型は設計と製造を分業できる強みがあり、現代でも半導体業界の主流構造となっています。
一方、1990年代における日本国内の半導体メーカーは、電気・情報通信機器の親会社が競争力を失っている過程にありました。結果として半導体製造部門の切り出し・統合をスムーズに行うことができず、水平分離への移行に失敗しました。
2000年以降、パソコン・インターネット・スマホなどのデジタル機器が世界的に普及する中で、日本国内ではデジタル化が遅れました。デジタルが遅れた原因には、バブル崩壊後の景気低迷によって企業の設備投資が抑制されていたことが挙げられます。
また、政府は半導体の研究開発・技術開発に予算を注力していたものの、国内企業にこだわる自前主義に陥っていました。国際的なアライアンスの構築が遅れ、海外での製品競争力を失っています。
デジタル化の遅れによる国内デジタル市場の低迷と、海外市場での競争力低迷により、日本の半導体業界は大きく衰退する結果となりました。
(出典:経済産業省「半導体戦略(概略)」/
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/joho/conference/semicon_digital/20210603008-4.pdf)
半導体産業は巨額の設備投資が必要であり、最先端工場の建設には数兆円規模の資金が必要となります。
米国、韓国、台湾、中国などでは、補助金や税制優遇、設備投資減税などを通じて企業の投資を積極的に支援してきました。しかし、日本ではこうした直接的支援が限定的であり、企業は自社資金に依存して投資を行う必要がありました。
結果として、最先端プロセスへの参入や生産能力拡大で海外勢に後れを取りやすく、設備投資の意思決定も慎重にならざるを得ませんでした。さらに、税負担や電力コストなどの事業環境面でも競争国との差が存在し、国内での大規模投資を躊躇する要因となりました。
国家戦略産業としての半導体において、政策面での差が企業の競争力に直結したことが、日本市場のシェア低下につながったと言えるでしょう。

日本の半導体業界は昔と比べて衰退しているものの、近年は官民挙げて半導体産業の盛り返しを図る動きが見られています。
半導体業界にかかわる方は、半導体業界の課題についても詳しく知っておくと良いでしょう。 ここからは、日本の半導体業界における今後の課題を4つ解説します。
近年は半導体需要が急速に拡大しており、半導体メーカーによる供給が追いついていない状況です。半導体の供給不足を解消するためのサプライチェーン構築が課題となっています。
特に2020年第4四半期以降、世界的にファウンドリの稼働率が約95%を継続していて、生産能力の限界に達していると言われています。日本の半導体業界も、ファウンドリを中心とした生産能力の増強が必須となるでしょう。
(出典:経済産業省「半導体・デジタル産業戦略」/
https://www.meti.go.jp/press/2023/06/20230606003/20230606003-1.pdf)
日本の半導体業界が国際競争力を維持するには、技術開発・研究開発力の強化が不可欠です。
近年はAI向け半導体、先端メモリ、次世代パワー半導体、先端製造技術などで国際競争が激化しており、日本が存在感を高めるには、既存技術に依存するだけでなく将来の需要を見据えた研究開発への継続的な投資が求められます。
しかし、半導体の研究開発は長期間にわたり多額の資金と高度な技術人材を要するため、企業単独で進めるには限界があります。
日本では、経済産業省や国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が、先端半導体の製造技術や次世代半導体の研究開発を支援しています。技術基盤の強化に向けた支援は、短期的な成果だけでなく、将来的な競争力を左右する課題と言えるでしょう。
サプライチェーン構築を実現するには、半導体業界自体がDX化を推進する必要があります。DX化によって工場の自動化やデータの利活用ができるようにすることで、半導体の生産能力増強ができ、サプライチェーン構築にもつながるでしょう。
DX化の推進では、新たな技術の導入やDX人材の獲得が重要です。半導体業界の企業は、製造については省人化を目指しつつ、IoT・AIやデータサイエンスを活用できる人材の確保・育成も目指さなければなりません。
