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業界別M&A
そば・うどん屋は、伝統的な日本食の1つとして多くの人に親しまれていますが、外食産業全体の中でも特に競争が激しい業界です。伸び悩む店舗は淘汰される一方で、長く愛される店舗は安定した経営を続けることができ、M&A(企業の合併・買収)を通じてさらに成長するチャンスを得られます。
当記事では、そば・うどん屋の抱える課題やM&Aの動向、売り手・買い手それぞれのメリット、さらに成功させるためのポイントなどを解説します。事業継承や経営戦略を考えている方にとって、有益な参考情報となるでしょう。
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事業承継・譲渡売却は
そば・うどん屋とは、日本の伝統的な麺料理であるそばやうどんを主力メニューとして提供する飲食店を指します。老舗の名店から大手チェーンまで全国に多様な形態の店舗が存在し、幅広い客層に親しまれています。
そば・うどん屋の業界の特色として挙げられるのが、比較的不況に強い点です。比較的安価な小麦粉やそば粉を使用するため、原価率を低く抑えられるメニューが少なくありません。また、店舗運営に必要な人員も少人数で済み、工夫次第で労務費や設備投資を抑えることができるため、経営リスクが低いのが特徴です。
さらに、立ち食いそばなどの低価格帯から、高級志向の店舗まで幅広い価格設定が可能であり、外食全体が不振に陥っても安定した経営が期待できます。

そば・うどん屋の市場規模は、ここ数年で着実に成長を続けています。2023年の市場規模は約1.38兆円に達しており、2018年時点の約1.3兆円から約6%増加しました。また、1997年の約1.08兆円と比較すると過去20年間でおよそ27%の成長を見せており、業界全体が拡大しています。
市場規模の成長を支えている要因の1つとして挙げられるのが、うどんチェーンの拡大です。たとえば、讃岐うどんで知られる「丸亀製麺」を展開するトリドールホールディングスは、2022年に約1,021億円の売上を記録し、業界の成長に大きく貢献しました。
また、そば・うどん業界はファストフード形式の店舗が増加しており、低価格で手軽に楽しみやすくなったのも消費者に支持されている点です。
2020年にはコロナ禍の影響により飲食業界全体が打撃を受けましたが、そば・うどん業界は比較的早く回復しました。2021年には再び成長軌道に乗り、コロナ禍前の水準に戻りつつあります。こうした背景には、テイクアウトやモバイルオーダーといった新たな販売チャネルの導入が奏功していることも挙げられるでしょう。
以上のように、そば・うどん屋の市場規模は安定した成長を続けており、今後も外食業界の中で堅調な業種として位置づけられています。
(出典:公益財団法人 食の安全・安心財団「統計資料」/
http://www.anan-zaidan.or.jp/data/index.html)

外食産業の中でも、そば・うどん屋は比較的成長率の高い産業です。同時に競争の激しい業界でもあり、売上を伸ばし続ける店舗はさらに勢力を拡大する一方、業績が伸び悩む店舗は淘汰されつつある傾向が見られます。
このような二極化の進行を背景に、そば・うどん屋が生き残るためには、以下のような課題へ対処しなければなりません。
近年、小麦粉や食用油などの主要な原材料の価格が上昇しており、経営に大きな影響を与えています。特に2021年後半からの世界的な原材料価格の高騰は、ウクライナ情勢や急激な円安などが原因で、さらなる値上がりを引き起こしました。政府が小麦の安定供給を目指して支援策を講じてはいるものの、多くの店舗がコスト増加に直面しています。
業界全体で価格転嫁が進んでいますが、価格競争が激しい飲食業界では、単純な値上げだけで十分な収益を確保するのは難しい状況です。店舗側には、原材料の効率的な利用やメニューの見直しを図り、収益性を維持するための工夫が求められています。
コロナ禍によってテイクアウトの需要が急増した際、そば・うどん屋も対応を迫られました。イートイン需要も回復しつつある現在では、テイクアウトとイートインの両立が重要な課題です。たとえば、店舗内に専用のテイクアウト窓口を設けたり、モバイルオーダーを導入したりなど、両方の需要に対応した店舗運営が求められています。
テイクアウト・デリバリー用のメニューや価格設定を工夫し、顧客の多様なニーズに応える工夫が、売上の安定化につながるでしょう。イートインでは、より高付加価値のメニューを提供して差別化を図るのも効果的です。
世界中で環境問題への意識が高まる中、そば・うどん屋も持続可能な経営が求められています。たとえば、テイクアウトで使用する容器には、プラスチックではなく紙や植物由来の素材を採用するなど、環境負荷を軽減する取り組みが進んでいます。
また、フードロス削減への取り組みも重要です。余剰食材を無駄にしないメニュー構成や、賞味期限が迫った商品の値引き販売など、さまざまな工夫が必要となります。
こうした環境配慮型の施策は社会的な評価にもつながり、持続的な店舗経営に貢献するでしょう。今後は、エネルギー効率の高い設備の導入なども含め、より環境に優しい店舗運営が求められています。

