平日9:00〜18:00
業界別M&A
近年のガソリンスタンド業界では需要低下や競争激化などの課題があり、ガソリンスタンドの売却を行うケースが増えています。ガソリンスタンドのM&Aも売却方法の1つです。
ガソリンスタンドのM&Aでは、さまざまな目的や業種の組み合わせによるM&Aが行われています。成功させるためにはM&A動向を知り、ポイントも押さえる必要があるでしょう。
ガソリンスタンドの市場動向と現状を説明した上で、M&A動向や売却のメリット、成功のポイントなどを解説します。
基本合意まで無料
事業承継・譲渡売却はガソリンスタンド業界とは、ガソリンスタンドを運営する事業者・企業で構成されている業界です。ガソリンスタンドでは車両用燃料であるガソリン・軽油の販売をはじめとして、自動車の整備・洗浄などのサービス提供や灯油販売も行っています。
ガソリンスタンドは、石油元売りの大手企業が運営するチェーン店・フランチャイズ店が有名です。他にもカー用品店・ホームセンター事業者・全農・個人経営店など、運営元が異なるガソリンスタンドが複数存在しています。
資源エネルギー庁が公表する資料によると、全国のガソリンスタンド事業者数およびガソリンスタンド数は、直近5年間で下記のように推移しています。
年度 | ガソリンスタンド事業者数 | ガソリンスタンド数 |
---|---|---|
2019年 | 13,835 | 29,637 |
2020年 | 13,314 | 29,005 |
2021年 | 13,008 | 28,475 |
2022年 | 12,754 | 27,963 |
2023年 | 12,407 | 27,414 |
(出典:経済産業省 資源エネルギー庁「令和5年度末揮発油販売業者数及び給油所数を取りまとめました」https://www.enecho.meti.go.jp/category/resources_and_fuel/distribution/hinnkakuhou/240729.html )
ガソリンスタンド事業者数・ガソリンスタンド数ともに減少傾向が継続している状況で、下記に挙げるような課題があることが減少の背景にあると考えられます。
ガソリンスタンド需要の低下が、ガソリンスタンド業界の市場規模減少につながっています。
主な要因の1つが人口の減少です。人口が減少すると自動車を利用する人が減り、ガソリンスタンドの需要も低下します。若年層を中心として自動車ユーザーそのものが減少すると見られていることも影響しているでしょう。
(出典:JAMA - 一般社団法人日本自動車工業会「2023年度乗用車市場動向調査について」https://www.jama.or.jp/release/news_release/2024/2505/ )
また近年はエコカーブームであり、ハイブリッド車や電気自動車が普及しています。ガソリンの消費が少ない低燃費車両や、ガソリンを全く使用しない電気自動車の登場により、ガソリンスタンドの利用機会が減少していることも需要低下の要因です。
近年のガソリンスタンド業界では、プライベートブランドの店舗数が増加しています。プライベートブランドとは、石油元売りの系列特約店や系列販売店以外の、カー用品店・ホームセンター事業者・全農などのガソリンスタンドのことです。
プライベートブランドでは、石油元売りが生産した余剰のガソリン・軽油などを商社や全農から安価に購入していて、顧客に対しても低価格に販売できます。 一方、系列特約店や系列販売店では石油元売りから直接仕入れを行っています。系列特約店や系列販売店は石油元売りのブランドマークを掲げられる代わりに、ガソリンの仕入れ価格がプライベートブランドよりも高いことが特徴です。
ガソリンを安価に販売できるプライベートブランドの店舗数の増加によって、ガソリンスタンドでは価格競争が起こっていると考えられます。
原油価格は近年高騰しており、2020年7月には1バレル=40ドル程度だったのが、2022年3月には1バレル=100ドル超まで上昇しました。2025年3月は1バレル=70ドル程度に収まっているものの、 今後また高騰しないとは言えない状況です。