半導体業界は慢性的な人手不足に悩まされていて、半導体関連産業全体では1999年~2019年の20年間で従業員数が約3割減となっています。電子情報技術産業協会によると、主要8社で今後10年間に少なくとも4万人程度の人材が追加で必要になると言われており、人材確保が大きな課題です。
(出典:経済産業省「半導体・デジタル産業戦略」/
https://www.meti.go.jp/press/2023/06/20230606003/20230606003-1.pdf)
特に技術者不足が深刻であるとされていて、日本国内の人材はもちろん、海外人材の確保も必要な状況となっています。半導体業界は積極的な人材確保・人材育成に取り組む必要性が高いと言えるでしょう。

半導体産業の再強化を図るために政府が2021年に策定した「半導体・デジタル産業戦略」を受けて、日本の半導体業界はM&A・業界再編が活発化しつつあります。
(出典:経済産業省「半導体・デジタル産業戦略」/
https://www.meti.go.jp/press/2021/06/20210604008/20210603008-1.pdf)
半導体業界のM&Aは半導体企業同士だけでなく、IT会社やファンドが半導体関連会社を買収するなど、譲渡側・譲受側の組み合わせは多岐にわたります。
ここからは、半導体業界のM&A動向として、M&Aを行う業種の組み合わせや目的を紹介します。
譲渡側・譲受側がともに半導体メーカーのケースでは、半導体生産技術の強化や新製品開発が主な目的です。半導体メーカー同士が提携・合併といったM&Aを実施することによって、スケールメリットを獲得しつつ、両社の強みを活かして市場競争力を伸ばせます。
また、顧客基盤の共有によって販売拡大を実現したり、製造拠点の統廃合によって経営の合理化を目指したりすることも可能です。
譲渡側が半導体メーカー、譲受側が電子部品メーカーのケースでは、相互に成長分野での開発力強化を目的としてM&Aを実施します。
また、譲渡側の半導体メーカーにとっては大手グループの傘下に加わることで事業拡大を目指しやすくなります。譲受側の電子部品メーカーは半導体業界に参入して、事業ポートフォリオの拡充や既存製品の高性能化ができるでしょう。
譲渡側が半導体専門商社、譲受側がIT関連商社のM&Aは、商社同士のM&Aであるとも言えます。相互に商材ラインナップの拡充ができ、それぞれの顧客基盤を活用した販売拡大を実現することが可能です。
また、半導体専門商社は半導体メーカーとの付き合いが深いという強みがあり、IT関連商社が半導体製品の開発事業を手がけられるメリットもあります。

半導体は各国が重要な戦略物資として捉えていて、半導体業界の競争は世界的に激化しています。 日本においても、事業拡大や生き残りを目的とした半導体企業のM&Aは活発に行われている状況です。
ここからは、日本の半導体業界でM&Aが盛んに行われている理由を3つ説明します。
近年は産業全体でのDX推進や、AI・IoTなどの新しい技術の登場により、半導体需要が世界的に拡大しています。
総務省が公表する「令和7年 情報通信白書」によると、世界の半導体出荷額は2022年度をピークに2023年度から2024年度にかけては前年と比べてやや減少する傾向が見られています。しかし、2020年頃と比較すると依然として高水準であり、長期的には半導体需要が拡大しているという傾向に変わりはありません。
(出典:総務省「令和7年版 情報通信白書|半導体市場の動向」/
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/html/nd215400.html)
半導体需要の拡大に応えるには半導体業界が供給・流通体制を整える必要があり、生産設備の拡充や技術革新を目的としたM&Aが行われています。
日本政府は半導体産業の盛り返しを図っていて、半導体産業へ複数の政策支援を行っています。
政策支援の例が「半導体の安定供給の確保に係る取組の認定」です。事業者が半導体の供給確保計画を策定し、経済産業大臣に認定されることで、助成金の交付を受けられます。
(出典:経済産業省「半導体」/
https://www.meti.go.jp/policy/economy/economic_security/semicon/index.html)
また、国内産業基盤の強靭化を目的として、海外の先端ファウンドリとの共同開発も推進しています。
(出典:経済産業省「半導体戦略(概略)」/
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/joho/conference/semicon_digital/20210603008-4.pdf)