そば・うどん屋業界を含む外食産業では人材不足や物流コストの高騰など多くの課題を抱える中、あらゆる課題の解決手段としてM&Aが広く用いられています。中でも、多店舗展開を進める企業がM&Aを通じて店舗数を一気に増やし、市場シェアの拡大を図るケースが少なくありません。
そば・うどん屋では、同業種だけでなく、おでん屋やレストラン、さらには旅館などの隣接業種とのM&Aも増えてきました。これにより、新たな顧客層の獲得や異業種間のシナジーを生かした経営戦略、事業の多角化が進んでいます。
また、近年では日本食の人気が高まる中、海外市場でもM&Aを活用する動きが活発化しています。たとえば、トリドールホールディングスは「丸亀製麺」を中心に海外展開を進め、9の国と地域で約270店舗に達しました。特にアジア市場での拡大が顕著であり、現地の外食企業を買収し、そのノウハウを活用することで、さらなる成長を目指しています。
こうしたM&Aは、今後も業界全体の発展に寄与する重要な要素となるでしょう。

M&Aによってそば・うどん屋を譲渡すると、経営者にとってさまざまなメリットがあります。特に、創業者利益を得られる点や後継者不足による廃業の回避、事業の成長機会を得られることが代表的なメリットです。
ここからは、そば・うどん屋のM&Aによる譲渡(売り手)側のメリットについて説明します。
M&Aを通じてそば・うどん屋を譲渡すると、売却益を得られるのがメリットの1つです。この売却益は、事業の規模や利益率、純資産に基づいて算定されます。事業が成功していれば、想定より大きな金額を得られるケースも珍しくありません。売却により、創業者は自身の努力の結果を具体的な利益として享受でき、次のステージに進むための資金を確保できます。
また、M&Aによる利益は税制上も有利な場合が多く、廃業や事業縮小に伴う損失を最小限に抑えられる点も魅力です。事業売却後は、その資金を元に新たなビジネスやセカンドライフを計画してもよいでしょう。
日本では中小企業の多くが後継者不足に悩んでおり、そば・うどん屋も例外ではありません。後継者が見つからない場合、どれほど地元に愛され、人気がある店でも廃業せざるを得ないのが現実です。しかし、M&Aを活用すればそのリスクを回避することができます。
特に、地域に根ざした店舗は、そのブランド力や顧客基盤が強みとなるため、M&Aによる譲渡では有利に働くケースが大半です。買い手企業に事業を引き継ぐことで、従業員の雇用を守り、さらには常連客との関係を維持できるのは、M&Aの大きなメリットと言えるでしょう。
M&Aによる譲渡は、事業の拡大や成長につながるチャンスです。譲渡先の企業が持つ資金力や運営ノウハウ、マーケティングの専門知識があれば、今よりも事業規模を拡大できる可能性があります。特に、多店舗展開を進めている企業の店舗網やリソースを活用できれば、新たな市場への進出も見込めるでしょう。
また、買収企業が持つ人脈やサプライチェーンにより、原材料調達の効率化やコスト削減が期待でき、経営基盤の強固化も図れます。さらに、これまでアクセスできなかった新たな顧客層にもアプローチできるようになれば、事業の成長が加速する結果も期待できる