(出典:新電力ネット「原油価格の推移(WTI/ブレント/ドバイ/OPECバスケット)」https://pps-net.org/statistics/crude-oil )
ガソリンスタンドが仕入れるガソリンなどの価格は原油価格に大きく影響を受けており、原油価格の高騰によって競争が激化しています。 エリア内の競合他社との価格競争や仕入れ価格の上昇が利益を圧迫することにより、廃業や売却を余儀なくされるガソリンスタンドも少なくありません。
ガソリンスタンドの主な売却方法は、不動産・跡地そのものを売却する方法と、ガソリンスタンド事業ごと売却する方法の2つに大別されます。 ガソリンスタンドの売却を検討されている方は、どちらの方法が自社に合っているか、また、売却による利益を出せるか等を比較しましょう。
ガソリンスタンドの2つの売却方法について詳細を説明します。
ガソリンスタンドを廃業して不動産・跡地を売却する方法です。跡地を売却する場合は、建物を解体・撤去してから土地部分を売却します。
ただし、不動産・跡地の売却は下記に挙げる課題があるため実現が難しく、あまり選ばれていない方法です。
●土壌汚染調査が必要になる
ガソリンには特定有害物質であるベンゼンや、鉛(1980年代以前の有鉛ガソリン)が含まれています。 ガソリンを扱うガソリンスタンドでは、土壌にベンゼンや鉛が残留している可能性があり、そのままでは資産価値の低下を招く可能性があります。ガソリンスタンドの跡地を売却する際は土壌汚染調査や、特定有害物質の浄化作業が必要になるでしょう。 調査・浄化に多額の費用と労力がかかる点が、跡地の売却が難しい理由です。
●地盤の安定性が低下するリスクがある
ガソリンスタンドの地下にはガソリン貯蔵用のタンクがあり、解体の際にはタンクを掘り出して穴の埋め戻しを行います。 しかし、埋め戻し作業に不備があった場合、地盤沈下など地盤の安定性が低下するリスクがあります。買い手が地盤の安定性が低下していると判断した場合、売却が難しくなるでしょう。
●油臭が買い手にマイナス印象を与える
ガソリンスタンドの跡地には、ガソリン由来の油臭が染みついていることが少なくありません。買い手が油臭に嫌悪感を持ったり、跡地の活用方法が油臭を避けるべきものであったりする場合は、購入を見送られる可能性があります。
不動産・跡地そのものを売却するよりも、事業の売却(M&A)の方がスムーズな売却を期待できます。ガソリンスタンドの建物・設備を新しく建設すると多額の費用がかかり、買収需要が高いためです。
M&Aの手法として代表的なものに「株式譲渡」と「事業譲渡」があります。
●株式譲渡
株式譲渡は対価と引き換えに、譲渡企業が自社の株式を譲受企業に渡す方法です。一般的には50%超の株式を渡す形式が多く、買い手の譲受企業は譲渡企業の経営権を持ちます。
●事業譲渡
事業譲渡は対価と引き換えに、譲渡企業が事業・資産の一部を譲受企業に渡す方法です。譲渡する対象はあくまでも事業・資産の一部のみであり、会社の経営権は譲渡企業が継続して保有できます。
ガソリンスタンドの会社ごと売却したいときは、株式譲渡を選択すると良いでしょう。 一方、自社の事業が多角的化しており、ガソリンスタンド事業のみを切り離して売却したい場合は事業譲渡が適しています。
近年では、ガソリンスタンド業界におけるM&A・事業承継が増加傾向にあります。 ガソリンスタンドのM&Aを検討している方は、業界のM&A動向を把握しておくと良いでしょう。
ガソリンスタンド業界におけるM&A動向として、代表的な3つのパターンを説明します。
ガソリンスタンド業界では、大手のガソリンスタンド企業による同業M&Aが盛んに行われています。大手企業は高い資本力を持っているため、ガソリンスタンドの売却先として魅力的な候補です。 大手企業は同業M&Aによって、サービス展開ができていない地域への進出や業務プロセスの効率化、競争力の強化などを図っています。自社がガソリンスタンド需要の高い地域に展開している場合は、売却によって高額な譲渡益を生み出すことが期待できるでしょう。