半導体産業への政策支援を利用するには、政府が推進する取り組みを実行できるだけの企業体力が必要です。企業体力を増やすためにM&Aを検討する半導体企業が増えています。
半導体産業における技術革新が加速していることも、半導体業界でM&Aが活発化している理由の1つです。
半導体企業が新しい技術を開発・導入するには、研究開発や先端の製造装置導入などが必要です。資金力に乏しい企業は技術革新に歩調を合わせられず、凋落していくリスクがあります。
半導体企業が技術革新の加速に遅れず、自社においても技術開発を進めるために、M&Aを選択するケースがあります。

半導体業界では、技術革新のスピードが速く、多額の設備投資や研究開発費が必要となるため、自社単独で成長を続けることが難しいケースも少なくありません。そのため、M&Aによって他社と連携し、経営資源を補完する動きが活発化しています。
ここでは、半導体業界において譲渡(売り手)側が得られる主なメリットを解説します。
M&Aによって他社の経営資源を活用できれば、事業の成長や再生を目指しやすくなります。
特に、半導体業界では研究開発や設備投資に多額の資金が必要となるため、自社のみで競争力を維持することが難しい場合があります。
大手企業や同業他社のグループに参画することで、資金力や顧客基盤、技術力などを活用できるようになり、製品開発や販路拡大を進めやすくなるでしょう。
これまで投資負担の大きさから実行できなかった研究開発や設備更新も進められる可能性があり、事業の持続的な成長につながります。
後継者不在は、多くの企業に共通する課題です。特に半導体業界では専門的な知識や経営ノウハウが求められるため、社内で後継者を育成することが難しいケースもあります。
M&Aによって第三者へ事業を承継すれば、後継者問題を解決しながら会社を存続させることが可能です。
廃業を回避できるため、長年培ってきた技術やノウハウを次世代へ引き継ぐことにもつながります。
M&Aにより企業が存続すれば、従業員の雇用維持にもつながります。後継者不在による廃業の場合、法人が消滅することから従業員を解雇せざるを得なくなります。しかし、M&Aによって新たな経営体制へ移行すれば、従業員は雇用を維持したまま引き続き働くことが可能です。
特に半導体業界では専門的な技術をもつ人材が多く、企業にとっても貴重な存在です。雇用を維持しながら事業を継続できる点は、譲渡側にとって大きなメリットと言えるでしょう。
M&Aでは、自社株式や事業を譲渡することで売却益を得られる可能性があります。例えば、多角的に事業を展開している企業であれば、コア事業以外を売却して資金を確保し、成長分野へ投資するといった戦略も可能です。
得られた資金を研究開発や設備投資に充てることで、競争力強化や事業の選択と集中を進められます。また、経営者にとっては、これまで築いてきた企業価値を資金として回収できる点もメリットの1つです。
半導体業界では、技術革新のスピードが速く、研究開発や設備投資に多額の資金が必要となります。そのため、自社のみで必要な技術や人材を確保するには時間やコストがかかるケースも少なくありません。
M&Aによって半導体関連企業を譲り受ければ、既存の経営資源を活用しながら効率的に事業拡大を図ることが可能です。ここでは、譲受(買い手)側にとっての主なメリットを4つ紹介します。
M&Aを通じて、譲渡側企業が保有する技術やノウハウを獲得できる点は大きなメリットです。半導体業界では、回路設計や微細加工、材料技術など高度な専門性が求められるため、技術力の差が競争力に直結します。
自社に不足している技術分野を補完できれば、製品開発力の向上や新分野への参入が可能となります。特に、AI向け半導体やパワー半導体など成長分野に強みをもつ企業を取得できれば、中長期的な競争優位性の確保にもつながるでしょう。
半導体事業では、製造装置や検査装置など高額な設備が必要となり、ゼロから導入する場合には多額の投資と時間がかかります。M&Aによって既存の設備を取得できれば、初期投資を抑えつつ迅速に事業を立ち上げることが可能です。
特に、製造工程では設備の性能が品質や生産効率に大きく影響するため、すでに稼働実績のある設備を確保できる点は大きな強みとなります。生産体制の早期構築や供給能力の強化にもつながるでしょう。
半導体業界では、高度な知識や経験を持つ技術者の確保が重要な課題となっています。M&Aにより専門人材をまとめて確保できれば、研究開発や製造体制を効率的に強化できます。