M&Aによるそば・うどん屋の買収は、譲受(買い手)側にとっても多くの利点をもたらします。そば・うどん屋のように確立された業態を買収することで、既存の事業基盤を生かしつつ、短期間での事業成長が可能になるためです。
ここからは、そば・うどん屋のM&Aによる買い手企業の主なメリットを3つ説明します。
M&Aによってそば・うどん屋を譲受するメリットの1つは、確立されたレシピや運営ノウハウをそのまま引き継げる点です。そばやうどんの味は、店舗の客入りを左右する重要な要素です。すでに地域で高い評価を得ているレシピを引き継いで営業すれば、新規店舗の立ち上げにかかる時間やコストを大幅に削減できます。
また、従業員の知識や経験もそのまま継承できるため、効率的な運営が可能です。既存のノウハウを生かすことで、新規参入で必要となる試行錯誤の回数を省け、早期の収益化を図れるでしょう。
M&Aでは、既存の店舗や従業員といった経営資源をそのまま手に入れられるのも大きなメリットです。新規出店の場合、立地選定や店舗設計、従業員の採用・育成に多くの時間と資金を費やさねばなりません。しかし、M&Aで既存の店舗を引き継いでしまえばすぐに営業を開始でき、経営の初期コストの抑制が可能です。
また、長年地域に根ざしてきた店舗であれば、常連客を含む既存顧客をそのまま維持できるため、新たに顧客を獲得する手間も省けます。従業員の引き継ぎにより、既存の運営ノウハウを維持しつつ、安定した経営を継続できる点も見逃せません。
そば・うどん屋は、ほかの飲食業態と比べて不況に強い業種とされています。これは、そば・うどんが低価格でありながら栄養価が高く、日常食として幅広い年齢層に支持されているためです。さらに、原価が比較的安く少人数での運営が可能なため、人件費や運営コストを抑えられ、安定した利益を確保しやすいという側面もあります。
異業種の企業がそば・うどん屋を買収する場合、こうした低リスクで安定的な収益が見込める点は大きな魅力です。また、地域に根ざしたそば・うどん屋は常連客が多いため、M&A後も顧客を失うリスクが低く、事業運営の安定性を高められます。飲食業界全体が不況時にも大きな影響を受けにくいこの業態は、異業種からの投資先としても魅力的です。

そば・うどん屋業界で実際に行われたM&Aの事例は、成功の鍵を探る上で非常に参考になります。どのような目的のM&Aでどのスキームが選ばれたかを知れば、今後のM&A戦略にも役立つでしょう。
次に、そば・うどん屋業界におけるM&Aの代表的な事例を3つ紹介します。
フジオフードシステムは、2019年11月に暮布土屋の株式90%を取得し子会社化しました。
| 譲渡(売り手)側 | 有限会社暮布土屋 |
|---|---|
| 譲受(買い手)側 | 株式会社フジオフードシステム |
| M&Aの目的 |
|
| M&Aのスキーム | 株式譲渡(90%の株式取得) |
フジオフードシステムは、全国で「まいどおおきに食堂」や「つるまる」などの飲食店を展開する大手企業です。暮布土屋は関西を中心に7店舗を展開する石臼挽き手打ち蕎麦の専門店「土山人」を運営しており、ミシュランガイドにも掲載された実績があります。
このM&Aの目的は、フジオフードシステムにとって未経験の蕎麦業態への参入です。そば業態を新たな事業の柱として成長させ、幅広い業態展開による企業の成長を目指しています。
クリエイト・レストランツ・ホールディングスは、2019年3月に木屋フーズの全株式を取得し、連結子会社化しました。
| 譲渡(売り手)側 | 木屋フーズ株式会社 |
|---|---|
| 譲受(買い手)側 | 株式会社クリエイト・レストランツ・ホールディングス |
| M&Aの目的 |
|
| M&Aのスキーム | 全株式取得 |
クリエイト・レストランツ・ホールディングスは、ショッピングモールや空港内でさまざまな業態の飲食店を展開している会社です。木屋フーズは、東京銀座を中心に「銀座木屋」というブランドのうどん・そば店を運営しており、40年以上の歴史を誇ります。
このM&Aは、クリエイト・レストランツHDがブランドラインナップを強化し、老舗ブランド「銀座木屋」のさらなる成長を目指すために実施されました。新たな顧客層を獲得し、企業価値を高める狙いがあります。
クリエイト・レストランツ・ホールディングスは、2018年にニューヨークの日本食レストラン「蕎麦鳥人」を譲り受けました。
| 譲渡(売り手)側 | 蕎麦鳥人 |
|---|---|
| 譲受(買い手)側 | 株式会社クリエイト・レストランツ・ホールディングス |
| M&Aの目的 |
|
| M&Aのスキーム | 店舗譲受 |
今回のM&Aで譲受側となったのは、クリエイト・レストランツ・ホールディングスの100%子会社である「CRNY社」です。一方、マンハッタン中心街に位置する蕎麦鳥人は、ニューヨーカーから支持を集めている本格的な蕎麦店です。
このM&Aにより、クリエイト・レストランツHDは北米市場における経営基盤を確立し、ニューヨーク市場の日本食レストランとしてのさらなる発展を見込んでいます。