ガソリンスタンド業界のM&Aは、新たなエネルギー事業への参入を目的としたM&Aも増加傾向にあります。 新たなエネルギー事業とは、電気自動車向けの充電サービス事業や水素ステーション事業、太陽光・地熱・風力などの再生可能エネルギー事業などです。これらのエネルギー事業は社会的な関心が高く、国や自治体の補助金対象にもなるため、ガソリンスタンド事業者の参入も増えています。
新たなエネルギー事業への参入を目的としたM&Aでは、事業提携・業務提携による共同開発や協力関係の構築が行われています。
日本におけるガソリンスタンドの施設数は、自動車需要が急増した1990年代がピークであり、ガソリンスタンド経営者は高齢層の方が多くなっています。後継者が存在しないガソリンスタンドなどで、後継者不足の問題解決に向けたM&Aも見られる状況です。 M&Aの事業承継スキームでは、外部から第三者を経営者として招聘して、ガソリンスタンド事業を継続してもらうことができます。ガソリンスタンドの廃業に伴う費用や手間がかからず、地域の自動車ユーザーにとって有用な施設であるガソリンスタンドを残せる方法です。
M&Aは譲渡側・譲受側の双方にメリットがある取引です。譲渡企業にとっては売却益の獲得や競争からの解放など、ガソリンスタンド経営の課題を解決できるメリットが得られます。
M&Aによってガソリンスタンドを売却する譲渡側のメリットを5つ解説します。
ガソリンスタンドを廃業する場合、雇用している従業員を解雇しなければなりません。就業規則に退職金の条項を盛り込んでいる会社では退職金の支給が必要となり、廃業時の資金を圧迫する要因となるでしょう。
M&Aでは基本的に従業員の雇用が譲渡側から譲受側へと引き継がれるため、ガソリンスタンドの売却をしても従業員の雇用を維持できます。解雇する必要がなく、退職金の支給による負担をなくすことが可能です。
また、売却先が大手ガソリンスタンドであれば、従業員にとって給与・待遇などの労働条件が今より良くなる可能性もあります。
ガソリンスタンドは地域のガソリン需要を満たす施設であり、地方によってはガソリンスタンドが近隣にほとんどないケースも少なくありません。競合他社がほとんどない地方のガソリンスタンドが廃業した場合、地域利用客は遠方のガソリンスタンドまで行かなければならず、不便な環境となります。
M&Aでガソリンスタンドを売却すれば、譲受側がガソリンスタンド事業を継続してくれるため、地域利用客の利便性を維持できる点がメリットです。
譲受企業にとっても、ガソリンスタンドの必要性が高い地域に事業展開ができる利点があります。
M&Aによってガソリンスタンドを売却すると、対価として売却益を獲得できます。
特に会社ごと売却する株式譲渡であれば、獲得できる売却益は経営者利益であり、経営者が自由に使える資金です。経営者自身の老後資金や、新しい事業を計画する際の準備資金等に充てることができます。
ガソリンスタンドは建物や設備が特殊であり、同業種やガソリンスタンド事業を展開したい異業種からの買収需要は高い傾向です。売却額は高額になりやすく、まとまった売却益を獲得できるでしょう。
ガソリンスタンドを開業するときに金融機関の融資を得るため、個人保証や担保を入れている経営者の方も多いでしょう。個人保証や担保は、借入金の返済が滞った場合に経営者個人にも返済義務が生じたり、土地や建物が差し押さえられたりするリスクがあります。
M&Aのガソリンスタンド売却では、株式譲渡を選択すれば個人保証・担保といった権利義務も包括して譲受企業が引き継いでもらえます。
事業譲渡を選択した場合も、譲渡契約に個人保証・担保の条項を盛り込めば譲渡企業に引き継いでもらえるでしょう。M&Aで売却して個人保証・担保から解放されれば、生活にまで及ぶ返済義務の不安がなくなります。
ガソリンスタンド業界では競合他社との価格競争をはじめ、自動車ユーザーの減少による売上低下やセルフスタンドサービスとの差別化といった課題があります。市場規模そのものが減少しているため対策を行っても成果が出ないことが多く、ストレスを抱える経営者の方も多いでしょう。
ガソリンスタンドの売却は多くが大手ガソリンスタンドによる買収であり、売却後は経営や競争によるストレスから解放されます。