半導体分野は人材育成に時間がかかるため、経験豊富なエンジニアや研究者を確保できる点は大きなメリットです。人材不足が課題となる中、即戦力となる人材を獲得できることは、競争力の向上にも直結するでしょう。
M&Aによって既存事業との相乗効果を期待できる点も重要です。例えば、自社が保有する販売ネットワークや顧客基盤と、譲受企業の技術や製品を組み合わせることで、新たな市場開拓や売上拡大が見込めます。
また、複数の技術領域を組み合わせることで、新製品の開発やサービスの高度化につながる可能性もあります。事業ポートフォリオを拡充しながらシナジー効果を高めることで、中長期的な企業価値の向上が期待できるでしょう。

半導体業界におけるM&Aを成功させるためには、M&Aの事例を参考にすることも有効です。
半導体業界のM&Aは譲渡側・譲受側の組み合わせが複数あるため、自社のケースに合う事例を参考にすると良いでしょう。
ここからは、半導体業界におけるM&A事例を3つ挙げて、それぞれがどのようなM&Aを行ったかを解説します。
あいホールディングス株式会社は、2023年12月に株式会社ティエスティの株式の一部を取得し、子会社化する契約を締結しました。
| 譲渡(売り手)側 | 株式会社ティエスティ |
|---|---|
| 譲受(買い手)側 | あいホールディングス株式会社 |
| M&Aの目的 | 半導体製造・検査装置に関するサービス体制の強化 ポートフォリオの拡充 |
| M&Aのスキーム | 株式譲渡 |
あいホールディングス株式会社は、情報機器や計測機器など幅広い事業を展開する企業で、半導体製造装置の中古販売や再生事業にも取り組んでいます。
株式会社ティエスティは、半導体製造・検査装置の保守やメンテナンスなどのサポートサービスを提供しています。
今回のM&Aにより、装置販売から保守までの一貫体制を構築し、半導体関連事業の拡大を図ることが期待されています。
株式会社フェローテックホールディングスは、2023年4月に株式会社コスモ・サイエンスの株式を取得し、子会社化しました。
| 譲渡(売り手)側 | 株式会社コスモ・サイエンス |
|---|---|
| 譲受(買い手)側 | 株式会社フェローテックホールディングス |
| M&Aの目的 | 半導体製造装置関連事業の成長 企業価値の向上 |
| M&Aのスキーム | 株式譲渡 |
株式会社フェローテックホールディングスは、半導体製造装置向け部品や材料の製造を手掛ける企業です。
株式会社コスモ・サイエンスは、半導体製造装置向けの真空装置の設計・製造を行っています。
株式会社フェローテックは、今回のM&Aによって日本国内での半導体製造装置向け金属加工事業を強化するとともに、グローバルな販売網や生産拠点との連携を進めることで事業成長を目指しています。
2022年2月、デクセリアルズ株式会社は株式会社京都セミコンダクターの株式を取得し、子会社化することを決定しました。
| 譲渡(売り手)側 | 株式会社京都セミコンダクター |
|---|---|
| 譲受(買い手)側 | デクセリアルズ株式会社 |
| M&Aの目的 | 高速通信・センシング分野における技術力の強化 顧客基盤の拡大 |
| M&Aのスキーム | 株式譲渡 |
デクセリアルズ株式会社は、主に自動車における最先端の電子材料や接合技術の開発・製造・販売などを手がける企業です。
株式会社京都セミコンダクターは、光半導体デバイスやモジュールの開発・製造・販売を行っています。
本M&Aにより、両社が有する高度な半導体製造・開発技術を組み合わせることで、高速通信やセンシング分野における新製品の開発や技術力の向上が期待されています。
株式会社デンソーは2022年2月、JASMへの出資を行うことにより半導体業界との関係性強化を行いました。
| 譲渡(売り手)側 | JASM |
|---|---|
| 譲受(買い手)側 | 株式会社デンソー |
| M&Aの目的 | 半導体生産設備への投資 車載半導体の中長期的な安定調達 |
| M&Aのスキーム | 資本参加 |
JASMは、世界最大の半導体ファウンドリであるTSMCが日本に設立した半導体受託製造子会社で、ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社も出資しています。
株式会社デンソーは自動車部品などの開発・製造を行う企業です。