そば・うどん屋のM&Aは、譲渡側と譲受側双方にとって大きなチャンスとなる一方で、適切な戦略がなければ失敗するリスクもあります。M&Aを成功させるには、それぞれの立場で押さえるべきポイントを理解しておかなければなりません。
【「譲渡(売り手)側」のポイント】
売り手側は、M&Aを進める前にしっかりとした準備を行うことが重要です。まず、財務状況を整えてレシピや運営ノウハウを明文化しておくと、買い手側の信頼を得やすくなります。また、売却前にメニューの見直しや店舗の改善を行い、ブランド力を維持・向上させるのも大切です。
地域に愛される店舗であれば、常連客を維持するために味やサービスの継承がスムーズにできる体制を整えておきましょう。従業員の雇用維持を考慮し、スムーズに新しい体制に移行できるようにするのも重要な要素です。
【「譲受(買い手)側」のポイント】
買い手側にとって、既存のブランドやレシピ、店舗運営のノウハウを引き継ぐのは大きな利点です。特に、そば・うどん屋は食文化に根づいた業態であり、すでに顧客に認知されたブランドを引き継げれば、集客や売上を安定させやすくなります。
店舗が位置する地域の特性や顧客層を理解し、そのニーズに合わせた運営を行うのも成功の鍵です。M&A後の長期的な成長戦略を立て、店舗の強みを最大限に生かして拡大を目指しましょう。
譲渡と譲受双方にとって重要なのは、しっかりとコミュニケーションを取り信頼関係を築くことです。また、M&A後も継続的に従業員や顧客との信頼を保つために、運営方針の共有や丁寧なコミュニケーションを継続しなければなりません。
M&Aにおける成功のカギは、両者で共通する目標を明確にし、専門家のサポートを得ながら進めることです。経験豊富なアドバイザーに相談すれば、スムーズなM&Aが実現できるでしょう。
そば・うどん屋は競争が激しい業界ですが、常連客がついた店舗は安定した経営が期待できます。M&Aは、後継者が決まらない店舗にとって廃業を回避し、積み上げてきた味やブランドを次世代へ引き継ぐための有効な手段の1つです。
譲受側は、確立されたレシピやノウハウを引き継ぐことで新規出店につきもののリスクを抑え、安定した経営を図ることができます。譲渡側・譲受側の双方に多くのメリットがあり、地域の味を守りながら新たな成長の機会を提供するそば・うどん屋のM&Aは、今後さらに活発化するでしょう。
監修者プロフィール

株式会社レコフ リサーチ部 部長
澤田 英之(さわだ ひでゆき)
金融機関系研究所等で調査業務に従事後、政府系金融機関の融資担当を経て2005年レコフ入社。各業界におけるM&A動向の調査やこれに基づくレポート執筆などを担当。平成19年度農林水産省補助事業、食品企業財務動向調査委員、平成19年度内閣府経済社会総合研究所M&A究会 小研究会委員。著書・論文は「食品企業 飛躍の鍵 -グローバル化への挑戦-」(共著、株式会社ぎょうせい、2012年)、「データから見るIN-OUTの動向 -M&Aを通じた企業のグローバル化対応-」(証券アナリストジャーナル 2013年4月号、公益社団法人 日本証券アナリスト協会)など。
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