M&Aによってガソリンスタンドを売却する場合、売却価格はガソリンスタンドの立地条件や利用者数などの要素によって異なります。売却価格の相場としては、数百万~数億円といったように幅のある価格帯となるでしょう。
また、ガソリンスタンドのM&Aで提示する売却価格は、「時価純資産法」と「類似会社比較法」という2つの計算方法にもとづいて算出します。
●時価純資産法
時価純資産法は、ガソリンスタンドの保有する資産・負債を時価評価して、資産から負債を差し引いた金額を売却価格とする計算方法です。
●類似会社比較法
類似会社比較法は、ガソリンスタンド事業を展開している上場企業の株価を参考にして、自社の価値を算出する計算方法です。
ただし、計算方法によって算出された金額がそのままの売却価格になるわけではありません。実際の売却価格は、譲渡企業・譲受企業の交渉によって決定します。
ガソリンスタンドの売却価格を左右する要素の中でも、特に高く売却する上で重要な3つのポイントを紹介します。
●立地条件
ガソリンスタンドは立地条件によって集客力が変わります。自動車ユーザーが多い地域であったり、交通量が多い道路に面していたりするガソリンスタンドは高い収益性が見込まれるため、売却価格も高くなるでしょう。
●従業員数
ガソリンスタンドの運営には従業員が必要です。経験豊富な従業員が多いほうが、譲受企業にとっては従業員教育のコストを軽減できるメリットがあります。
車両整備の資格を保有している従業員がいれば、メンテナンスサービスなどを提供できるため売却価格の向上につながります。
●利用者数
ガソリンスタンドの利用者数は、譲受企業にとってM&A後の売上創出に大きく関わるイントです。単に「立地が良いから利用する」ユーザーが多いだけでなく、ガソリンスタンド自体に集客力があることをアピールできれば、売却価格の向上を期待できます。
ガソリンスタンド業界に限らず、M&Aを実施する際には法務・税務・会計などについての高度な専門知識が求められます。独力でM&Aを進めようとすると、資料・書類作成や金額計算などで間違いが発生するリスクがあることに注意してください。
できる限りスムーズにM&Aを実施できるようにするためにも、M&Aの専門家によるサポートを受けることが大切です。
M&Aに関する知識が豊富な相談先には、マッチングサイトや金融機関、M&Aアドバイザーがあります。最も相談先としておすすめなのは、「実績の豊富なM&Aアドバイザー」です。
また、相談先によってはガソリンスタンド業界に詳しくないケースがあります。ガソリンスタンド業界のM&Aにも対応できる専門家がいるM&Aアドバイザーを探し、M&Aの相談をしましょう。
ガソリンスタンド業界は市場規模が減少しており、プライベートブランドの店舗増加や価格競争の激化もある厳しい状況となっています。ガソリンスタンド経営の課題をM&Aで解決したいと考えている方は、実績の豊富なM&Aアドバイザーに相談しましょう。
株式会社レコフは業界トップクラスの成約実績があり、さまざまな業界に精通したアドバイザーも在籍しております。ぜひご相談ください。
監修者プロフィール
株式会社レコフ リサーチ部 部長
澤田 英之(さわだ ひでゆき)
金融機関系研究所等で調査業務に従事後、政府系金融機関の融資担当を経て2005年レコフ入社。各業界におけるM&A動向の調査やこれに基づくレポート執筆などを担当。平成19年度農林水産省補助事業、食品企業財務動向調査委員、平成19年度内閣府経済社会総合研究所M&A究会 小研究会委員。著書・論文は「食品企業 飛躍の鍵 -グローバル化への挑戦-」(共著、株式会社ぎょうせい、2012年)、「データから見るIN-OUTの動向 -M&Aを通じた企業のグローバル化対応-」(証券アナリストジャーナル 2013年4月号、公益社団法人 日本証券アナリスト協会)など。
基本合意まで無料
事業承継・譲渡売却はM&Aのことなら、
お気軽にご相談ください。
お電話で
お問い合わせ
営業時間 / 平日9:00〜18:00
M&Aのことなら、
お気軽にご相談ください。
お電話で
お問い合わせ
営業時間 / 平日9:00〜18:00