JASMへの設備投資は日本政府による強力な支援を受けており、国内生産による半導体の供給安定を目指しています。
日清紡ホールディングスは2022年2月、ディー・クルー・テクノロジーズ株式会社の全株式を取得して子会社化しました。
| 譲渡(売り手)側 | ディー・クルー・テクノロジーズ株式会社 |
|---|---|
| 譲受(買い手)側 | 日清紡ホールディングス |
| M&Aの目的 | 事業成長・発展に必要な技術や人的リソースの獲得 日清紡グループに加わることによる事業基盤の強化 |
| M&Aのスキーム | 株式取得 |
日清紡ホールディングスはマイクロデバイス事業を展開しており、アナログ半導体のプロバイダーとして成長・発展を目指しています。
一方のディー・クルー・テクノロジーズ株式会社は、アナログ半導体関連の技術や先端技術の開発経験がある企業です。
日清紡ホールディングスは本M&Aにより、半導体事業の成長に欠かせない事業資源を獲得しました。
株式会社オキサイドは2021年10月、株式会社UJ-Crystalとの間で株式取得による資本業務提携を行いました。
| 譲渡(売り手)側 | 株式会社オキサイド |
|---|---|
| 譲受(買い手)側 | 株式会社UJ-Crystal |
| M&Aの目的 | SiC単結晶の量産化に向けた共同研究開発の推進 |
| M&Aのスキーム | 株式取得 |
株式会社オキサイドは、単結晶材料や光デバイス・レーザ装置などの製造・販売事業を展開しています。
一方の株式会社UJ-Crystalは、溶液法を用いたパワー半導体SiC単結晶の開発・製造や販売事業を展開するスタートアップ企業です。
株式会社オキサイドは出資を通じて、パワー半導体の素材となるSiC単結晶の量産化を目指しています。

半導体業界でM&Aを成功させるには、事前に押さえておくべきポイントを整理しておくことが欠かせません。市場環境や技術の変化が速い業界だからこそ、計画的な準備と専門家のサポートが、スムーズな交渉や最適な条件での実現につながります。
●計画的なM&A準備を徹底する
半導体業界は市場環境や技術変化が速いため、売却・買収を検討する際は業界動向や市場状況を正確に把握しておくことが重要です。
また、財務状況の整理や事業の強み・弱みの分析を行い、企業価値を適切に評価できるように準備しておくことで、交渉をスムーズに進め、最適な条件でのM&A実現につながります。
●半導体業界の支援実績を有する専門家に相談する
M&Aは法務・財務・税務など幅広い知識が必要なため、その分野の高度な知見を有した専門家の助言を受けることが重要です。
M&Aアドバイザーや弁護士、会計士などの専門家と連携することで、契約内容や企業価値の確認を正確に行い、リスクを抑えつつ交渉を冷静に進めることが可能になります。
特にM&Aアドバイザーは、法務・財務・税務だけでなく、業界ごとの取引慣行や企業価値評価のノウハウといったM&Aに関する知識も有しており、交渉や条件設定のサポートにおいては非常に心強い存在となるでしょう。
半導体業界は世界の市場規模が拡大傾向にあり、市場の競争が激化しています。日本の半導体業界においても、サプライチェーン構築やDX化・人材確保といった課題を解決するためのM&Aが盛んに行われている状況です。 M&Aを成功させるためには、自社に合うM&A先を紹介してくれるM&Aアドバイザーの利用をおすすめします。 株式会社レコフはグループで約7.5万社の顧客基盤があり、顧客企業の課題解決や目的達成につながるM&Aを提案しております。 半導体業界におけるM&Aを検討している方は、株式会社レコフにご相談ください。
監修者プロフィール

株式会社レコフ リサーチ部 部長
澤田 英之(さわだ ひでゆき)
金融機関系研究所等で調査業務に従事後、政府系金融機関の融資担当を経て2005年レコフ入社。各業界におけるM&A動向の調査やこれに基づくレポート執筆などを担当。平成19年度農林水産省補助事業、食品企業財務動向調査委員、平成19年度内閣府経済社会総合研究所M&A究会 小研究会委員。著書・論文は「食品企業 飛躍の鍵 -グローバル化への挑戦-」(共著、株式会社ぎょうせい、2012年)、「データから見るIN-OUTの動向 -M&Aを通じた企業のグローバル化対応-」(証券アナリストジャーナル 2013年4月号、公益社団法人 日本証券アナリスト協会)など。
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